ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

道尾秀介「透明カメレオン」/ダ・ヴィンチ編集部編「サイドストーリーズ」

どうもこんばんは。毎日、気温の変化が激しいですね。
みなさま、ご体調崩されてませんでしょうか。

今回は二冊読了。ペースを上げないとやばい状況です・・・現在手元に
抱えている本が四冊。引き取りに行っていない予約本が三冊。予約待ち
残り一人の本が数冊・・・ひー(涙)。今読んでいる本はともかく、手元に
ある残り三冊は絶対読み逃したくない作品ばかりなので、なんとか
頑張らねば。って、なんかもー、毎回同じようなこと言ってますよねぇ、
私・・・(呆)。


では、一冊づつ感想を。

道尾秀介「透明カメレオン」(角川書店

記事、若干ネタばれ気味です。未読の方はご注意くださいね。


我らがミッチー最新作。といっても、出てからもう大分経っちゃって
るんですね。新刊情報知らなくて、予約に乗り遅れたのが痛かったなぁ。
今回の主人公は、声は抜群に良いけれど、容姿はぱっとしない、
ラジオパーソナリティの桐畑恭太郎。女性と付き合った経験もなく、
色恋沙汰とは全く縁のない冴えない日常を送っている。唯一の息抜きは、
行きつけのバー『if』で、常連客たちと飲み交わすこと。ある日、いつもの
ように『if』で飲んでいると、突然全身ずぶ濡れの女がやってきて、
一言『コースター』とつぶやいた。ママが思わず差し出したコースターを
受け取った彼女は、そのままふらりと店から出て行った。その女―三梶恵との
出会いが、恭太郎の日常をがらりと変えてしまうことに――。

とびきり魅力的な声を持ちながら、中身は34歳の冴えないヘタレ男・
桐畑のキャラクターはとても好感が持てました。34歳にして初めての恋に
目覚めてしまった恭太郎が、彼女を前にしてあたふたする姿は笑っちゃいけない
のだろうけど、ニヤニヤしてしまいました。特に、『しようか』の意味が
わかるくだりには、笑ったなぁ。勘違いに気付いて悄然とする姿は可哀想だったけど。
でも、そんなやついるか、とツッコミたくもなりました。学なさすぎでしょ・・・^^;
ただ、恭太郎が恋をしたその恵のキャラクターに全くいい印象が持てなかった
ので、中盤まではすごくもやもやした気持ちで読んでましたね。いくら
騙されていたからといって、彼女にあそこまで傍若無人に振る舞う権利が
あるとは思えないし、『if』のみんながそれを素直に受け入れるところも
納得が行かなかったです。まぁ、そこはその後で明らかにされるある事実
とも関わりがあったのかもしれないけれど・・・。
彼女のキャラがいまいち魅力的でないので、どうも恭太郎の恋を応援して
あげようとか言う気になれなかったんですよねぇ。いきなり恭太郎の部屋に
押し掛けてくるずうずうしさにもムカっとしたし。
彼女は彼女で、のっぴきならない事情があって、恭太郎たちを巻き込んだことは
途中でわかったのですが・・・。悪い子じゃないってこともわかるのですけどね。
でも、やっぱり最後まであんまり好きなヒロインじゃなかったな。

終盤、不法投棄現場がある森でのシーンは、ハラハラドキドキしました。絶体絶命
の場面での恭太郎、カッコよかったです。捨て身でがむしゃらに突っ込んで行く
ところは、痛々しかったですけれど。
でも、最後の最後、恭太郎が明かした事実に、すべてがひっくり返された
気持ちになりました。確かに、違和感が所々にあったんですよね。何か
あるぞ、とは思っていたのですが。『if』のみんなが、恭太郎に感謝している、
みたいな記述があったし。いわくありげだな、とは思ったのだけれど。
実は、『片目の猿』とかカラスの親指みたいなどんでん返しがあるのかな、
と想像してました。
それは中身は全然違っていたのだけど、本質は一緒なのかな、とも思う。とても
悲しいけれど、とても優しい嘘をついていたという意味では。
ラストシーンが切なくてやるせなくてならなかったです。
みんながみんな、嘘をつかなきゃ生きていけなかったという事実に、
胸が塞がれる気持ちになりました。
『透明カメレオン』というタイトルは、思ったほどには作品の本質をついてない
ような気もするのだけれど、恭太郎がまた透明カメレオンを飼いたいと切実に
願うその事実に、どうしようもなく悲しみが込み上げてきました。
恭太郎と恵がこの後どうなるのかは気になります。彼女が、ラジオパーソナリティ
の桐畑恭太郎のファンだというのは、まぎれもない事実なのだろうから。
恭太郎の幸せの為にも、二人がうまくいけばいいな、とは思うけれど。
今度は、お互いに、嘘をつかずに向き合ってほしいな、と思いますね。

