ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有栖川有栖「鍵のかかった男」/南綾子「婚活1000本ノック」

どうもみなさま、ごきげんよう(毎度同じ出だしなんでたまには変えてみた)。
今年も残り二ヶ月になりましたねぇ。早いなー。
この時期で楽しみなのは、フィギュアスケート。今年は何といっても、浅田真央ちゃん
復活ですよねっ。ジャパンオープンから素晴らしい演技を見せてくれて、もうその日から
今シーズンが楽しみで仕方なくなりました。先日のグランプリシリーズ中国大会、
フリーはちょっと失敗が多くて残念だったけど(でも、トリプルアクセルは抜群の出来!)、
ショートはすべてのジャンプを着氷して、いい感じに仕上がっていましたねー。
今季フリーの蝶々夫人、すっごく素敵なプログラムで、うっとりしちゃいます。
次のNHK杯も楽しみだー。ああ、やっぱり真央ちゃんが好き。
あと、2位になった本郷さんの演技も良かったなー。
彼女は、本当に本番に強いというか、ミスが少ない選手ですね。安定していて、
安心してみていられる感じ。今後も期待大!
おっと、関係ない前書きが長くなってすみません。フィギュア大好きなんでついつい
熱く語っちゃう^^;

読了本は二冊です。


では感想を~。


有栖川有栖「鍵のかかった男」(幻冬舎)」

ちょっとネタバレ気味なので、未読の方はご注意下さいね。

火村シリーズ最新長編。手にとった瞬間分厚いなーと思ったんですが、それも
その筈、火村シリーズの中で最もページ数が多いのだそう(あとがき曰く)。
そういえば、火村シリーズで500ページを超えるような長編って覚えがないな。
今回は、内容もいつもとちょっと切り口が変わってます。
アリスと火村センセが挑戦するのは、ホテルの一室で縊死した男が自殺ではなく、
他殺であると証明出来るかどうかというもの。警察による現場検証では、自殺で
疑いようがなく、他殺の痕跡は何もなしとの判断。前提として自殺という結果が
あって、それを敢えてゼロから覆せるのか、というところが読みどころ。
今回注目すべきは、火村センセご多忙につき、捜査の大部分をアリスが担当している点。
まぁ、そもそも今回の依頼を受けたのもアリスの方なのだから、アリスが頑張るのは
当然といえば当然なのですが。発端は、大御所の女流作家から、大阪中野島のホテルで知人の
男性が自殺したのだが、それが本当に自殺かどうか疑わしいので調べて欲しい、とアリスが
直々に頼まれたから。男はそのホテルに5年以上も投宿していたという。女流作家は、その
ホテルを度々贔屓にしていて、男とも懇意にしていた為、突然の自殺に納得がいかないと
言うのです。時代劇の大家に頼まれたことと、事件そのものに興味を引かれた為、
アリスは火村に相談の上、依頼を受けることに。火村は大学の入学試験で身動きが取れない
為、まずはアリスが単独で調査に乗り出す、というのが大筋。

大阪に中野島というちょっとした離島(?)みたいな場所があるとは全然知らなかったです。
パリのシテ島みたいな感じなのかなーとか思いながら読んでいたのですが。なかなか
魅力的な場所っぽくて、行ってみたくなりましたねー。
舞台は、そこに建つ古めかしいプチホテル『銀星ホテル』。この銀星ホテルの雰囲気も
とっても素敵で、リピーターが多いというのも頷けるような感じがしました。アットホームな
感じも良かったですし。まぁ、ここまで客とオーナー含めた従業員が懇意になるって
あんまりないとは思いますけど。
始めは、警察で自殺と判断されたものを他殺にひっくり返すなんて難しいのではないかと
不安に思うアリスですが、調べて行くうちに、だんだんと被害者の意外な情報が明らかに
されて行き、雲行きが変わって行きます。その過程が非常に丁寧に描かれている為、
若干冗長には感じるかも。そこが読みどころといえばその通りなんですが。
アリスが頑張っている姿は微笑ましかったのだけれど、やっぱり火村センセーがなかなか
出て来ないと、ちょっと物足りない感じはしましたね。
ただ、最後に出馬してからは、さすがの洞察力で、終盤の名推理には改めて脱帽でした。
やっぱり火村センセーはかっこいいわー。小さなチョコレートのシミから、ああいう推察が
飛び出してくるとは。

しかし、被害者の梨田と、彼のかつての彼女であった夏子の過去には驚かされましたね。
というか、主に夏子の行動の方にだけど。いくら梨田が罪を犯して服役することになった
からといって、ああいう手段に出るとは。女って怖いなー。そう簡単に成功するものか!?
という疑問はありましたけどね・・・。

