ミステリ読書録

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森晶麿/「ピロウボーイとうずくまる女のいる風景」/講談社刊

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森晶麿さんの「ピロウボーイとうずくまる女のいる風景」。

貧困のどん底から、顔に深い傷跡を持つ男キムラに救われた絢野クチルは、政治家を目指して大学に通い、
夜は「ピロウボーイ」として女たちと関係を持つ。「シェイクスピアを読む女」「バッハしか愛せない女」
「ドヌーヴに似た女」「リキテンスタインを待つ女」女たちはみな問題を抱えているが、クチルとの
関わりのなかで立ち直っていく。一方、クチルの部屋には、謎の同級生知紅が押しかけて居候となり、
クチルの帰りを待っている(紹介文抜粋)。


またも森さん。この人の執筆ペースは一体どうなっているのでしょう。次から次へとアイデア
湧いて来るのかなぁ。
何度も黒べる記事を書いているのに、時々黒猫シリーズのような嬉しさも得られる作家な為、
ついつい新刊が出る度に予約してしまう^^;
が、しかーし。今回はまたも、黒べるよりの作品でありました・・・。なんか、タイトルからし
嫌な予感はしていたのだけれど。ピロウボーイにうずくまる女・・・このタイトルセンスはどうにか
ならんのだろうか。うずくまる女が誰を指すのかもいまいちわからなかったし(クチルと寝る女
全部を指すのだろうか)。
主人公のクチルは、17歳の時、父親が会社の倒産を苦に自殺した後、母と共に夜逃げ同然で東京に出て
来た。しばらくは母親と二人でその日暮らしを続けていたが、ある日酔っ払った母親がクチルの
身体に絡みついて来たことを機に、母から離れる決意をし、渋谷で途方にくれていたところを、キムラという
男に拾われる。キムラは、クチルの学費を工面し生活の面倒を見る代わりに、彼にピロウボーイの
仕事をしろと持ちかける。将来政治家になりたいという夢を持つクチルは、条件を飲み、大学に通う
傍ら、ピロウボーイとして様々な女を相手にするように――。
18歳にして、あらゆる年齢の女を落として行くクチルのプレイボーイっぷりは、読む人によっては
いっそ清々しく感じるのかもしれませんが、私には気持ち悪いとしか思えませんでした。
こういう仕事を生業にする人がいることは理解出来るものの、個人的な倫理観の問題かと。クチルには
野心があって、目的の為に頑張っているのもわかるのだけど、こういうやり方でののし上がり方
といのは、私は生理的に受けつけないもので・・・。
何かいろいろ、つっこみ所満載すぎて、なんともかんとも。エロスと政治的考察の乖離が激しすぎて、
入っていけないというか。あと、クチルの恋愛観もよくわからなかったし。冴子が好きだといいつつ、
押しかけ居候の知紅にも愛情を持ったり。どっちやねん!はっきりしろ!とツッコミたくなりました
(なぜか関西弁)。知紅の謎めいたキャラの謎は、最後にすっきりするので、そこは良かったと
思いましたが。しかし、結局知紅って男なの?女なの?なんか、よくわかんなかったなぁ。最後の
書き方だと、あっちなのかな?と思えるところはあったけど(明記はされていない)。

あと、一番気になったのは、たった4日で全くの素人が、ピアノのそこそこ難曲を、他人から
拍手をもらえる位弾きこなせるようになったって所。絶対無理でしょ!あり得ない!って
思いました。数ヶ月とかっていうならまだしも(それでも無理がある気がするけど)。まぁ、
他にも設定に無理があるって部分はいくつもあったのだけどね。フィクションだからって、
もうちょっと説得力のある設定考えようよ・・・って思ってしまいました。

うーん、一番の敗因は、主人公のクチルにどうしても好感が持てなかった所かもしれないなぁ。
18歳って設定の割に達観し過ぎてる所も違和感あったし。

どうも、森さんの作品は合う合わないの差が激しいなぁ。
ネットみると、絶賛しているレビューも結構見かけたので、これは単純に相性の問題なのかも
しれないです。多分、私は、森作品では、エロスが絡むヤツは鬼門なんだと思うな。何か、エロスが
蛇足に思えて仕方ないのですよ。描写が浅いというかね。エロス自体が嫌な訳ではなく、文章(書き方)
の問題なのかと。
またも、黒べるレビューで申し訳ないです・・・。
でも、それでもまた新刊が出たら読んでしまうんだろうなぁ。黒猫シリーズだけにしておいた方が
良いのだろうか・・・むー。