ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「みんなの怪盗ルパン」/「みんなの少年探偵団2」

どうもこんばんは。桜が開花し始めましたね~。
うちの方はまだまだ一部咲き程度の木ばかりですが、来週は一気に満開になりそうですね。
今年はどこにお花見に行こうかなぁと考え中。去年は文京区にある六義園の枝垂れ桜を
夜のライトアップ時間に観に行ったんですよね。見事な大木で素晴らしかったですが、
いかんせん行った時期が終わりの頃で、ほとんど散ってしまっていたのですよね^^;
今年は満開を狙ってリベンジするのもいいかなぁ、とも考えていたり。
まぁ、街中でも桜スポットはたくさんあるのですけれどね。


読了本は二冊です。
どちらも、ポプラ社の企画もの。怪盗ルパンと乱歩の少年探偵団へのオマージュ作品ばかりを
それぞれに集めたアンソロジーです。少年探偵団の方は、シリーズ第五弾になりますね(前四作は
すべて既読)。
どちらも、原典への尊敬と愛情を十二分に感じられる作品ばかりでした。ミステリ作家の多くが、
乱歩の少年探偵団やルブランのルパンシリーズは、過去にお世話になったことがあるでしょうからね。
といいつつ、私自身はほとんど原典を読んだことがないのですが・・・(テレビドラマなんかでは
子供の頃に観た覚えがありますが)。ミステリ好きとしてはちと恥ずかしいですが(すみません・・・)。
寄稿作家も錚々たるメンバーばかりで、どの作品も児童向けに書かれているとはいえ、大人も
楽しめる作品ばかりでした。

ではでは、一作づつ感想を。


「みんなの怪盗ルパン」(ポプラ社
今回、初めて怪盗ルパンが題材に選ばれました。ルパンというと、私はルパン三世の方しか
馴染みがないんですが^^;でも、題材としては、お金持ちをターゲットにし、他人を傷つけたり
せずに紳士的に盗みを働く義賊としてのルパンの人物像はやっぱり魅力的ですね。

小林泰三『最初の角逐』
語り手と老人の騙し、騙されあいの応酬に、誰が誰なのか途中わからなくなりました^^;
最後に出て来た『彼女』って誰のことなんでしょうか?原典を読んでいる人には周知の事実って
やつなのかなぁ。ちと、置いてきぼりを食らった感じがしました^^;

近藤史恵『青い猫目石
これは近藤さんらしい作品で好き。初恋の人との身分差を気にして告白出来ない主人公の恋心が
切ない。ルパンの鮮やかな盗みの手口にも感心したけど、一番驚いたのは、ルパンの協力者の存在。
こういうやり方で、好きな人に告白させるとは・・・一番強かなのは、彼女だったということですね。
まぁ、ラストに意味深な文章は出てきますが、とりあえずはハッピーエンドで良かったです。

藤野恵実『ありし日の少年ルパン』
母の為に必死で盗みを働くラウール少年が健気。親方に酷い仕打ちを受けていたスリの少女を助けて、
奇術師の弟子になるよう働きかける優しさに好感が持てました。スリの少女と奇術師がこの後どうなって
いくのか、も気になるところ。少年ルパンのルーツに心打たれました。

真山仁『ルパンの正義』
こちらは、二十歳の頃の青年期のルパンが主人公。ドレフュス事件に繋がる出来事を描いています。
冤罪の罪を着せられギアナの灼熱の島に流されたドレフュス大尉の無罪を証明しようとルパンが
暗躍するお話。
筆跡鑑定によって無罪を証明する為、何十人分の陸軍省の軍人の文書を手に入れるようとするくだりは、
随分地道な手法を取るなぁと驚きました。こんな回りくどいことをルパンがするのかな?と思わなくも
なかったですが^^;
そこまで頑張ったのに、当の本人からのあの仕打ち。ちょっとルパンが気の毒になりました・・・。

