ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

長沢樹/「消失グラデーション」/角川書店刊

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長沢樹さんの「消失グラデーション」。

とある高校のバスケ部員椎名康は、ある日、女子バスケ部のエース網川緑が校舎の屋上から
転落する場面に遭遇する。康は血を流し地面に横たわる緑を助けようとするが、わずかの隙に
緑は目の前から忽然と消えてしまう!? 監視された空間で起こった目撃者不在の少女消失事件。
複雑に絡み合う謎と真相に、多感な若き探偵たちが挑む!第31回横溝正史ミステリ大賞受賞作
(あらすじ抜粋)。


評判が良いようなので、予約して借りてみました。ちょうど予約が回って来そうなタイミング
で、隣町図書館の開架で発見したからちょっとショックだったけど(大人しく予約を待ちました^^;)。
どんでん返し系青春ミステリですかね。ミステリとしては、なかなか面白かったです。ただ、
題材的に、ちょっと目新しさはなかったですけど。この手のどんでん返しものって、結構
既出作が多いんで・・・そういう作品多く読んでる人だと、ちょっと食傷気味なラストでは
あったかも。
ただ、個人的には違和感めちゃくちゃ感じながらも、まんまと騙されてしまいました。
冒頭の人物紹介から騙しの手法が使われてますからねぇ。なんか、アンフェアなような気が
しないでもなかったですけど。

さくさく読める点では良かったんですけど、キャラ造形とか会話とか、やたらに違和感
があって、どうも感情移入がしずらかったんですよね。そこがトリックのキモだった訳で、
わかってみると、なるほど、と思えたんですけど。特に、主人公のキャラがその時々で
定まらないというか、掴みどころがなくて、ずっとモヤモヤしながら読んでた気がします。
冒頭の怪しげなシーンから面食らわされたのですが、遊び人かと思えば、一人の女の子を
一途に思っていたりする奥手な面もあったりして、何だかよくわからない子って印象でした。
とても、好感は持てなかったですね。だから、青春小説として面白かったかと言われると、
ちょっと微妙。ミステリとしても、青春小説としても面白い初野晴さんの『退出ゲーム』
シリーズなんかと比べると、やっぱり完成度的にどうかなーと思ってしまった。やっぱり、
登場人物に好感持てないと、この手の小説は評価が低くなっちゃいますね。

ただ、先に述べたように、ミステリとしてはなかなか手が込んでいて良かったと思います。
ただし、騙しの部分については素直に感心したものの、少女消失のトリックに関しては
正直無理があるだろう、と腑に落ちない思いになりましたが。
ヒカル側の内情ももうちょっと掘り下げて欲しかったですね。後半、真相がわかるくだりが
ちょっと駆け足だったのが残念だったかな、と。



以下、ネタバレあります。未読の方はご注意を。
















気になったのは、真由の本当の読み方。ルビが出て来なかったと思うんだけど、
私の読み落とし?まさよし、とかなのかな。そこは、きちんと書いて欲しかった
です(単なる読み落としだったら、すみません^^;;)。でも、確か、
『本名じゃなくて、マユちゃんとかマユたんとか呼ばれてるらしい』、みたいな
書き方しかしてなかったと思うんですよね。本返しちゃったんで、正確な文章は
もうわかんないですけど^^;

あと、やっぱり、校舎の屋上から落ちて、血まみれの状態から、すぐに
立ち上がって入れ替えトリックを実行して逃げるって、どう考えても無理が
あるよなーと思いました。血を拭うにしたって、水で濡らしたりしなきゃ
そんなに綺麗に拭えないだろうし・・・。どんだけ超人なんだよ、と
ツッコミたくなりました^^;

もうひとつ、緑が失踪してる間、彼女の唯一の肉親である父親はどうして
いたのかな。たった一人の娘が心配で仕方なかったんじゃないかと
思うと、緑のしたことがちょっと許せない。親子間の関係が悪かったとか
だったらまだわかるんですけど、その辺りの情報は全く出て来ないし。
娘の生死がわからない状態に置かれた親の気持ちを考えると、なんだか
父親が可哀想でならなかったです・・・。

それと、椎名が緑の婦人科通院記録で妊娠を疑うシーンがあるんですが、妊娠なら
普通は産婦人科に行く筈。そこで、妊娠はないだろーとピンと来てしまいました。
まぁ、だからといって、ホルモンの方だとわかった訳ではないのですが^^;

緑はこの後、どういう人生を送るんでしょうね。あそこまで世間を騒がせてしまって、
もう普通の人生は歩めない気もしますけどね・・・。











面白かったんですけど、後味の悪さが尾を引いてか、あまり手放しで褒める気には
なれなかったかなぁ。椎名と樋口の友情関係は良かったですけどね。最後の文章、
なんか無理矢理な感じもしたんですけど・・・狙いとしては、爽やかさを演出したので
しょうけど・・・コウのそれまでのキャラを考えるとどうも、ね。そんな簡単に変えられる
もんじゃないと思うなぁ。
なんか、思ったより辛口になっちゃったな^^;読んでる時はもうちょっと
高評価だったような気がするんですけど・・・あれれ?^^;;