ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉「野球が好きすぎて」(実業之日本社)

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東川さん最新作。タイトル通り、今回は野球に特化したミステリー。野球好きの

東川さんらしい作品集だと思います。正直、私個人は野球ってあんまり興味が

ないので、作中のマニアックな野球うんちくには少々辟易したところはありました。

まぁ、野球興味ない私でも、最近の大谷君の活躍だけは嬉しく思ってニュースを

チェックしてはいるのですけれど(あそこまですべてにおいて完璧だと、好感

持たずにはいられませんからねぇ)。

もちろん、本書は国内のプロ野球がメインですが。5作が収録されていて、2016年

から一作ごとに一年が進み、最後はコロナ禍真っ只中を描いた2020年のお話。

 

根っからのスワローズファンの神宮寺勝男警部と、その娘のつばめは、親子で

ペアを組む刑事コンビ。二人は、一年ごとに野球が絡んだ殺人事件に遭遇する。

捜査に難航した二人が助言を求めるのは、野球ファンが集うベースボールバー

『ホームラン・バー』の常連で、一年ごとになぜか名前を変える謎のカープ女子。

毎回、するどい推理で事件を解決に導くのだが――。

相変わらずキャラクターがゆるいですね。熱狂的なスワローズファンの父親と、

野球にはあまり興味のない娘のつばめとの掛け合いが面白かったです。そして、

なぜか一年ごとに名前を変える安楽椅子探偵役のカープ女子の不思議ちゃんキャラ

も面白かった。ただ、先にも延べたように、野球に興味がないとちょっとノリ

についていけないこともあるかも(私がそうだったんで^^;)。ミステリ部分は

面白かったんですけどね。野球うんちく場面になると、どうにもこうにも眠気が

襲って来てしまって。読むのにやたらに時間かかっちゃったなぁ。

ただ、最初はどれもが倒叙ミステリなのかと思って読み始めたら、ほとんどの

作品で最後に意外な展開が待っていて、読ませる構成はさすがだな、と思いました。

特に印象に残ったのは、なんと言っても2019年のパットン見立て殺人の回かな。

東川さん、白物家電を取り入れるの好きですよねぇ。まさかの凶器に目が点。

実際、東川さんが使っているアレからヒントを得たそうですが・・・いくらこういう

機能がついていても、コレを凶器にするって無理があるでしょ^^;;その光景を

想像すると・・・コントだよ!(笑)いやもう、東川さんらしすぎる凶器に

笑っちゃいましたね。これはこれで面白かった。

二話目の2017年の2000本安打の回では、アナウンサーらしい言葉の拘り

に唸らされました。この言葉が間違っているというのは、野球ファンなら知ってて

当然の知識なんでしょうか。私は全然知らなかったです。勉強になりました。

あと、2020年の千葉マリンの西日事件の話も面白かったです。西日が眩しくて

試合が中断するって出来事が実際あったとは。コロナ禍ならではの出来事だった

とか(試合が11月までずれ込んだせいだそう)。東川作品にも、ついにコロナ

の現実が反映され始めましたか。まぁ、このシリーズは一年に一度、実際のプロ

野球界の出来事を元ネタにしているから、反映させざるを得なかったのでしょう

けれど。犯人もそっちだったか~って感じ。冒頭の犯行のシーンを読んで、完全に

犯人読み間違えてました。上手いですね。

 

そして、今回一番の目玉といえば、巻末に収録されている『あとがき』です。

ご本人もおっしゃってますけど、東川作品であとがきって読んだことなかったので、

ちょっとびっくり。あとがきを書かなかった理由に関しても触れられていますが。

そんな理由かよ!とツッコミたくなりました^^;

ご本人による収録作品解説も書かれていて、楽しめました。これから毎回ちゃんと

あとがき書いて欲しいなぁ。やっぱり、あとがきがあると作者の生の声が知れて

嬉しいですもんね。

 

追記。この記事を下書きした時点では実はオリンピックは始まっていなかったの

ですが、記事アップする今日は8月10日。オリンピックで野球は金メダルを

獲りました。野球は正直あんまり興味なかったけど、やっぱり金メダルがかかる

試合となると俄然応援する気になりまして、全部は観なかったものの、終盤は

食い入るように観てしまいました。最後、スリーアウト獲った時は嬉しかったな。

日本チームのみなさま、おめでとうございます。