ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

又吉直樹・武田砂鉄「無目的な思索の応答」/高田崇史「試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集」

こんばんは。前回お知らせした小さい水槽のメダカたち、一匹を覗いてほぼ全員が
体調不良になってしまいました(涙)。唯一、後から入れた紅帝めだかのオス
だけがなんとか大丈夫そうな感じではありますが。それでも、大きい水槽の紅帝たち
に比べるとやっぱり元気なさそう。どうやら、水槽の水自体が汚染されてしまって
いるようで。結局水槽リセットしかなく・・・今はめだかだけ別の容器に隔離して、
水槽リセット中(全とっかえした後は、数日は水質安定するまでメダカを入れては
いけないのだそう)。生き物飼育はやっぱり大変だなぁ・・・はぁ。


今回も二冊です(実は読み終えた本はあと3冊ある・・・最近追いつかない^^;)。


又吉直樹・武田砂鉄「無目的な思索の応答」(朝日新聞出版)
失礼ながら武田砂鉄さんを存じ上げなかったのですが、個人のライターの方
らしいです。著作もいくつか出してらっしゃるそうで。その武田さんと、
又吉さんのメールのやり取りを書籍化したもの。そのきっかけは、武田さんが
文芸誌に書いた又吉さんの『火花』の書評を又吉さんが読んで、武田さんにお礼の
メールを送ったことらしいです。本を書く側とそれを読んで記事にする側の
文章のやり取りは、微妙に噛み合ってない感じもあって、不思議な感覚でした。
まさに、無目的な思索の応答って感じのやり取り。一年半程やり取りを
続けていたにもかかわらず、それほど親しくもなっていないというのも
不思議。その近づきすぎない、ちょっと距離を置いた関係が良かったの
かもしれないですけどね。
その距離感は内容にも現れていて、お互いに淡々と自分の意見や過去の
体験等を述べて行くことがほとんどで、それを受けて相手が何か意見を
述べたりすることもない。その相手の言葉がきっかけで、他の話に展開
したりはしますけど。なんか、お二人の人柄がなんとなくわかって、
興味深かったです。武田さんも、又吉さんも、話を無理に相手に合わせる
とか寄せるってことをあまりしていないところがいいな、と思いました。
この一年半の言葉のやり取りを経ても、特に二人の距離も縮まってなさそう
なのが不思議だと先程述べたけれど、この二人のやり取りを読むとそんなに
不思議でもないかも。プライベートに踏み込んだりしない、ベタベタしない
距離感で、述べたいことを述べ合う。なんだかいい関係だな、と思いました。
又吉さんって、やっぱり基本的にすごく真面目で、いろんなことを考えてる
方なんだなっていうのがわかりました。やっぱり、又吉さんの文章が好き
だなって思いました。『火花』に関して、読んでもいないのに批判する人
がいたりするって淡々と述べていたのが印象的でした。あれだけ売れて
しまうと、やっぱりいろんな意見が又吉さんを苦しめたんでしょうね・・・。
内容を読んでの批判ならまだわかるけど、読んでもないのに批判する人
って一体なんなんでしょうね。そういうのが多いから、読んだ上での
内容に触れる意見は貴重だと謙虚におっしゃっていたのが印象的でした。


高田崇史「試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集」(講談社ノベルス
デビュー二十周年記念企画の一環で出た短編集だそうです。デビュー当時からほぼ
リアルタイムで読んでいる作家さんなので(最近のシリーズは全然読んでないけど)、
もうデビューから20年も経っているんだなーと感慨深いものが。本書には、
氏のこれまで出して来たいろんなシリーズの短編(スピンオフ的な作品も含めて)や
ノンシリーズの短編二編が収録されています。随分昔に書かれたものもあるし、
再録されたものもあります。
私は二作くらい再読のものがあったのかな?(内容全然覚えてなかったから別に
いいんだけどw)
久しぶりに千波君シリーズが読めたのが嬉しかったかな。もちろん、QEDシリーズも
楽しめましたけれど。珍しく、巻末に著者の高田さん自らによる自作解説がついて
いるのもファンとしては嬉しいところ。高田さんってあまりあとがきを書かれない
イメージがあるので。しかも、このあとがき、どうやら袋とじになっていたもよう。
図書館本なので当然全部破いてありましたけれど。ネタバレ防止策なんでしょうね。
でも、そこまでネタバレっぽいこと書いてなかったような気もしますが。先入観なしに
読んで欲しいってことなのかな。

 

