ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

相沢沙呼/「ココロファインダ」/光文社刊

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相沢沙呼さんの「ココロファインダ」。

自分の容姿に自信がもてないミラ、クラスの人気者カオリ、「わたし」というしがらみに悩む秋穂、
そして誰とも交わろうとしないシズ。同じ高校の写真部に所属する4人は、性格も、好きなカメラも
違うけれど、それぞれのコンプレックスと戦っていた。カメラを構えると忘れられる悩み。しかし、
ファインダーを覗く先に不可解な謎が広がっていて…。高校の写真部を舞台に、女子高生たちが
構えるカメラに写るのはともだち、コンプレックス、未来、そしてミステリー(紹介文抜粋)。


相沢さんの新作。サンドリヨンシリーズ以外の作品は初めてですね。今回は、高校の写真部に
入部している四人の女の子たちが主人公。一章ごとに主人公が変わる一話完結構成。四人四様、
それぞれに内面にコンプレックスや様々な葛藤を抱えていて、傷つきやすい思春期の女の子
たちの心理描写がとてもリアル。これを男性が書いたとはね~。女の子同士の微妙な友情関係
の描き方なんかも上手いですし。キャラ造形も、それぞれ個性があって良かったと思います。

私は特に、カオリとシズの回が面白かったかな。どちらも、他の人物の視点からだとわからない
ような意外な一面を持っていて、驚かされました。
カオリが、告白を断った理由にも驚きました。っていうか、過去にそういうことがあったのに、
いけしゃあしゃあと告白してくる男に呆れました。殴られて当然でしょう。カオリの内面を知る
まで、彼女に対してあんまり好感が持てなかったのですが、彼女視点の回を読んでガラリと
印象が変わりました。もちろん、いい方にです。過去の屈辱を糧に、這い上がろうとずっと
頑張って来たんでしょうね・・・。ミラが思うように、生まれつき、何でもかんでも恵まれて
育って来たような子かと思っていたので、端から見るだけじゃ、わからないものだなぁと
思わされました。

意外といえば、シズの内面も意外でしたね。彼女はもっと、クールなキャラだと思っていたので、
あんな激しいコンプレックスがあるとは思わなかったです。写真が好きだという、彼女の思いが
ひしひしと伝わって来ました。これほど好きなものがあって、才能もあるのに、親から理解
してもらえないって辛いですよね・・・。彼女の思いがきちんと親に伝わって、好きな道に
進んで行けると良いのですけれど。シズって、クールで他人に興味ないのかと思いましたが、
実はすごくさみしがりやで、他人のことを良く見ている子なのでしょうね。シズのような子、
私はすごく共感出来るし好きだなぁ。

頻発するカメラ専門用語はちょっと読みにくいところもありましたが、四人の少女たちそれぞれの
悩みや葛藤が、カメラのファインダーを通して鮮やかに胸に届いて来るような作品でした。
写真やカメラといった小道具の使い方が上手いですね。
ちょっとしたミステリー要素も効いていて、なかなか楽しめた一作でした。