ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

蘇部健一「小説X あなたをずっと、さがしてた」/若林正恭「ご本、出しときますね?」

どうもどうも。桜も散ってしまいましたねぇ。みなさん、お花見されましたか~?
私は、友人と二人でこじんまりと某市の巨大公園でしてきました。綺麗だった~。
相方とは、埼玉の日帰り温泉に行った道中で高速沿いに咲いていたのを眺めたくらい。
いつもはちゃんとお花見目的で出かけたりするんですけどね。
今年は気温が高かったせいか、開花から散るまでの期間が短かった気がします。
花の命は短いですねぇ。


読了本は今回は二冊です。


蘇部健一「小説X あなたをずっと、さがしてた」(小学館
久しぶりに図書館が蘇部さんの新刊を入れてくれました。多分、ちょこちょこ
新刊は出ていたと思うんですが、図書館が入荷してくれず、読めずにいました
(買えよ)。自称蘇部クラブ会長の筈なのに、おかしいな・・・^^;;
なんか、タイトルから、また『赤い糸』系なのかな?と思ってましたが、
やっぱり、そうでした。しかし『小説X』って何なんじゃい、『文庫X』か
『教団X』のパクリか!?と思いましたらば、タイトルは公募で集ったものだ
そうで。何かありそうだな~と思いながら読み始めました。
中盤までは、ほんとに『赤い糸』系の、特に代わり映えしない恋愛小説でした。
相変わらずゆるいな~と思いながらページを進めていたのですが・・・終盤、
驚くべき事実が明らかに。え、えぇーーー!?と目が点になりつつ最後まで
読み進めると・・・ラスト一行で衝撃が。ん?え?えぇ!?何コレ、どういうこと!?
と、正直最初いまいちピンと来なかったんです(アホ)。自分なりに、何度か
読み直してみて、こういうことなのか?という一応の結論は出たのですが・・・
もしかして、全然間違った解釈なのかもしれなくて、ちょっと自信ないです。
ネタバレサイトとかないかな、と探してみたんだけど、ちゃんと解説してくれてる
ページも見つからず。
いろいろ、腑に落ちない部分もあるし。でも、衝撃のフィニッシングストローク
なのは、間違いないと思います。
薄い本なのに、もう一作入ってるんですが、そっちはほんとにオーソドックスな
ボーイミーツガールものでした。終盤はアンジャッシュのコントみたいな、
ちょっとした勘違いによる行き違いで不穏な結末になるのかと思いきや、ラストも
ハッピーエンドだったので、ちょっとほっとしました。一作目のラストがあまりにも
救いがなかったですからね・・・。

 

では、以下、表題作の大々的なネタバレ。未読の方はご注意ください。
既読の方は、私の解釈が合っているのか教えてください・・・(切実)。



















奈子の運命の人、柏木裕真は、奈子の親友である葵の変装姿だった。
葵は、付き合っていた彼氏を事故で亡くし、その事故の原因を作った
奈子を恨み、復讐の為に奈子に近づき、親友になった。
かつらを被って男のフリをして、橋の上で奈子との出会いを演出。その恋を親友の
葵として応援、のちに奈子を裏切って、葵と裕真二人が付き合っているかのように
自作自演した。
ラスト、奈子と裕真が付き合っていると知って逆上した風を装った葵は、裕真の
マンションの風呂場で裕真を殺害したと奈子に思わせた。
しかし、血まみれの裕真の死体は、葵の大学の生徒が作った、葵の蝋人形を
裕真に仕立てたものだった。奈子に絶望を味わわせたことで、葵の復讐は完了した。
裕真の額の傷は、実は葵が彼氏と事故に遭った時に出来た傷だった?

