ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

山本弘「翼を持つ少女 BISビブリオバトル部」/七月隆文「ケーキ王子の名推理」

どうもこんばんは。
昨日の雪、凄かったですね。朝起きたら銀世界になっていて、目が点になりました^^;
前日から降る降るとは言われていたけれど、まさかあんなに降るとは。
たまたま相方がお休みの日だったので、職場まで車で送ってもらえてラッキーでした
(数日前の予報を見て、タイヤもスタッドレスに変えておいてくれていました)。
それにしても、電車通勤(通学)の方は大変でしたでしょうね・・・。
いつも使う京王線沿線の駅がどこもカオス状態でぞーっとしました。あの寒空の下、
何時間も電車に乗るのに待たされたなんて・・・。
毎度思いますが、東京ってほんとに雪に弱いなぁ・・・。


読了本は二冊です。


では、感想を。


山本弘「翼を持つ少女 BISビブリオバトル部」(東京創元社
何の予備知識もなかったのですが、少し前に図書館の開架でみかけて、とても
気になっていた本。予約本が落ち着いたタイミングで、ようやっと借りられました。
いや、これはもう、本当に面白かったです。高校のビブリオバトル部が舞台の青春小説。
ビブリオバトルといえば、最近あちこちのメディアで取り上げられていて、話題に
なっているので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
何人かの発表者を選び、各自自分が紹介したい本を1冊選んで、その本について紹介
し合った末、どの本が一番読みたくなったかを参加者投票で選ぶというもの。
つまり、好きな本をどれだけ熱意を持って紹介して、他人に『読みたい』気持ちにさせるか、
その度量を競い合うという訳です。
私も、新聞などで高校生たちのビブリオバトルの記事を読む度、面白そうだなぁと
思っていたのですが、このお話で、ビブリオバトルの内情がとてもよくわかりました。
本書の主人公、伏木空は、とにかくSF小説が大好きな読書少女。理由あって中高一貫
美心国際学園(BIS)に高校から編入してきます。クラスでは地味で空気のような存在の彼女が、
ひょんなことからビブリオバトル部の同級生・埋火武人と知り合い、彼の家の膨大なる
SF蔵書に触れたことがきっかけで、あれよあれよという間にビブリオバトル部に入部することに。
彼女も初心者ながら、ビブリオバトルに参加することになってゆきます。彼女のSFに関する
知識は恐ろしい程で、当然ながら彼女が選ぶ本はSFですが、果たして知識だけでバトルに
勝つことが出来るのか。
私もブログで読んだ本の紹介をしている身なので、好きな本を熱く語るビブリオバトル部の
メンバーたちの本に対する真摯な思いには非常に共感出来る部分が多かったです。
好きな本が、自分の紹介で『読んでみたい』と思ってもらえた時、どれほど嬉しいかとか。
BISのビブリオバトル部のメンバーたちの個性的なキャラも良かったですね。それぞれに
好きな本の傾向もバラバラなのですが。
空の同級生、武人はノンフィクション専門。一つ上のミーナはボーイズラブ。二つ上の
明日香は、科学系。中等部の銀は可愛らしい容姿で、へんてこな本を探して来るのが
得意だし、部長はいろんな知識をもっていて博識だけど、発表になるとなぜか関西弁に
なるという二面性を持っている。みんな個性的だけれど、それぞれに本に対する情熱は
変わらない。本好きたちが集まる場なので、自然と本に関する話題で盛り上がれる。
こういう場があるって素敵だなぁと、素直に思いました。もちろん、バトルでの熱い
戦いも楽しかった。彼らのバトルで紹介された本は、ほとんど私が普段読まないジャンルの
本ばかりだったけど、読んでみたい、と思える本がたくさんありましたから。それは、
彼らの紹介の仕方に熱がこもっていて、その本の魅力が伝わって来たからに他なりません。
ただ、非常に残念だったのは、ビブリオバトル部の中にミステリ好きがいなかったことです。
もし、空の好きなジャンルがミステリだったら、もっともっとこの本が好きになっていただろうなー
と思う。まぁ、作者の山本さんは、SFの世界で非常に有名な作家さんであり、本書を書く
きっかけになったのも、SFをもっとたくさんの人に読んでもらいたいという思いが発端に
なっているのだから仕方がないところではあるのですけれど。SFは一番か二番に苦手な
ジャンルだからなぁ・・・。正直、空が夢中になってSFの話をするシーンでは、武人
同様、若干引いてしまっていたのだけど^^;でも、好きな本を夢中になって語りたくなる
気持ちは十分理解出来るんで。空自体には好感持てたのですけどね。
しかし、BISビブリオバトル部と対戦した双子沢高校の蟹江は最低なヤツでしたね。こういう
偏見を他人に押し付けるような行為は最低です。自分が正義だと思ってやっているからこそ、
たちが悪い。バトルで彼をやり込めるところは爽快でした。でも、BB部は、彼への報復を、
ビブリオバトル内でやるべきではなかったのでしょうね。ビブリオバトルは勝ち負けではない、
というところに、はっとさせられました。ビブリオバトルは、いかなる理由があっても、
純粋に、本の書評をし合う会でなければならないのだと教えられました。

