ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもこんばんはー。
前回の記事から続く予約本ラッシュ、相変わらず続いております。
もう、どうしていいのかわかりません^^;
プライベートでちょっと今いろいろありまして、なかなか読む時間が
取れないんですよねぇ・・・。頑張ってはいるのですけどもね。
年の瀬というのは、なぜこうも慌ただしいのでしょうか・・・。


というわけで、必死に読んで今回も読了本は三冊。
さくっと行きますよー。


三津田信三「黒面の狐」(文藝春秋
前回記事でちらっと触れた、がっつり長編とはこれのことでした。
戦後まもない炭鉱の町で起きる連続殺人事件を描いたミステリー長編。三津田さん
らしいホラー要素はちょっと控えめ。
いやー、正直、前半の情景・状況説明のくどさに危うく挫折しかけました。
なかなか事件が起きないんだもの。予約本は詰まっているし、どうしたもんか・・・
と思ったのですが、なんとかそこを過ぎて殺人事件が起きた辺りからは俄然
面白くなり、すいすい進みました。最終的には、読み切って良かったです。
炭鉱内で起きる連続殺人事件という、ミステリ好きにとってはなかなかに魅力的な
設定でしたしね。戦後間もなくという時代設定も正史の世界みたいで好みでした。
炭鉱町で働く人々の人間模様の部分も面白かったです。テンプレートのように
嫌味で下衆な人間がいたりね。でも、反面、主人公に好意的で親切にしてくれる
人々もいて。主人公波矢多と合里氏の関係にぐっと来ました。合里氏の奇禍には、
それだけにショックもありましたが。
同僚の南月さんや大取屋さんのキャラも良かったですね。
南月の妹と食堂の葉津子の波矢多を巡る女の戦いなんかも面白かったです。
当の波矢多のニブさには呆れましたけどね^^;
肝心のミステリー部分は、良く出来ているとは思うものの、やっぱりこういう
展開だったかー、という予想通りな部分もありました。そういう意味で、もう一捻り
欲しかった気もしますね。合里氏と鄭南善の関係までは予想出来なかったけど^^;
あの時代にも、そういう人たちって結構いたんですかねぇ。
波矢多の回りくどい推理展開が、(刀城)言耶とそっくりだったのでちょっと
苦笑い。どんでん返しに次ぐどんでん返しというか、翻弄されまくりました。
ただ、そういう回りくどいどんでん返しを繰り返した割に、真相はオーソドックス
だったかな、という感じだったんですよね。でも、アノ人がアノ人だった、という所には
驚かされました。そこまでは予想出来なかったなぁ。
密室のトリックはちょっと肩透かしだったかな。推理出来た訳じゃないですけどね・・・(おい)。
前半部分の冗長さがもう少しすっきりしていたら、もうちょっと高評価だったかも。
でも、ミステリとしてはまずまず楽しめました。
ちなみに、主人公の名字、物理(もとろい)は、ご親切に章ごとにルビが振って
あるにも関わらず、最後まで覚えられませんでした・・・。
波矢多のキャラはなかなか良かったので、今後シリーズ化されたら嬉しいかも。
波矢多とあの人はその後再会出来たのでしょうかね。多分出来てない気はするけれどね。


