ミステリ読書録

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大倉崇裕/「ペンギンを愛した容疑者 警視庁総務部動植物管理係」/講談社刊

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大倉崇裕さんの「ペンギンを愛した容疑者 警視庁総務部動植物管理係」。

「人間の視点では、この謎は解けません」
ペンギン屋敷の溺死体! 秘められた”殺意の証拠”をアニマル推理で解き明かせ! 警視庁
いきものがかり」の名(迷)コンビが大活躍!!
強面の窓際警部補・須藤友三(すどう・ともぞう)と動物オタクの女性巡査・薄圭子
(うすき・けいこ)の名コンビが、動物にまつわるさまざまな難事件を解決する、大人気
「コミカル・アニマル・ミステリー」シリーズです。
登場する動物はペンギン、ヤギ、サル、そして最も賢い鳥と言われるヨウム(オウムでは
ないことに注目!)です。
警視庁の「いきものがかり」というべき、総務部動植物管理係のコンビの活躍を楽しめる
4つの短編を収録した傑作集です(紹介文抜粋)。


警視庁の生きものがかりシリーズ(勝手に命名w)第三弾。今回も面白かった!
前作は長編でしたが、今回は一作目同様、短(中)編集形式に戻りました。このシリーズは
やっぱり長編よりはこういう短編形式の方が合っていると思うなぁ。
ラストの一編だけは他のアンソロジーで既読でしたが、どのお話もそれぞれに楽しめ
ました。
薄ちゃんの日本語はどんどん怪しくなっていく気がするなぁ。今回も、須藤警部補との
掛け合いがとっても楽しかった。須藤さんが、薄ちゃんの扱いにだんだん慣れて来て
いるのがわかります。そして、彼女の存在が、須藤さんにとってもとても大きなものに
なって来ているということも。なんだかんだで、今回もとても微笑ましい二人なのでした。


では、軽く一作づつ感想を。

「ペンギンを愛した容疑者」
全国展開している大規模食品グループの会長藤原が、自宅内のペンギン飼育室で殺された。
被害者は生前、度々自宅でペンギンを飼育する様子を客に見せては喜んでいた。
第一の容疑者は、藤原から直々にペンギンの世話の仕方を教えられていた秘書の久慈。
しかし、調べを進めて行くと、藤原の若き妻が、顧問弁護士と不倫関係にあるらしいことが
わかって来て――。

奇しくも、この作品を読む直前に水族館でペンギンを観て来まして。読んでいて、
非常にタイムリーだなーと嬉しくなりました。生ペンギン可愛かったなぁ。いろんな
ペンギン観たのだけど、特にフェアリーペンギンがちっちゃくって可愛かった。
ちなみに、今回出て来るケープペンギンはいなかったような。
自宅でペンギンを飼うって、すごいですよね。いくらお金があるとはいえ、
維持費が半端なさそうですよねぇ。
カフスボタンの隠し場所には驚かされました。しかし、瀕死の人間がそんなこと
思いつくのかなぁ・・・とそこはちょっと首をかしげましたけどね。


「ヤギを愛した容疑者」
小学校の駐車場で、教頭が血まみれになって殺されていた。更にその近くで、頭から血を
流して意識不明の男が倒れているのが発見された。倒れていた男は、小学校でヤギの
ふれあい教室を開いていた。殺された教頭とは、生前ふれあい教室を巡って対立しており、
第一の容疑者と目された。対立のきっかけとなったのは、三ヶ月前にヤギ小屋の中で
生徒たちのテストの答案用紙がばら撒かれ、一部が紛失する事件が起きたことだった――。

答案用紙ばら撒き事件の真相はだいたい予想通りでしたが、それを起こした理由には、
想像以上の重い動機が隠されていて、暗澹たる気持ちになりました。そちらの犯人には
同情しましたが、殺人事件の犯人の方には嫌悪しか覚えませんでした。ヤギの飼い主が
せめて無事で良かった。ヤギのふれあい教室はその後どうなったのかなぁ・・・。


「サルを愛した容疑者」
リスザルを飼っている男の部屋で、女の死体が発見された。女は男の恋人だったが、
別れ話が持ち上がっているところだった。男は、友人と外出先で酒を飲み、自宅で
飲み直そうと帰宅したところ、女の死体を発見したのだというが――。

サルが好物を何かに隠す習性があるというのは知りませんでした。それにしても、
犯人の身勝手な動機にはムカッとしました。しかも、それを何の罪もない動物のせいに
しようとしていたなんて。本当に許しがたい犯罪だと思いました。
薄ちゃんの引き抜きがどうなるのかハラハラしましたが、思った通りの結末にほっ。
予想以上に各方面からアプローチがあったことに驚きました。やっぱり、その方面では
優秀な人材なんですねぇ。あれだけの知識があるんだものね。なんで警察官になったんだろ。
ともあれ、まだまだ二人のコンビは続いてくれそうで良かったです。


「最も賢い鳥」
ヨウムを飼っているフリーライターが自宅のリビングで殺された。被害者が飼っていた
ヨウムの元の飼い主が容疑者に浮上した。被害者に、ヨウムを返して欲しいと申し入れ、
断られてトラブルになっていたらしいのだが――。

これだけ既読。オウムとヨウムの区別がいまいちつかないのですが、見た目はほとんど
一緒なのかな?大きいインコだそうですが。最も賢い鳥と言われているってことは、
オウムよりもインコの方が賢いってことなんでしょうかね??
犯人はちょっと唐突だったかなぁ。でも、ラストでヨウムが本来の飼い主に発した
言葉にじーんと来ちゃいました。一度飼ったペットは、絶対にどんな理由があっても
手放しちゃダメですよね。



毎度鉄板の、薄ちゃんのコスプレネタも笑えました。
出版社HPの著者へのQ&Aを読んでいたら、続きのネタもすでにあるそうなので、また続編が
出るのを楽しみにしていたいと思います。