ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

青柳碧人「クワトロ・フォルマッジ」(光文社)

坂の上の小さな個人経営のピッツェリア、<デリンコントロ>で働く紅野仁志。

ある日、オーナーがスキー旅行に行く為、午後6時の夜営業から店長代理として

働くことになった。厨房担当の宮田久美、調理担当の片山伸也と共に忙しく働いて

いたが、アルバイトの八木沼映里がなぜか、夕方突然出て行ったきり戻って来ない。

人手不足で目が回るほどの忙しさだったが、なんとか閉店間際まで乗り切ったと

安堵しかけたところ、一人の男性客が飛び込んで来た。男が注文したマルゲリータ

を食べると、なぜか突然苦しみだし、絶命した。男は毒殺されたらしい。その

タイミングでアルバイトの映里も戻って来た。男以外に客はなく、毒を仕込めたのは

従業員のみ――一体誰が何の目的で男を殺害したのか?

<デリンコントロ>のスタッフ四人の視点が順番に出て来て、物語は進んで行きます。

他の人物視点で語られることによって、それぞれに抱えている秘密が明らかに

なって行きます。なんか、好感持てる人物がほとんど出て来なかったなぁ。唯一、

紅野の離婚して離れて暮らしている一人娘・さやかちゃんだけは年の割に達観していて

聡明で、好感持てるキャラでしたけど。紅野自身も悪い人間じゃないとは思うものの、

一人だけ物わかり悪くて鈍感なせいで、自虐気味でちょっと鬱陶しい性格だった

しね。アルバイトの映里は天邪鬼にもほどがあるっていう(対紅野限定だけどw)

超面倒くさいタイプだし、片山も本職が明らかになってからは言動が鼻につくことが

多かった。でも、一番嫌悪感が強かったのは、厨房担当の久美。裏の顔が酷すぎて。

身勝手な言動に辟易しまくりでした。こういう裏表のあるタイプはとても苦手。

絶対付き合いたくない人間だなぁと思いましたね。

それぞれの内面を知って、表面からはわからない心情や事情が明らかになって行く

過程は面白く読めたけど、肝心の事件の真相は拍子抜け。ツッコミ所満載だし。

こんな方法取らなくても、殺害する方法はいくらでもあるような・・・。四人の

登場人物それぞれにチーズを当てはめるのは面白かったけど、理由を聞いても

いまいちピンとこなかったなぁ。わかるような、わからないような・・・。

ただ、出て来るピザは美味しそうだった。ピザめっちゃ食べたくなった(笑)。

映里の本音を知ったら紅野はどうするんだろうなぁ。年齢差ありすぎて、対象に

ならないかな?さやかの応援もあるから、意外とうまく行くような気もするけど、

映里のあの天邪鬼が治らない限り、関係性は変わらないかも。

読みやすいし、面白くない訳でもなかったのだけど、いつもの青柳さんのような

キレのあるミステリーとは云えず、あまり印象に残る作品ではなかったかな。