ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

黒田研二/「CUTE&NEET」/文藝春秋刊

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黒田研二さんの「CUTE & NEET」。

引きこもりのニート青年・白畠鋭一は、バツイチの姉・真矢がニューヨークに出張する間、幼稚園児
の娘・リサの面倒を見るよう命じられ、単身名古屋へ。リサの幼稚園を訪ねて早々に変態と間違われ、
さらに園児・サヤカの誘拐事件にも巻き込まれ散々な目に――。幼稚園で起る様々な事件を、リサに
助けられて解決するうちに、縮こまった鋭一の心も開かれていく(あらすじ抜粋)。


くろけん最新作。表紙からして可愛らしいですが、内容もなかなかにキュートな作品でとっても
楽しめました。
とはいえ、タイトルが表しているように、主人公の一人は引きこもりニートの青年・白畠鋭一。
そして、もう一人の主人公が鋭一の姪で幼稚園児のリサ。リサが通う幼稚園を舞台に、二人が
繰り広げるハートフルミステリーです。

二人の対照的なキャラがとても良かった。ニートの鋭一は、とにかくすべてにおいてダメな男。
引きこもりでニートってだけでも当然ダメダメなんですが、他人が近づくとパニックになって
気絶してしまう超絶人嫌い。そうなってしまったのには、それなりに理由があるのですが。
そんな鋭一が、何の因果か、ニューヨークに出張する姉の子供・リサの面倒を見る羽目に
陥ってしまい、単身、名古屋に行くことに。対人恐怖症の鋭一は、言動不審でしょっぱなから
変質者に間違われる始末で、失敗ばかり。それでも、鋭一よりも数倍しっかりしていて大人な
リサに度々助けられ、少しづつ名古屋の生活に慣れて、人との触れ合いにも抵抗がなくなって
人としても成長して行く・・・というのが大筋。

まぁ~、とにかく、始めの方は鋭一の怠惰な思考や生活態度にイライラムカムカしっぱなし。
これだからニートは・・・と呆れながら読んでいたのですが。でも、リサちん(鋭一だけが
彼女のことをこう呼びます)と暮らすうちに、少しづつ他人と触れ合うことを学んで、成長
して行くところが嬉しかったです。
リサちんが、これまた、ほんっとにしっかりした幼稚園児で。鋭一の数百倍大人。鋭一は名目上は
リサの面倒を見る為に名古屋に来たってことになってますが、はっきり云ってリサの方がだらしない
鋭一の面倒を見てるとしか思えなかったです^^;

それでも、時々子供らしい愛らしさも垣間見せてくれて、リサちんの可愛らしさにはほんと
ノックアウト寸前って感じでした(笑)。
それに、終盤、あるシーンで、みんなに隠れてトイレで泣いてるリサちんの姿に、しっかりして
見えても、やっぱり本当は寂しくて心細かったんだなってわかって、胸が詰まりました。母親の
為に、自分がしっかりしなくちゃって思って、一生懸命頑張ってたんだなって思ったらもう。
健気すぎるよ、リサちん(><)。

ほのぼのしたコメディタッチの作品かと思って読んでいたので、終盤の展開にはかなり驚きました。
こんなに切ない感動作だったとは。
鋭一は、周りの人に愛されてるなぁ、と思いました。ある人物の身の上に関しては深い悲しみに
囚われたけれども、鋭一がリサちんのおかげで、その事実としっかり向きあえるようになれた
ことが嬉しかったです。リサちんとのコンビもしばらく続きそうだし。頼りになるリサちんがいれば、
鋭一はもっと強くなれそうです。
まぁ、よく考えると、鋭一ほどの対人恐怖症で引きこもりの人間が、そんなに簡単に克服出来る
とは思えないですけどもね。これもリサちんの影響力がそれだけ大きかったってことで、さほど
不自然には思わなかったですね。

ただ、サチ先生がなんで鋭一に好意を持ったのか、そこがちょっと理解し難かったですけど^^;
まぁ、人の好みは千差万別ではありますけども・・・それにしても、相手ニートだよ~^^
(引きこもりだったって事実は知らなかったにしてもさ)。



出版社のHPの紹介文で、著者自らの子供の送り迎え体験からヒントを得た、みたいに書いて
ありました。幼稚園のお子さんがいるんですね~。黒田さんのお子さんもリサちんみたいに
しっかりしてるんでしょうか(笑)。


とっても楽しくて、可愛くて、最後はホロリと出来る良作でした。途中までのコミカルな作風が、
終盤でガラリと変わって、最後は思わぬ感動が得られると思います。きっと読んだ人は誰もが、
とびきり可愛くて、スペシャルかっこいい、スーパー幼稚園児・リサちんの虜になっちゃうんじゃ
ないかな(笑)。
オススメです。