 

裕真=葵ってのは、さすがに唐突過ぎて無理があるように思いました。せめて、作中に
雰囲気が似てるとか、顔立ちが似てる、とかの仄めかしがあったら信憑性も
増したかもしれないですが・・・。伏線全くなかったような(読み落とし?)。
それか、葵のメイクがすごく濃いとか。かつら被ったくらいで、そんなにすんなり
男だと騙されるかなぁ・・・。声だって違うし。声色を変えてたって描写もなかったので。
それと、葵の額にも傷がある筈だけど、それはどうやって隠していたのかな。
前髪下ろしてはいたんだろうけど、風が吹いたりして何かの拍子にバレる可能性も大のような。
あと、奈子が、葵と彼氏の事故で逃げた時の心理描写なんかも書いて欲しかったな。
あんな大事故を起して、その場から逃げてのうのうと生活してたとしたら、
とんでもない性悪女ってことですよね。死亡事故だった訳だから、テレビとかで
ニュースにもなるだろうし。でも、そうなると、葵の復讐は生ぬるいような。
奈子に恐怖を味わわせただけで復讐完了って。それで満足したとしたら、葵は
基本的には悪い人間じゃないのでしょうね。
麻婆豆腐と麻婆茄子の微妙な描写の違いで仕掛けに気づかせる辺りは、なかなか
巧いな、と感心させられました。
まぁ、騙されたことは間違いないので、久しぶりにソブケンで楽しい思いをさせて
もらえて満足です。
でも、できれば六とんの続き書いて欲しいなぁ。また、最終ページのイラストで
あっと言わせてもらいたいものです。
私は永遠に蘇部クラブ会員ですよ!






若林正恭「ご本、出しときますね?」(ポプラ社
みなさんご存知の通り、お笑いコンビ『オードリー』の若林さんが、ご自身のテレビ番組で
作家さん二人と鼎談した様子をまとめた鼎談集。言わずとしれた本好きの若林さん、
作家さんのお知り合いもとても多いみたいで、気心のしれた作家さんとの会話は、
とても人見知りだった人とは思えない面白さ。話の引き出し方が上手いな、と
感心させられました。もともと、若林さんのことはずっと気になる存在で、以前に
出された『社会人大学人見知り学部 卒業見込』は当時ものすごく読みたいと思って
いたのに図書館入荷してくれず、結局今に至るまで読めないままなんですよね。文庫
落ちしてるみたいだから、買っちゃおうかな、とも思ってますが。
基本私も普段は人見知りなんで、なんかシンパシー感じるものがあるんですよね。
根本が根暗っていうか。本好きっていうのも、すごく共感出来るし。オードリーの
ネタ自体も好きなんですけどね。
今回の若林さんの鼎談相手の作家さんラインナップは以下。

 

 

私が良く読む作家さんってほとんど出て来ないんだけど、それでも、作家さん同士
の会話読んでるだけで、めっちゃ面白かったです。若林さんと仲がいいからか、
同じ作家さんが何度も登場されるので、できればもうちょっといろんな作家さんに
登場して頂きたかったですけれど。ミステリ作家が出て来ないのも残念だし。しかし、
西加奈子さんってほんと面白い人ですね。あと、一番興味あったのは、村田沙耶香さん。
キャラ強すぎ。コンビニ人間めっちゃ読みたいんだけど、予約数300超え・・・(涙)。
あと、カトチエ(加藤千恵)さんも面白いキャラだった。著作はちゃんと読んだこと
ないけど^^;でも、今回個人的に私が一番受けたのは、佐藤友哉島本理生ご夫妻の
会話。ユヤタン、面白すぎ・・・。取材する対象がクマだけって!!どんだけクマ好き
なんだよ(爆)。あと、結婚されてもう結構経つのに、未だにお互いの呼び名が
『佐藤さん』『島本さん』。らしすぎて(笑)。ユヤタンに友達がいないのは、
作品読めばなんとなくわかるけどね(苦笑)。
どの回も面白かったです。角田光代さんの純粋さにちょっと感動。作品読んだこと
ないけど、読んでみたくなりました(笑)。
もっといろんな作家さんバージョン読んでみたいです。BSの番組らしいけど、まだ
続いているのかな?
若林さんが、意外にいろんな作家さんと仲がいいのにビックリ。こんなに交友関係
広い人だったんですねぇ。人見知り、本当に卒業しちゃったみたいですね。
鼎談の最後に必ずお薦めの本を一冊紹介してくれてるんですが、読んだことが
ある作品は森鴎外高瀬舟桜庭一樹砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
だけでした・・・(しかも、『高瀬舟』は教科書っていうw)。