ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

恩田陸/「私と踊って」/新潮社刊

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恩田陸さんの「私と踊って」。

ダンサーの幸福は、踊れること。ダンサーの不幸は、いつか踊れなくなること――稀代の舞踏家
ピナ・バウシュをモチーフに、舞台を見る者と見られる者の抜き差しならない関係をロマンティック
に描いた表題作をはじめ、ミステリからSF、ショートショート、ホラーまで、物語に愛された
作家の脳内を映しだす全十九編の万華鏡(紹介文抜粋)。


恩田さんの最新作・・・かと思っていたら、すでにその後に前後編の新刊が出てたんですね^^;
上巻はもうすぐ回って来る予定ですが、下巻はちょっと間が空いちゃいそうで、続けて読めな
そうなのが気がかりなんですけども。

今回は久しぶりの短篇集。ショートショートも入っているので、全部で十九篇が収録されて
います。今回もとてもバラエティに富んだ短篇集でした。ひとつひとつの世界観が全然
違うので、改めて恩田さんの引き出しの多さを見せられた思いがしました。オチがないような
ものもあるのですが、恩田さんならまぁ、いっか、ってなるから不思議(笑)。オチが
わからないのもそれはそれで味があるっていうかね。なんですかね、この恩田びいきは(笑)。
でも、恩田ファンならこの気持、わかって頂けると思う(笑)。
ただ、一篇、読んでる時ほんとに意味がわからないものがあったんですが、あとがきの
ご自身解説によって、『中庭の出来事』を受けての作品だと判明。細かい内容すっかり
忘れてるんで、スピンオフだとわかっても内容が理解出来なかったのが残念でした^^;


では、各作品の感想をば。十九篇もあるんで、一言づつ。

『心変わり』
デスクに残されたものから、いなくなった樺島のメッセージを読み取る過程がとても
面白かった。続きが読みたい!

『骰子の七の目』
二者択一を決める会合。なんでもかんでも白黒決めなきゃいけないなんて、優柔不断な私には
怖い世界だ。ぶるぶる。

『忠告』
ショートショートですが、その後に出て来た対照的な『協力』と併せて、とても印象的な
作品でした。ある日突然自分のペットが字を書けるようになったら・・・『協力』とは
違って、こちらはペットに救われる話。

『弁明』
先に述べた『中庭の出来事』のスピンオフ。本編読み返したい^^;

『少女界曼荼羅
一番恩田さんらしい世界観って感じがしました。こういうの大好き。ジブリのアニメに
なりそうですよね。これも長編で読んでみたいです。

『協力』
『忠告』とは真逆のオチ。自分のペットがこっちタイプだったらと思うと・・・ぞぞぞ。

『思い違い』
何気ないコーヒーショップでの一コマを描いているかと思いきや・・・ラストで意外な
事実が判明。有栖川さんの短篇でも思いましたが、『九マイルは遠すぎる』をまた読んで
みたくなりました。

台北小夜曲』
Kの元に来た謎のメールの主の正体は意外でした。ラストはKの妄想の中の出来事なんでしょうね
・・・。

『理由』
耳の中に猫が落ちる、というシチュエーションがシュールでユーモアがあって面白かった。
でも、自分に起きたら・・・困るな、これ^^;;でもラストのオチが好き。両耳からしっぽが
出てても、幸せになれるのね(笑)。猫の名前がウカツとソコツってとこもツボでした(笑)。

『火星の運河』
台北小夜曲』と対になる作品。あちらはK視点でしたが、こちらはY視点から。『カアサン、
アノボウシ・・・』が出て来る当時ヒットした映画って、森村誠一原作の人間の証明
だと思うんですけど・・・違うかな。ネットで調べたら、詩自体は西条八十の作らしいですが。

『死者の季節』
実は読んでる時、これってもしかして、恩田さんの体験談なのでは・・・と思ったんですよね。
50歳って年齢も引っかかったし。あとがき読んだらビンゴ!で、改めてぞーっとしました。
自分の死に様なんて、知らされたくないよぅ(><)。占いなんて、良いことだけ信じてれば
いいんですよね。

『劇場を出て』
これも書かれた意図がよくわからなかったのだけど、多部未華子さんの写真集の為に書かれた
ものだそうです。少女のように見えて、実は大人の女性の顔を持っている、という多部さんの
イメージが書きたかったのかな。

『二人でお茶を』
あるピアノ弾きに、亡くなった有名ピアニストの魂が宿り、偉大なピアニストになる話。
共存してピアノを弾く二人が楽しそうなのが良かったです。二人でなくなった後も、その
経験を生かして主人公が前向きに生きているところが好きでした。

『聖なる氾濫』
ピラミッドの中には逆さまの船が埋められているってホントなんでしょうか。写真を見ただけで、
その写真を撮った人物と同化出来る能力を持つ青年の話。

『海の泡より生まれて』
これも『聖なる~』と同じ青年の話。このシリーズ、映像化したら綺麗そうだ。写真から、
いろんな映像が喚起されて、想像力が膨らみます。これも短篇で留めるのは惜しいなぁ。

『茜さす』
これも同じシリーズ。三つとも、『知られざる大英博物館というNHKスペシャルで放映された番組の
書籍化に併せて書かれたものだそうです。なるほど、映像向きな訳だね。不思議なビジュアルの
青年には、日本の血が混じっていたのですね。彼を主人公に、ちゃんとした長編で作品を
書いてほしいです。

『私と踊って』
壁の花と化していた地味な女の子の元に『私と踊って』と言ってきた女の子。彼女とのつかず
離れずの友情関係が好きでした。離れていてもどこかで繋がっている友情っていいね。恩田さん
ご自身お気に入りの作品だそうです。うん、納得。

『東京の日記』
外人が書いた日本滞在記の体裁なので、これだけ収録が逆ページから横書きで収録されています。
こういのも珍しいですね。のんびりした語り口ですが、結構シビアな内容。架空の日記ですが、
変にリアルで、ちょっと怖くなりました。

『交信』
・・・実は、十九篇収録と書きましたが、私はこれ、読めませんでした・・・というのも、
収録されているところが、カバーの下の表紙部分!!
図書館本だと、パウチされてるからカバー外せないじゃないかぁ・・・(泣)。
お、お、恩田さーーーーん・・・なんてところに収録するんですか^^;
まぁ、買って読め、ってことなんでしょうけどもね・・・。
というわけで、これだけ感想なし。今度、本屋で表紙めくって読んで来ます・・・とほほ(涙)。



ま、まぁ、一篇読みそこねたのは返す返すも残念ですが、めくるめく恩田ワールド、今回も
たっぷり堪能致しました。やっぱり、恩田さんの世界は良いなぁ。満足、満足。