ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

乙一「ドラゴンファイア Arknoah2」/森晶麿「葬偽屋は弔わない 殺生歩武と5つのヴァニタス」

みなさま、新年明けましておめでとうございます。

年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。
私は、今年も毎日なんだかんだと忙しく、あっという間に過ぎて行ってしまいました。
今日が仕事始めでした。初日から忙しかった・・・(><)。

お参りは地元の神社へ。引いたおみくじは大吉!
昨日は友人と赤坂の豊川稲荷神社で毎年恒例の七福神巡りもして来まして、今年も良い年に
なるといいなぁ、と思っている次第であります。みなさまにとっても、良い年でありますように。


読了本は二冊。年末に1冊、年をまたいでもう1冊。今年も、お休み中はほとんど
本が読めませんでした^^;


では、1冊づつ感想を。


乙一「ドラゴンファイア Arknoah2」(集英社
シリーズ第二巻。毎度ながら、前作の内容をすっかり忘れておりまして。読んでいる
うちに、少しづつ思い出して来たって感じでした。
前作読んだ時もいまいちはまれなかったんですが、今回は前作よりも更に
入って行けなかった気がします。読み終わるのに、かなり時間がかかってしまいました。
宮部(みゆき)さんがいい例なんですが、大好きな作家でも、ファンタジーやSF作品になると、
どうも苦手意識が強く出てしまい、面白く読めないことが多いんですよね、私。
ファンタジーということで、乙一っぽさが薄かったせいかも。
しかも、キャラクターもいまいち好きになれない人物ばかりで。主人公のグレイの
性格もじめじめしててイラっとせられるし、ヒロインのリゼ・リプトンも、彼らの世界で
唯一無二の権力者のせいか、高圧的な態度が好きになれないし。特に、今回終盤で彼女が
選んだやり方には吐き気がしました。ファンタジーの世界にしては救いがないし、こういう
やり方を選択すること自体、彼女の冷酷さに嫌気がさしました。彼らの世界の人物に対しての
ことなら、ここまで嫌悪感を覚えることはなかったかもしれませんが・・・相手は現実世界の
人間ですし。他にやり方がなかったとしても・・・。グレイに反発心を覚えさせるには、こういう
展開にするしかなかったのかもしれませんが。ラトゥナプラとマリナの関係、結構好きだった
のにな・・・。マリナの性格もそんなに好感持てた訳じゃないけど、ラトゥナプラに対する
純粋な愛情だけは共感出来たので・・・。あの結末にはショックを受けました。

最後、グレイがああいう選択をしたので、次巻はかなり波乱の起こる展開になりそうですね。
ただ、もしかしたら続きはもう読まないかも・・・。
なんかやっぱり、ファンタジーは鬼門だなぁ。世界観に入って行けないっていうか・・・。
昔はファンタジー映画とか大好きだったんだけど。ちょっとこのアークノアの世界観は
私には合わないかな、という感じです・・・残念ながら。
新年早々、黒べるよりの記事で申し訳ない^^;
多分、好きな人はどっぷりハマる作品だと思いますね。私はやっぱり、乙一ミステリが
読みたいなぁ。


森晶麿「葬偽屋は弔わない 殺生歩武と5つのヴァニタス」(河出書房新社
昨年黒べる記事を連発した森さんの新シリーズ。それにしても、本当にこの方多作ですよねぇ。
毎月新刊が出てるんじゃないでしょうか・・・。昨年末に黒猫シリーズの新刊も出ましたしね。
黒べる連発でも、ついつい図書館の新刊情報に載ってると予約してしまうんですよねぇ。不思議(笑)。
でも、今回の作品はなかなか面白く読めました。
自殺希望の主人公セレナが、ひょんなことから偽の葬儀を行う葬儀屋ならぬ『葬偽屋』
営む仏僧・殺生歩武という男と出会い、四ヶ月間だけ仕事を手伝う羽目になる。彼女が
歩武と共に関わった5つの葬偽を追った連作集。
生前葬とは違って、自分の死後に周囲がどんな反応をするのか試す為、偽の葬儀を
執り行う葬偽屋という設定はなかなか目の付け所が面白いな、と思いました。確かに、
自分が死んだ時に周囲がどんな反応をするのかって気になりますよね。まぁ、悪趣味といえば
悪趣味極まりないとも云えるけれど。でも、その人が死んで初めて周りの本性が出る、という 
のも事実な訳で。本音と建前をはっきりわからせるには、良い方法なのかも。
スキンヘッド(僧侶なので)の美僧、歩武のキャラが良かったですね。いつも女に囲まれていて、
女たらしのだらしない奴かと思いきや、ラストでそれには理由があることがわかります。
歩武は謎の多い人物で、一作ごとに彼の過去も少しづつ明らかにされて行きます。
家族と絶縁し、元彼の死によって絶望の淵に立たされたヒロインのセレナが、葬偽屋の仕事
を手伝ううちに、次第に歩武に惹かれて行く過程は、森さんらしい王道の恋愛ストーリーとも
云えます。終盤の二人のやり取りには、ついついニヤケちゃいました(笑)。
森さんって、俺様的な主人公と、それに振り回されるヒロインっていう関係がお好き
なんでしょうね。いかにも少女漫画的な。それについついハマってしまう私も私ですが(笑)。
歩武がちょいちょい美術的な知識を披露するところも、森さんらしい要素。作中に出て来る
いくつかのヴァニタスを描いた絵、挿絵とかあったら良かったのにな~。どんな絵なのか、
実際見てみたかったです。
歩武とセレナがこれからどうなっていくのか、ちょっと気になりますね。続編はあるのかなぁ。
セレナの実家とのしがらみの部分もまだ解決していませんしね。しかし、彼女の母親は
酷いですね。大学の教育ローンはともかく、自宅の家のローンまで彼女に負わせようと
するなんて。結婚するまでは自分の家の子どもだから、などという母親の言い分には
ムカムカしました。彼女が自宅以外に居場所を見つけられて本当に良かったと思いました。

今回は黒べる記事にならなくて良かったです(笑)。まぁ、次も黒猫シリーズだから大丈夫
でしょう(笑)。