津原泰水エスカルゴ兄弟」(角川書店
久々の津原さん。なんか、タイトルとちらっと読んだあらすじが面白そうだったので、
なんとなく予約。しつこいようですが、予約本がすごいことになっているので、
これもスルーしようかすごく迷ったんですけど、この本こそ、読まずに返していたら
後悔していたところでした。めちゃくちゃ好きです、この本。もう、この世界観、大好き。
出版社をクビになり、なぜか吉祥寺の食堂の料理人になることになってしまった主人公の
柳楽尚登。しかも、その食堂がなぜかリニューアルしてエスカルゴ料理専門店になるという。
店の長男でぐるぐる渦巻きフェチの秋彦と共に伊勢のエスカルゴ養殖場に修行に行くことに
なった尚登は、そこで本物のエスカルゴの美味しさに衝撃を受ける。更に、研修中に訪れた
伊勢うどん屋で、理想の女性・桜と出会う。しかし、何を隠そう、尚登の実家は讃岐うどん
を営んでおり、伊勢うどんは宿敵なのであった――。
出て来る登場人物がみんな魅力的で、悪い人が出て来ないのがいい。特に、ぐるぐる渦巻きに
拘る秋彦と、ガールズバーで働く秋彦の妹・梓の兄妹と、主人公尚登との関係がとてもいい。
とぼけた彼らの会話がとにかく面白くて、何度も吹き出してしまった。出て来るお料理描写も
とっても美味しそう。エスカルゴは昔フランスで食べたことはありますけど、味付けはともかく、
エスカルゴ自体の味がそれほど美味しかった記憶はないんですよね。学生だったから、まだ
よくわからなかったのもあるかもしれないけど。カタツムリっていう先入観もあったし。
でも、ブルギニョンソースがとても美味だったのはよく覚えてます。尚登の作るお料理は、
本格的なフレンチとは違って、庶民的なものも多いので、堅苦しくなくていいな、と
思いました。伊勢うどんエスカルゴのコラボ料理、ウドネスカルゴの味の想像は全く
つかなかったけれど^^;;編集者から料理人になって、こんなに美味しい料理がすぐに
作れるものなのか、という疑問を覚えなかったかといえば嘘になるけれど、この世界観なら
まぁいいや、と思える妙な説得力がありました。尚登の生真面目で探究心旺盛な性格も
それに一役買っていましたしね。
尚登と桜のラストはちょっと残念ではありましたけど、個人的には梓のキャラの方が好きなので、
今後は梓といい雰囲気になればいいのにな~とは思う。でも、桜とも完全に終わった訳では
ないものねぇ。まだどうなるかわかんないか。
スパイラルのお料理はどれもほんとに美味しそうでした。軌道に乗ったお店がこれから
どうなるのか、もっともっと読みたいなぁ。彼らにまた会いたいです。
ちなみに、作中に出て来た、油揚げにチーズを入れて焼いたチーズキツネ、あんまり美味しそう
なので、早速家で実践してみました(笑)。ちょっと焼きが足りなかったように思うけど、
美味しかったです。お酒のおつまみにピッタリ。ぜひお試しあれ。
とっても面白かった。個人的には、今年度のベストに入る。是非、本屋大賞候補に
挙げて欲しい。ならないと思うけど(笑)。HPだと、イラストを松苗あけみ氏が
描いていて、世界観ドンピシャ。漫画化切望。ドラマ化されても面白そうだ。


東川篤哉「かがやき荘アラサー探偵局★」(新潮社)
東川さん新刊。相変わらずのユーモアミステリ。貧乏で恋人もいないアラサー三人組が
メインキャラ。ゆるいけれど、ミステリとしては面白く読めるところもいつも通り。
ただ、前半二つは良かったけど、後半の二つはいまいちだったかな。
特に、二つ目の洗濯機を捨てた理由と、夜中に回っていた理由にはなるほど~と
思わされました。ツッコミたくなるところも多々あるんだけど、なぜか妙に納得させられて
しまうところが東川マジック。
後半二つはいまいちと述べたけど、三話目の、浮気疑惑をかけられた男が、週末ごとに
車で出かける理由は予想外だった。殺人は起こらないけど、意外性のある真相と言われれば、
そう言えなくもないかも。まぁ、話としては地味だったけど。
ただ、最終話の、葵が中年男にされそうになったことに関しては、だいたい想像通り
でしたね。どう考えても、何か企んでいるとしか思えなかったもの。
今流行りのシェアハウスに住む三人の女が主人公ではあるけれど、三人のキャラ自体は
あんまり好感持てなかったなぁ。そもそも、ろくに働いてもいないのに趣味のフィギュアに
お金つぎ込んだりするところがどうにも痛い。アラサーにもなって三人ともバイト生活とか^^;
もうちょっと、向上心とかないのかなぁと思ってしまった。探偵役といっても、メインで
推理するのは葵だけで、他二人はつけたしみたいな役割だしねぇ。ラスト一編では、葵
自身が被害に遭う側で、推理すらしてなかったし。ちょっと、新シリーズにするには
キャラ造形が弱いかなぁ、と。
もう、新しいシリーズ立ち上げなくていいから、烏賊川市シリーズの方を書いて欲しいよ^^;
謎ディの方はもう新しいの出ないだろうし・・・。
それとも、シリーズ化するつもりはないのかしらん。