ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有川浩「キャロリング」/湊かなえ「物語のおわり」

どうもみなさま、少々ご挨拶が遅れましたが、新年あけましておめでとうございます。
年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。
ワタクシめは、例年通り、元旦深夜に初詣に行って、二日に初売り(福袋!)に行って、
三日はスーパー銭湯でゆったり過ごして、四日に毎年恒例の七福神巡りをしてきました。
いやー、休みってほんとあっという間ですねぇ。
久しぶりの仕事はほんと辛かった・・・(ToT)。
ちなみに、元旦に引いたおみくじは・・・でした・・・しーん。
確かに、年明けからあんまりツイてない気がする。
パワースポットにでも行って、運気を上げるべきかしらん。


読了本は二冊。年末に読んだ本が一冊、年明けに読んだ本が一冊。
長期の休み中って、思ったよりも読書がはかどらないのよね。
毎日出かけてるからだろうけど^^;


有川浩キャロリング」(幻冬舎
有川さんの最新作。クリスマスのお話っぽかったので、できればクリスマス前に
読みたかったのだけど、その他の予約本の関係で結局年末最後に読んだ本になって
しまった^^;
12月25日のクリスマス締めで倒産することになった子供服メーカーの社員、大和俊介が
主人公。俊介が勤める『エンジェル・メーカー』は、子供服メーカーであると同時に
学童保育もやっていたが、そこも倒産と共に閉めることになり、子供たちは一人を除いて
すべて他に移った。最後まで預かることになった田所航平の両親は、離婚の危機にあった。
キャリアウーマンの母・圭子は、年明けに海外転勤が決まっており、それを機に離婚して
航平を引き取るつもりなのだ。両親に離婚してほしくない航平は、二人を仲直りさせる為、
別居して横浜にいる父・祐二に会いに行こうと思い立つ。そこで、付き添いを大和の同僚・
折原柊子に頼み、二人は横浜へと向かうことになるのだが、事態は思わぬ方向へと進んで
行くことに・・・。

主人公俊介は幼少の頃、父親の暴力に悩まされ家族が崩壊した経験があることで、
心に闇を抱えています。付き合っていた同僚の折原柊子とも、そのことがきっかけで
別れることになってしまう。けれども、お互いにまだ惹かれ合っているので、
読んでてすごくじれったかった。
俊介の家庭の事情は、私が彼の立場だったら、ほんとに耐えられないと思う。子供は親を
選べないというけれど・・・こんな人間は親になっちゃいけないんじゃないかって思いましたよ。
でも、暴力を振るう父親も最低だけど、そんな母親を庇って父親に反抗した息子に暴言を吐く
母親も酷すぎる。そこで息子の側に立ってあげられない母親にただただ腹が立ちました。
血の繋がった両親からこんな仕打ちされたら、そりゃートラウマになっても仕方ないって
思いました。
『親を割愛する』なんて、自分が親の立場で子供に言われたら、死にたくなるくらいの
ショックを受けると思う。でも、俊介の両親は、言われても仕方がないことをしたのだと
思う(まぁ、直接本人たちに言った訳じゃないと思いますが)。
でも、今回の出来事で、子供も欲しいと思わなかった俊介の気持ちも、ちょっと変化が
あったのかな、と思う。航平とはいいコンビだったしね。最後に、柊子に対して素直に
なれたのが嬉しかったです。
航平の両親に関しては、やっぱりこういう展開になったかーって感じでした。まぁ、お互いの
性格を考えれば、仕方がないことかな、と思う。振り回される子供が一番可哀想ですけどね。

悪役の筈の、赤木ファイナンスのメンバーたちもキャラが立っていてよかったですね。俊介側
の視点からだけの構成だったら、彼らは単なる悪役で終わっていたでしょうけど、赤木側からの
視点でも語られているので、彼らの側にも感情移入することが出来ました。あんな犯罪に
手を染めないで、ずっと四人で事務所をやっていけたらよかったのに・・・。彼らの師弟関係
の絆の深さにぐっと来ました。

この作品、もともとは演劇集団キャラメルボックスの公演の為に書かれたお話だそうで。確かに、
演劇向きかも。赤木側のキャラが立っていた理由もそれなら頷けるなー。
クリスマスに読みたいエンタメ小説でした。


湊かなえ「物語のおわり」
未完の小説を巡る群像小説。ある人物が書いた未完の小説がバトンとなり、北海道を旅する
旅人たちに次々と手渡されて行く。小説を手にした人物たちは、それぞれに自分ならではの結末を
思い描くという、ちょっと一風変わった群像劇となっています。
なかなか面白い趣向と構成のお話ですね。冒頭の物語が、第二章を読んで初めて、『ある人物が
書いた未完の小説』であることがわかります。そこから、一章ごとに主人公が変わるのですが、
前の章に出てくる主人公から、次の章の主人公へと、冒頭で提示された未完の小説が受け
継がれて行きます。それぞれにドラマがあって、それぞれに感情移入出来ました。
冒頭の小説自体は、ちょっと古くさくて、可もなく不可もなくという感じの内容。それもその筈、
書いた人物の半生記ほど前の私小説だったのだから、これは仕方がない。唐突に終わっている小説の
その後は、物語の最後に明かされますが、そこはちょっと結末がわかってすっきりした気持ちと、オチが
わかってしまってちょっと興ざめに感じてしまった気持ちと半々だったかな。
基本的にはあまりリドル・ストーリーって好きじゃないので、すっきりしてくれた方が読後感が
良いのは確かなのですが、今回みたいな作品の場合、オチはぼかしてあってもいいのかな、と思ったり。
面白かったけど、一章ごとに同じ小説のあらすじを毎回読まなきゃいけないのはちょっと面倒でした
(まぁ、ほぼ読み飛ばしていたけど)。あと、短期間に、こんなに多くの人の手に同じ小説が渡るって
いうのはちょっとリアリティに欠けるかな、とも思いました。みんながみんな、次の人に渡したい
と思うとは限らないと思うしね。まぁ、そこはやっぱりフィクションだからツッコんじゃいけない
ところなんだろうな^^;
北海道のいろんな景色が出て来て、私も北海道に行きたくなっちゃいました。私も、学生時代に
二週間かけて北海道を横断する旅をしたことがあるんで、その時のことも思い返しながら読みました。
いろんな人がそれぞれに思い描いた小説の『その後』は、それぞれに納得出来るものでした。
私だったら、どういう結末をつけるかなぁ。東京に行くよりは、優しいハムさんと結婚した方が
幸せになれると思ったので、最後にハムさんが現れてちょっとほっとしたところがあったのだけど。
実際のその後を知って、ハムさんはやっぱりとてもやさしい人だったんだな、と思いました。大好きな
人の夢を潰すような人じゃなかったとわかって嬉しかったです。
個人的には、二作目の智子のその後も気になります。彼女が無事出産出来たのかどうかが。彼女と
出会った萌が、なぜあの小説を持っていたのか気になっていたのですが、最後の章でその理由が
わかってなるほど、と思いました。
構成の巧さはさすがでしたね。それぞれの登場人物の掘り下げも丁寧でしたし。
ただ、最近、デビュー当時のようなドス黒さがなくなったところはちょっと残念。ずっとそれ
ばっかりも嫌だけど、たまにはそういう黒港作品も読みたいな、と思う今日このごろなのでした。