ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

土橋章宏「スマイリング! 岩熊自転車 関口俊太」/又吉直樹「夜を乗り越える」

こんばんは。なんだか急に夏っぽい天気になりましたねぇ。
ついこの間まで寒い寒い言ってたのに^^;シャツ一枚で出かけられるこの季節が
一番過ごしやすくていいですね。エアコン使わなくて済むから、電気代も安くなるし(笑)。
お庭の植物たちも新芽があちこち出て来て元気になってきました。
薔薇さんたちにもいっぱい蕾が。油断していたら、バラゾウムシに次々と
やられちゃったりもしてますけど(薬撒いて退散して頂きました・・・)。
そういえば、今年また二つ苗を買い足しました。挿し木苗なんで、ちっちゃくて
まだまだひ弱なので、花を咲かせられるのは来年か、再来年までかかりそうですが^^;
まだいくつか欲しい苗があるんですよね~。我が家のお庭がバラだらけになりそうだ^^;
ちなみに、今年買い足した果物苗があと二つ。一つは、甘くてグレープフルーツのような味が
するというレモン。レモンは、違う苗を二つ植えると実付きがよくなるという情報を得て、
買い足した次第。もう一つは、デコポン苗の不知火。デコポン好きなので、つい
お安かったんで買ってしまいました。実が生るまで育つといいけどなぁ・・・(半信半疑)。


おっと前置きが長くなっちゃった。読了本は二冊です~。



土橋章宏「スマイリング!岩熊自転車 関口俊太」(中央公論新社
個人的に自転車にはまっている相方から「これ読んでみて」とお願いされて
借りた1冊。何の予備知識もなかったのですけどね。
最近うちの相方、そこそこいい自転車をヤフ○クでお安く購入しまして。
それ以来、一時期やたらに自転車にはまってまして。その時期に、新聞広告に載っていて、
面白そうだと。だったら自分で読めよって話しなんですが、読むのがとにかく遅いんで、
まずは私が読んで面白いか試してみて欲しかったみたいで。何じゃそりゃ、って感じ
ですよね^^;
しかし、これが思わぬ拾い物でして。読み始めたら、読みやすいのと内容にぐいぐい
惹きつけられてほぼ一気読み。数時間であっという間に読み終わってしまいました。
主人公は、キャバ嬢のシングルマザーに育てられる理由あり中学生、関口俊太君。
友人たちと自転車で出かけるのが最近の楽しみだが、友人たちの自転車はみんな
親に買ってもらった高級なロードバイクなのに対して、貧乏な俊太の自転車はオンボロの
ママチャリ。当然、友人たちのスピードにはついて行けず、一人置き去りにされることも
しばしば。友人たちとの境遇の違いに疎外感を覚え、ひとり孤独に感じていた。
そんな俊太の唯一の楽しみは、商店街の一角にある小さな自転車屋に立ち寄ること。
岩熊自転車の店主、岩熊は、最初こそお金のない冷やかし客だと俊太を煙たがっていたが、
彼が本当に自転車が好きだとわかってからは、彼にとって唯一の味方になってくれる
存在になった。そんな俊太が、岩熊と共に地元函館で開催される自転車レースに
挑戦することに。岩熊は、俊太のママチャリを競技用の自転車に改造する
ことを思いつく。岩熊は、元ツール・ド・フランスでメカニックを担当していた程の、すごい
技術者だったのだ。二人の夢を乗せて、俊太の自転車が疾走する――。

 

