ミステリ読書録

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畠中恵/「ひなこまち」/新潮社刊

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畠中恵さんの「ひなこまち」。

身体は弱いが知恵に溢れる若だんなが、謎の木札を手にして以来、続々と相談事が持ち込まれる
ようになった。船箪笥に翻弄される商人に、霊力を失った坊主、恋に惑う武家。そこに江戸一番
の美女探しも絡んできて…。シリーズ第11弾(紹介文抜粋)。


しゃばけシリーズ最新作。毎年一作づつ刊行されるこのシリーズ、今作でもう11作目になる
そうで。
ここ数作はちょっと趣向を変えた作品が続いていましたが、今回は初期の頃のような、割合
正統派な連作形式。とはいえ、一作まるごと、一話ごとに若旦那が他人の悩み事を解決する、
簡易便利屋家業、といったようなお話になっているという点で、また今回もちょっぴり他の
作品とは違ったテイストにはなっているかな。
そんな便利屋めいたことをし始めたきっかけは、若旦那がある日、櫓炬燵を作りに来た指物師
が一緒に持って来た道具入れに入っていた木札を手にしたこと。木札には、『お願いです、
助けて下さい』の文字。誰が書いたか分からないその木札が妙に気になる若旦那、自分が
何か助けにならないか悩み始めます。けれども誰を助けたら良いのかわからない。悶々と
過ごす中、そんな若旦那には次々と悩み事が持ち込まれ始めます。木札の主が助けられずとも、
他の人は助けられるかもしれないと、心優しい若旦那はそれぞれの悩み事解決の手助けを
することに・・・というのが今回の大筋。
いつも周りの人に助けられてばかりだから、今度は自分が助ける側に回りたい、という
若旦那の優しさが良く現れている一冊じゃないでしょうか。ほんとに、若旦那は良い子だなぁ。
今回はほんとに、良く頑張ったと思うよ。きちんと全員の悩み事を解決してあげてるし。
一話目の船箪笥が開かなくなっちゃった話、船箪笥が開く鍵があの言葉なのはすぐにピンと
来たので、開け方もだいたい見当がついちゃいましたけど。

表題作では、寝込んで動けない若旦那の代わりに、仁吉と屏風のぞきが大活躍。この二人が
一緒に動くのって珍しいですよね。相性悪そうでしたけど(笑)。でも、悪態つきながらも、
なんだかんだで二人でほとんど事件を解決しちゃったんだから、意外と相性合ってるのかも?(笑)
屏風のぞきが堀川に落ちた時は、『もしや、また!?』とヒヤヒヤしましたけど^^;まぁ、
実質的には、若旦那の慧眼があったからこそ、解決出来た事件でしたけれどね。

四話目の『さくらがり』はみんなでお花見に行くお話。前前作『ゆんでめて』での
お花見の経験の名残が、ちらほら登場人物の心に残っているようで、ちょっぴり切ない気持ちに
なりました。
安居と雪柳さん、お互いに想い合っていて、とっても素敵なカップルだなぁと思いました。
若旦那が二人の幸せを願うラストも良かったですね。


今回も、要所要所で鳴家が愛らしかったです。ほんと、このシリーズは読み終えた後ほのぼの
出来て良いですね。
若旦那が、人の役に立てることに喜びを見出しているところが微笑ましかったです。このまま、
ずっと真っ直ぐ育って欲しいなぁ。