ミステリ読書録

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東川篤哉/「魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?」/文藝春秋刊

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東川篤哉さんの「魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?」。

美貌で美脚。傍若無人のキャリア系女子・椿木綾乃警部。実はキレ者?それともただの変態?
小山田聡介刑事。魔法使い少女マリィ。待望の新シリーズSTART!謎と魔法のユーモア・
ミステリー(紹介文抜粋)。


東川さんの新シリーズ。二作目の『魔法使いと失くしたボタン』だけ以前『オールスイリ』
という雑誌形式のアンソロジー(?)で既読。結構印象的なトリックだったんで、良く覚えて
ました。ただ、その時も肝心の魔法使いのマリィや主人公の印象はいまいち薄かったんですけどね。
今回、一冊通して読んでも、その印象はあんまり変わらなかったですね^^;キャラ立ちという
意味では、今までの作品を超えられてはいないかなーという感じ。マリィが魔法使いである
必要性も、あるにはあるんですけど、どうもその魔法という設定を上手く生かしきれていない
ような気がしなくもなかったり・・・。
いや、面白かったんですけどね。うん。相変わらずしょーもない会話の応酬とか、魔法という
設定があっても、しっかり基本は本格ミステリになっているところとか。東川さんらしい
ユーモアミステリになってると思いますしね。マリィと聡介の関係の変化なんかも読みどころの
ひとつ。四話目のラストではニヤニヤしちゃいました。今後は、椿木警部とマリィの間で
揺れ動く聡介・・・みたいな三角関係的な楽しみも増えて行くのかなー。それにしても、
椿木警部と聡介のドSとドMな関係、少し前に読んだ七尾与史さんの『ドS刑事』に出て来た
マヤとその部下刑事の関係とそっくりだなーと思いました。どっちが先なのかはわかんないけど
・・・^^;


以下、各作品の感想。

『魔法使いとさかさまの部屋』
犯行現場の部屋がさかさまにされた理由にはなるほどー、と思わされました。特に、29インチの
ブラウン管テレビをさかさまにした手法には驚かされました。誰かが気付きそうだとも思ったの
ですが、案外人間の思い込みで騙されちゃうものなのかもしれないなーと思いました。ビデオとか
テレビを使ったトリックがお得意ですよね、東川さんって。

『魔法使いと失くしたボタン』
先述したように、これだけ既読。聡介が、一発逆転、犯人を駐車場で追い詰めるシーンが印象的
だったので、良く覚えてました。自分が犯したトリックを見破られる訳がないと自信満々の泉田に
一矢報いた場面が爽快でした。

『魔法使いと二つの書名』
何度も何度も練習すると、人の字までそっくりに書けるようになるものなんですかねぇ。同じ
名前を何度も何度も繰り返し書く犯人の執念がちょっと怖かったです。その割に犯行動機が薄い
ような気もしたのですが・・・。
あと、犯人を陥れるためとはいえ、万年筆を十本以上も揃えるのは結構大変だったんじゃないかな
ーとか、余計なことを思ってしまいました(笑)。警察仲間から集めたのかな。

『魔法使いと代打男のアリバイ』
マリィが魔法使いであるという設定が一番生かされている作品じゃないでしょうか。特に、皮肉な
オチがいいですね。マリィの気まぐれな魔法が犯人のその後の運命を変えた訳ですから。
ラスト、マリィの新しい雇い先にニヤニヤ。しかし、男二人暮らしの家でお手伝いを雇う必要
ってあるのかしらん。古いお屋敷だから手入れが大変ってのはあるでしょうけども。聡介の父親が
どんな人なのか気になるなー。変わったひとっぽいので。マリィと父親の会話とかも聞いてみたい
ですね。



新シリーズってことは、今後続いて行くってことなんでしょうね。四話のオチから、この先
聡介とマリィはいつでも結託して捜査が出来るってことですしね。巧いこと考えましたねー。
続刊を楽しみに待ちましょう。