ラジオといえば、私も学生時代とてもよく聴いていました。TBSラジオ
東京レディオクラブにサーフ&スノウ、TMネットワークのファンだったので、
カモンファンクスは絶対欠かさず聴いてたなぁ。あとはもちろん、
各曜日のオールナイトニッポンもね。
社会人になって全く聴かない期間も長かったのですが、最近になってまた
結構聴く機会が増えてきました。人の声って、何か安心するんですよね。
最近は夕方お料理しながら聴くことが多いです(相方の影響もありますが)。
職場では有線のラジオが毎日かかっているし(文化放送)。
ラジオパーソナリティの容姿って、確かにいろいろ想像しちゃうところが
ありますね。ずっと声だけしか知らなくて、ある日突然テレビで容姿を
見て、想像と違う~!みたいなことって結構多いかも(伊集院光
そうだった)。でも、それでがっかりとかってあんまり私はないです
けどね。声が魅力的な人って、やっぱり魅力ありますよね。

話がそれましたが、今回もミッチーらしい、優しくて悲しい物語でした。
『if』のメンバーたち、みんな素敵なキャラだったな。彼らがこれからも
前を向いて生きて行けますようにと願わずにはいられません。そして
もちろん、恭太郎には一番幸せになってもらいたいです。彼はすでにもう、
一生分の悲しみを抱えているのだから。



ダ・ヴィンチ編集部編「サイドストーリーズ」(角川文庫)
人気作家による人気作品のオリジナル・サイドストーリー集。すべての作品に
『一服ひろば』という言葉が出てくるのだけど、それもそのはず、すべての作品が、
JTのウェブサイト『ちょっと一服ひろば』というコーナーに掲載されたものだから
のようです。多分、依頼された時に、タバコと『一服ひろば』という言葉だけは
必ず入れてほしい、という要望があったのでしょうね。
全く違う作家の作品なのに、そういうくくりがあるおかげで、それなりに統一感の
ある短編集になっているところは、なかなか面白かったです。私自身は煙草を
吸わないので、ちょっと、とっつきにくい括りではありましたけどね^^;
やっぱり、元ネタを知っている作品は楽しく読めましたね。初めまして、の作家
さんも何人か。初めましてではなくても、その作品の元ネタは読んでないって
場合もありましたが。
寄稿作家は以下。
中田永一/貴志祐介/宮木あや子/東直己/垣根涼介/狗飼恭子/中山七里/笹本稜平/
冲方丁/誉田哲也/貫井徳郎/三浦しをん

なかなか豪華ですよねー。元ネタを知っているのは、中田さん、貴志さん、宮木さん、
貫井さん、しをんさん。やっぱり、その五作は面白かったですね。まぁ、正直中田
さんの『百瀬、こっちを向いて』は、ほとんど内容覚えてなかったもので、
主人公にも全くピンと来なかったのですけれど・・・^^;
貴志さんのやつなんて、テレビにしか登場しないキャラクターが主役ですからね^^;
それはちと反則のような。といいつつ、芹沢のキャラクターはドラマですごく
気に入っていたから、かなり楽しめたのですが(笑)。多分、貴志さんご自身も
お気に入りのキャラなんでしょうね。純子が相変わらずとぼけた推理ばかり
するのが面白かったです。あとは、やっぱりしをんさんのまほろの二人の初
探偵話は読めて良かったなー。前に本編読んだ時、今後は探偵として活動するの
かも!?と思ったりもしてたんで、やっぱりそっち方面に行くのかなーと思ったり
して。行天が相変わらずで嬉しかったな。それにしても、星の母親の呼び方に
びっくり。意外すぎる・・・。
宮木さんのは、校閲ガール』で、ヒロイン悦子とやりあった作家の本郷が主人公。
本編で奥さんが出て行った時の話。奥さんとの出会いなんかも読めてよかったです。
奥さん強いなぁ(笑)。
貫井さんのは、元ネタの印象はそんなによくないけど、探偵コンビ二人のキャラは
やっぱり素敵ですね。ラスト、スカッとしました。
他は、元ネタ読んでみたくなったのは、笹本稜平さんの『ゴロさんのテラス』
ゴロさんのキャラと、山小屋で働く二人との関係が良かったです。二人が
ゴロさんをとても大事に思っているのが伝わって来て心が温まりました。
冲方丁さんの天地明察はやっぱり面白そうですね。さすがにもう開架に
並んでいるのかなー。
この企画、まだ続いているようなので、第二弾が出るのが楽しみです。