では、各作品の感想を軽めに。
QED~ortus~―鬼神の社―』
奈々ちゃんが大学一年の時のお話。節分の日に、友人に誘われて藤沢鬼王神社に
行く話。そこでなぜかオカルト研究会の一つ上の先輩、タタルさんに偶然会うという。
この時はまだ全然親しい仲ではなく、奈々ちゃんのタタルさんの印象はほぼ最悪に
近い。でも、タタルさんの方は同じ部の新一年生にちょっぴり興味がある感じ。
その理由は多分、奈々ちゃんがある人物に雰囲気が似ていたからなんじゃないかなーと
推測。タタルさんの好みってわかりやすい(笑)。多分これは再読なんだけど、
全然内容覚えてなかったなぁ^^;
『九段坂の春』
これも再読。タタルさんが中学の時のほろ苦い初恋の話。あのタタルさんの中学時代!
クールなところは相変わらず。現在のタタルさんが出来上がるきっかけになった話
とも云えるかも。タタルさんの初恋相手は、理科の五十嵐先生。専門は理科なのに、
なぜか文学の知識も豊富で、和歌のことなんかにもやたらに詳しい。タタルさんの
古典・歴史好きは、この五十嵐先生の影響が大きかったようです。でも、なかなかに
一筋縄ではいかない魔性の女って感じ。意外と趣味悪いよね。最後もちょっと衝撃的。
現在彼女はどうしてるんでしょうかねぇ・・・。
『<八月>夏休み、または避暑地の怪』
千波君シリーズ。千波君やぴい君や慎之介が、千波君の叔父が経営する旅館に
泊まりに行くお話。
彼らが林を歩いていると、スイカ泥棒の少年が通り過ぎた。千波君たちは少年を追って
お寺に辿り着き、そこで働いている小坊主にスイカ泥棒の少年のことを尋ねる。実は小坊主
は三つ子で、それぞれに嘘つき者、正直者、嘘と正直を交互に話す者がいる。千波君
たちは彼らからスイカ泥棒のことを聞き出せるのか。
こんな面倒な三つ子がいたら、毎日頭がこんがらがって大変です^^;そこできちんと
正解の質問を見つけだせる千波君はやっぱりすごいな、と思いました。
『<九月>山羊・海苔・私』
こちらも、千波君一行が、ひったくり犯を捕まえる為、川の対岸に舟で向かう話。
誰と誰を乗せると最低限の回数で対岸へ渡れるのか、という問題。いちいち舟で渡るより、
ちょっと遠回りでも歩いて橋を渡った方がよっぽど早かったのでは・・・と根本的な
問題にケチをつけたくなってしまったのだけど(苦笑)。このシリーズでそれを
言っちゃうとおしまいなんで(笑)。慎之介と千波君に恋をする桜庭姉妹のキャラが
どっちも自分勝手なことばかり言うのでイラっとしました。振り回されるぴい君が
気の毒になりました。まぁ、このシリーズは、いつも無邪気にわがまま三昧する
ぴい君の妹にもイラっとさせられるんですけどね(苦笑)。タイトルは、矢切の渡し
のもじりですね(笑)。
『黄色の風が吹く街で』
これはノンシリーズの短編。全共闘時代の青春物語。中学二年の中田のクラスで
試験用紙盗難事件が起きる。事件が起きた夜、クラスの問題児、山崎の姿が目撃
されていた。犯人は彼なのか――。
中田と山崎の友情がいいですね。盗難事件の犯人はすっかり騙されてました。
オーソドックスな騙しの手法なんですけどね。作者隠して読んだら、高田さんとは
絶対わからないだろうお話でしたね。
『クリスマスプレゼントを、あなたに―K's BAR STORY―』
これもノンシリーズなのかな?それとも、万相談引受業の神籬龍之輔は他にも出て来る
キャラクターなのでしょうか。ある人物からの依頼を受けて呼び出した女性に、神籬は
彼女の過去にまつわる意外な事実を告げて行く。
姉妹のわだかまりが解けて良かったねってお話(なんだその感想^^;)。
『木曽殿最期―橘樹雅が、どうして民俗学を志すことになったのか―』
これは読んでないシリーズのスピンオフ。ただ、QEDシリーズのタタルさんと奈々ちゃんも
出て来るので、読んでなくてもそれだけで楽しめました。しかも、ここでものすごい
衝撃の事実が判明。シリーズファンなら、ついに!って思える嬉しい展開にびっくり。
更に、奈々ちゃんの妹の衝撃の事実も判明しますが。っていうか、もっと早くに結婚
してた気がしていたので、なんで結婚式?って思ったんですよね。まさか○○していた
とは・・・その経緯を知りたいんですが。読んでないシリーズ作品に書かれているのかな?
どれを読んでないのか、もはやよくわかっていないんですが^^;
木曽義仲についてのいろんな薀蓄は興味深かったです(ちょっと途中読むの面倒だった
ところもあるけど^^;)。実際ここで書かれているような人物だったら、みんな
好きになるだろうなぁ。もともと私のイメージは、田村由美さんの漫画(『巴がゆく!』
ですw)の義仲なんで、かなり好印象ではあったのですけどね(笑)。
タタルさんたちとの出会いが、雅のその後の人生を変えたというのは、シリーズファン
にとっては驚きでしょうね。タタルさんってやっぱりすごい人だな(笑)。