正直、ご都合主義的な物語展開なのは否めません。本当に王道の青春小説という感じ。
それでも、俊太と岩熊の自転車への情熱はすごく胸を打ったし、読んでいて気持ち
良かったです。
岩熊のキャラは、登場し始めの頃は、売り上げ主義の嫌な奴かと思いましたが、
俊太と心を通わせるようになってからは、ぐいぐい好感度が上がって行きました。
特に、自転車置き場で俊太が警察からパンク犯の罪を着せられそうになった時に
取った態度には、胸が熱くなりましたね~。俊太を信じてくれてありがとう!と
言いたくなりました。
また、俊太自身が本当に良い子で。失踪した父親からも一緒に住む母親からも冷たく
あしらわれて、普通だったらグレそうなところ、よくもまぁ、こんなに真っ直ぐな
良い子に育ったものです。健気な俊太を、ついつい応援してあげたくなりましたね。
終盤のツール・ド・函館のシーンは、さすがに上手く行き過ぎだろう、とツッコミ
たくもなりましたけど、YA向けの青春小説なら、これくらいベタでもいいのかな、と。

 

あと、俊太の友達、蓮は、なぜ俊太のパンクの件を知っていたのでしょうかね。
どうやってその経緯を知ったのかの描写が端折られていたのが気になりました。

 

最後、岩熊を追いかける俊太の気持ちが切なかったです。いつかまたどこかで
彼らが再会出来るといいな、と思います。

 

純粋な自転車小説としてはいろいろな瑕疵があるとは思いますが、自転車を愛する
少年が無謀なレースに挑戦することで成長していく青春小説としては、十分
爽やかで楽しめる一作でした。面白かったです。


又吉直樹「夜を乗り越える」(小学館よしもと新書)
又吉さんの、読書にまつわるエッセイ集。文学との出会いや、創作についてや、なぜ
本を読むのか、など、本についていろいろな角度から述べられた割合真面目なエッセイ。
又吉さんって、ほんとに本が好きなんだなーっていうのがよくわかります。
あと、やっぱり又吉さんの根底にあるのは、太宰なんだなぁということも。太宰に対する
並々ならぬ思い入れが行間から溢れ出しているというか。太宰も、暗い話ばかりではなくて、
ちょっと変わった面白い話もたくさん残しているのですよね。一般的なイメージは、根暗で
救いがない、みたいな感じですけど(私もモリミー編集の太宰の短編集や、ビブリア古書堂
シリーズや文学少女シリーズを読むまでそのイメージでした)。又吉さんの、太宰に対して
熱く傾倒する文章を読んでいると、もっといろんな太宰の作品を読んでみたくなりますね。
なぜ本を読むのか、という漠然とした問いに対して、自分なりの言葉で、とても真摯に
語っている姿勢には好感が持てました。又吉さんがどれだけ本にいろんなことを教わって
来たのかが、よくわかります。
ただまぁ、又吉さんの読書の根本は純文学なので、そこが私とは大きく違っているの
ですけどね。私は、国語の教科書に載っている小説を面白いと思って読んだことが
ほとんどないんですよね。夏の読書感想の為に読んだ純文学はたくさんあるけど、それも
嫌々読んでいたし。大抵、救いのないお話が多いし。課題図書で面白かったと思えたのって、
松本清張『点と線』くらいだったような。あ、野上弥生子さんの『秀吉と利休』
面白かった記憶があるけど(内容は全く覚えてませんが)。って、どっちも純文学じゃ
ないじゃんか^^;
多分、面白い純文学もたくさん存在するとは思うのですけどね。何か、もう、イメージで
拒否反応がありますね・・・。
だから、又吉さんが好きな現代文学も、いまいち私の好みから外れてたりするんですよねぇ。
西加奈子とか町田康とか中村文則とか。ま、西さん以外は読まず嫌いなだけなんですけどね
(西さんは、1、2冊読んでいまいちハマらず、その後は読まず嫌いに)。
もっといろんなジャンルに目を向けるべきなんだろうなーとしみじみ思わされました。
純文学ってだけで苦手意識が出てしまって手に取らずにいたけど、もっと一文一文に
注目して読んでみたら、もっと得るものがあるのかもしれないと思えました。昔の作家の文章は、
やっぱり端正で美しいでしょうからね。
お笑いも文学も真剣に真摯に取り組んで、真剣に愛しているのがよくわかるエッセイでした。
小説を愛する又吉さんがやっぱり好きだなーと思いました。