とにかく本好きにとっては、こういう題材は本当にツボにはまりますね。
私も、ビブリオバトルを生で見てみたくなりました。出てみたいとは絶対思わないけれど^^;
面白くって、夢中で読み耽ってしまいました。あとがきで続編を予定していると書かれて
いたので喜んでいたら、すでに刊行されているということがわかり、早速次も予約しちゃいました。
予約ゼロだったからすぐ回って来る筈。終盤の雰囲気から、空と武人の関係にも変化が出て来そう
な予感がするし、次巻もとっても楽しみ。



七月隆文「ケーキ王子の名推理」(新潮文庫
奇しくも、七月さんの本が続いて回って来ることになりました。前二作とは全然雰囲気が
違って、今回はケーキ大好き少女のお話。全編、甘いお菓子が登場して、スイーツ好き
にはたまらない作品でした。
文章は相変わらずラノベなみに読みやすい。2時間くらいで読み終わってしまった^^;
内容は完全に少女マンガの世界。世間には内緒でスイーツ作りに命をかける学校一の
冷徹イケメン王子と、彼の秘密を知ってしまった地味で普通の女の子の学園ドラマ。
俺様イケメン王子の颯人とスイーツ大好き少女の未羽の関係は、いかにも少女マンガの
王道的関係。ま、個人的には、こういうのがツボに来る訳なんですが(苦笑)。
先日読んだぼくは明日、昨日のきみとデートするみたいなこっちが恥ずかしくなる
ようなラブラブ描写がない分、すんなり入れましたね(笑)。
颯人は、普段は冷酷だけど、要所要所で優しいところが垣間みえたり、未羽にだけは風邪を引いて
弱い姿を見せたりするところが何とも少女漫画好きの心をくすぐるツンデレキャラでしたね(笑)。
ミステリ要素が入っているところも楽しめました。ミステリ的な驚きがそんなにある訳では
なかったけれど。『ぼく明日~』みたいなSF要素よりは、よっぽどこっちの方が好み。
一話完結形式も読みやすかったしね。それぞれにテーマに沿ったスイーツが出て来る
ところも良かったです。ティラミスにそういう意味があるとは。相方が元気ない時に
作ってあげようかな(笑)。
颯人の師匠・青山さんの作るケーキが美味しそうだったなぁ。食べてみたい・・・。
颯人と未羽の関係が良かったです。未羽の家族もいい味出してたし。
颯人の家庭の事情もまだわからない部分が多いし、続編読みたいな。
手軽に読めるんで、重い作品の後とかのお口直しに良いかも。
あまーいスイーツを食べながら読みたい作品でした。