犯行動機は、実に今の現代社会を象徴したものだと思う。このシリーズって、アリスや火村
先生が全く年取っていないのに反して、時代だけはリアルタイムで流れているので、ちょっと
読んでて不思議な気持ちになるんですけどね(いわゆるサザエさん現象』ってやつね)。
アリスもスマホを持つようになっているしなぁ・・・。
今だったら、こういう理由で人を殺すのが当たり前の動機になり得るのではないかな。
完全に逆恨みではあるんでしょうけど・・・。

トリック等にさして目新しいものはないのですが、警察が自殺と判断した事件を他殺に
覆すことが出来るのか、そのプロセスを楽しむべき作品なのでしょうね。
准教授は相変わらず素敵だったし、終盤の小さな齟齬も見逃さない、丁寧なロジックは
流石で読み応えありました。面白かったです。


南綾子「婚活1000本ノック」(新潮社)
何の予備知識もなく、図書館の新刊情報でタイトルを見て面白そうだったので予約した本。
蔵書1冊なのに結構予約が多かったせいで、回って来るのに結構かかりましたね。
でも、読み始めたら読みやすいのと面白いのとで、あっという間に二時間くらいで
読み終えてしまった(笑)。
内容は、タイトル通り、32歳独身、フリーアルバイター兼官能小説家の著者、南綾子さんが、
結婚を目指してあれこれと婚活しては惨敗していく、というお話。
一応冒頭で、三割嘘(フィクション)で、あとはほぼ実話、みたいにおっしゃっていますが、
果たしてどこまでが本当なのやら。まぁ、婚活自体は本当なんでしょうね。
まぁ、流石に幽霊になって南さんの前に現れたクソ男・オブ・ザ・イヤーの元カレ・
山田の存在はフィクションでしょうけどね。

実は私、こういう婚活とか恋愛の痛いお話って、大好きなんですよねー(笑)。
30前後の時って、私もいろいろと焦ったりしてたし(合コンとかはそんなに行ったこと
ないけど)。身に覚えのある感情がいっぱい出て来て、共感しまくりでした。
ただ、ここまで必死になってはいなかったけど・・・途中から、ほぼ結婚とか諦めてたりも
したし。もう、一生一人でいいや、みたいな(笑)。親の方がずっと心配してましたね。
上二人は結婚しちゃって、あんた一体どうするの、みたいな思いがあったみたいで。
親はいつまでも生きてないんだから!みたいなことを何度も言われましたっけ。
奇跡的に結婚出来たから良かったですけど、あのまま一人だったらどうなっていたのでしょう・・・。
と、改めていろいろと考えちゃいました。
南さんの婚活の失敗談は、過分にして自分に原因があることが多くて、そこはちょっと
共感出来なかったんですけどね。だって、ダメ男にばっかり惹かれるんですもん。
なんでそっち行くかなぁ、と何度呆れたことか。せっかくの山田のアドバイスも無視したり
して。
一番勿体ないと思ったのは、仙台の和菓子屋さんとのお見合い話を蹴ったところ。
いい条件だったし、南さんの為に新築の家まで建ててくれる気になっていたというのに・・・。
でも、どうしても好きになれないって感情もよくわかるんですけどね。やっぱり、結婚って
一生のことだし、相手を好きになれなきゃダメですもんね。
あと、せっかく相手が自分を好きになってくれても、生理的にダメっていうのも、よくわかる。
いい人なのはわかっているけど、どうしても受け付けない、みたいな。選り好みしてる場合か!
って思うんですけどね。そこは譲れないものがあるっていうか。女性なら、誰でもそういう
気持ち、理解出来るんじゃないかな。
しかし、見合い相手とその仲間とキャンプに来ているのに、声かけられた若い男にほいほい
ついて行っちゃう神経はちょっと理解出来なかったです。婚活で出会った男をことごとく
クソ男とぶった斬る南さんですが、ご本人も相当ヤバイ性格なのは間違いない。まぁ、そこら辺は
小説用に面白おかしく書いたのかもしれませんが・・・。何度か、マジで引いたところも
ありました^^;そもそも下ネタ多いしね。まぁ、そこは別にさほど気にならないんですが。
最後、思わぬ展開になりましたが、希望の持てるラストで良かったです。
そこは、実際はどうなんですかねぇ。小池みたいな男性は実在しているのでしょうか。

そういえば、この方、『女による女のためのR-18文学賞出身の方だったのですね。
この賞から出ている作家さんは、個人的にツボにはまる方が多いんですよ(窪美澄さんや
宮木あや子さん、彩瀬まるさんなどなど)。
他の作品も読んでみようかな。ご本人は作中で度々売れない作家売れない作家おっしゃって
いるけど、錚々たるデビューを飾っている訳で。とはいえ、基本エ○小説らしいですけど・・・^^;
婚活女性の自虐ネタ満載で、非常に楽しめました。興味のある方はぜひ。