湊かなえ仏蘭西紳士』
望まない結婚に塞ぎこむ姉の姿に心を痛める妹美千代は、港でフランスからやってきた紳士と出会う。
美千代のことが気がかりになったその紳士は、後日美千代の家に行き、美千代が塞ぎこむ理由を聞く。
美千代は、父親が殺された事件に頭を悩ませていたのだった。
結局、このフランス紳士は何者だったんでしょうかね。本物のルパンではないでしょうが。
ラストの、紳士と美千代の仄かな恋模様が爽やかでした。



「みんなの少年探偵団2」(ポプラ社
寄稿者すべてが好きな作家という、豪華ラインナップにテンション上がりました(笑)。
各々の小林少年像があって、なかなか興味深かったですね。一番自分色が出ていたのは
やっぱり平山さんだったなぁ・・・(苦笑)。私は面白く読んだけど、エグ過ぎて引いちゃう
読者も多そうです^^;;


有栖川有栖『未来人F』
二十三世紀から来たという謎の未来人Fと小林少年たちが対決するお話。ラストのオチ、こう
くるか!って思いました。長く語り継がれる小説の理由がわかった気がします。登場人物たちが
それに気づくというのがなかなか新しい切り口だなぁと思いました。人によっては蛇足に感じる
かもしれないですが^^;

歌野晶午『五十年後の物語』
小中学校の同級生岡田の告別式に出席した同級生たち。小学5年の頃、集まった同級生たちは始め、
岡田のことを快く思っていなかった。しかし、気がつくと仲良くなっていた。不思議に思うメンバー
たちに促される形で、藤谷は岡田との約束にまつわる思い出話を語り始めた。
50年前の話にしては、出て来る小道具が今風だなぁと思ったんですが・・・なかなかにすごい
小学生ですねぇ・・・^^;このアンソロジーが乱歩没後50年を記念して企画されたことを知って
いれば、なるほど、と思えますね。さすが歌野さんだなぁと思いました。ラストでしんみり。

大崎梢『闇からの予告状』
小雪の家に、怪人二十面相から、亡くなった祖父が譲り受けた、ロマノフ王家の6つの宝玉を狙う旨の
予告状が届いた。金庫に保管してある宝玉は偽物で、本物は祖父が家のどこかに隠したらしい。
二十面相がやってくるまでに、小雪は何としてでも本物を捜し出さなければいけないと奮起するが。
リエさんはいかにも怪しかったので、何かあるな、とは思いました。小雪の祖父の正体に驚かされました。
そして、嬉しい大崎キャラのサプライズ出演が。あの子って、そういう設定だったんだっけ。
すっかり忘れてた^^;小雪とこれからも仲良くして欲しいな。

坂木司『うつろう宝石』
少し大人になった小林少年(青年?w)のお話。チンピラ別働隊の松ちゃんとの関係がいいですね。
二十面相や明智先生が、年をとって耄碌してくる、というのはちょっと違和感あるし、嫌だなぁと
思いました。この時の明智先生は、そこまでの年齢でもないでしょうし、老年期でもしゃきっと
してそうな感じがするので。でも、ラストを読む限り、やっぱり小林少年の心配は杞憂に終わりそう
ですよね。

平山夢明溶解人間
先述したように、一番の問題作^^;妖怪人間ならぬ、溶解人間 VS 小林少年。のっけから、
エグい描写が出て来て、面食らわされました(苦笑)。うへぇ・・・。
なんとも、平山さんらしいトンデモ設定というか。映像化は絶対してほしくないなぁ・・・。
多分、映像化したら完全にB級(あるいはC級)映画とこき下ろされるだろうと思うし^^;
潔癖症の木下博士が、虫眼鏡のレンズを咥えて太陽光で喉を焼いた理由に唖然・・・。その光景を
頭に思い浮かべると、狂気の沙汰としか思えませんでした^^;こういう企画でも、あくまでも
自分のカラーを捨てない平山さんはすごいな、とある意味感心しました(笑)。