ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾「マスカレード・ナイト」/塩田武士「騙し絵の牙」

どうもこんばんはー。今年も残り一月半になりましたね。早っ。
まだまだ年末って感じはしないですけどね。各種ランキングも気になってくるころですが。
ここに来て、読書ペースが落ち気味なので、今年も読了数は期待出来なそうだなぁ。
120冊は行きたいところだけれど・・・。
19日から今月いっぱい市内の図書館が全て休館することになり、今日は一気に
5冊借りて来たので、頑張って読まなければ(貸出期限も長いのですけどね)。
しかし、私のような図書館ヘビーユーザーにとって、二週間近くも図書館が使えないのは
痛いなぁ・・・はぁ。


読了本は二冊です。

 

東野圭吾「マスカレード・ナイト」(集英社
マスカレードシリーズ第三弾。発売日に予約したのに、結構待たされました。さすが
東野さん。前作は一作目の前日譚でしたので、純粋な続編としてはこれが初めての
作品になりますね。前作で活躍した刑事の新田と、カリスマホテルウーマンの山岸が
再びタッグを組んで、連続殺人事件に挑みます。
とても面白かったのですけど、意外と読むのに時間がかかりました。ページ数も
思ったより多かったですしね。でも、その分読み応えのある作品に仕上がっていると
思います。核となる殺人事件とは別に、ホテルにやって来る客とホテルマンたちとの
人間ドラマの部分も読ませどころが満載で、一作目同様、骨太なミステリー作品に
なっています。
事件の発端は、練馬のマンションで若い女性の他殺死体が見つかったことから
始まります。死因は電気ケーブルによる感電死。捜査が難航する中、警察に一通の
密告状が届く。その内容は、ホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティ
の会場に、今回の事件の犯人が現れる、というもの。そこで警察は、再び新田に
同ホテルへの潜入捜査を命じる――というのが大筋。
潜入捜査を命じられた新田は、12月31日の仮装カウントダウン・パーティの為、
数日前からホテルに潜入し、ホテル業務に立ち会いながら、出入りする客の監視を
始めます。ホテルにやって来る客には様々な思惑があり、それぞれに皆仮面を
被っていることに気付く――。
事件のからくりは、なかなかに複雑。何てことないホテルの日常としての客とのエピソード
が、最後にしっかり事件の伏線となって効いて来るところには唸らされましたね。
山岸さんのコンシェルジュとしての高い能力には今回もひれ伏すばかり。客からの
いかなる要望に対しても絶対『無理だ』と言わない姿勢には改めて脱帽。到底無理だと
思えるリクエストにも、代替案で切り返し、事なきを得るという。なかなかこんな
出来たホテルマン(ウーマン)はいないのではないかなぁ・・・。彼女のプロ意識の
高さには、本当に尊敬の念しか覚えません。彼女のような従業員がいるホテルなら、
いつも気持ちよく利用出来そうですね。
新田刑事と再会して、もう少し二人の距離が縮まるのかな?と期待していたのですが、
あのラストではねぇ・・・。せめて、最後の食事で何かしらのアプローチがあれば
いいのですが。そこは描かれないままだったので、ちょっと消化不良。しかし、
新田刑事、最初に出て来たダンス講師の女性との食事の約束はどうなったんでしょう?
あんな事件が起きちゃったから、口約束で終わってそうではありますけど。
なんか、ちょっと魅力的な女性が現れたら食事に誘うって、その軽さがちょっと
鼻につく感じはしますけどね。前作の前日譚でも、そんなところありませんでしたっけ。
帰国子女らしいといえば、そうなんでしょうけどね。
犯人に関しては、完全に意表をつかれました。日下部とのエピソードも含めて、
いろいろと腑に落ちない部分がたくさんあったのですけど、その不自然さがすべて
伏線になっていたことがわかって、目からウロコ状態でした。日下部も、プロポーズ
するほど愛していた女性と別れた次の日に他の女に一目惚れとか、ちょっとあり得ないでしょ、
とムカムカしていたのですが、それにもちゃんと理由がありましたし。日下部の言動には、
いろいろと腹が立つことばかりだったので、最後に明かされる事実を知って、すべてが
腑に落ちました。
犯人の動機の身勝手さにも腹が立ちました。最初は被害者を救いたかったのかも
しれないですが・・・。こういう人間と出会ってしまったのが運の尽きだったのかも
しれません。
一作目に出て来た能勢刑事が再び登場したのも嬉しかったですね。新田とお酒を
飲むシーンが嬉しかったです。
ホテルという場所は、本当にいろんな人がそれぞれの仮面を被ってやって来る
ところなのだなぁとしみじみ思わせてくれる作品でした。
面白かったです。


塩田武士「騙し絵の牙」(KADOKAWA
昨年非情に話題になった『罪の声』を書かれた塩田さんの新刊。『罪の声』は、読みたいと
思った時には予約がすごいことになっていて諦めたのですが、こちらは発売前に
『王様のブランチ』で紹介されたのを観て面白そうだったので、発売してすぐに予約。
そのおかげで、割合早めに回って来てくれてよかったです。
最初の方は文章が慣れておらず、ちょっと読み進めるのに苦戦したのですが、
二話目辺りからは題材的にも好みだったので、ぐいぐい読み進められて、結局
その勢いのまま止められずにほぼノンストップで読んでしまいました。面白かった。
テレビでも紹介されていたのだけど、主人公の速水は、タレントの大泉洋氏がモデル。
表紙にも起用されていて、作者自らが公言しているので、作中の速水は、まんま大泉
さんを当てて読んでいました。
しかし、なぜこのキャラを大泉さんが!?って感じはありました。確かにウィットに
富んだ会話なんかは大泉さんが言いそうではあったのですけど、雑誌のカリスマ編集者って
イメージは全くないので・・・^^;家庭での妻に対する冷たい態度とかも、ちょっと
イメージ違うし。もっと他に合いそうな俳優がいそうな気はするけどなぁ。まぁ、作者の
イメージが大泉さんなんだから、それでイメージして読むのが正解なんでしょうけどもね。
速水の、自分が編集長を勤める雑誌を廃刊から救おうとする熱意には、胸が熱くなりました。
出版業界の闇の部分や、内部事情など、かなりリアルに描かれていて、興味深かったです。
終盤の、労働組合と幹部たちによる会議での速水と経営陣の舌戦では、速水ガンバレ!
もっと言ってやれ!と心の中で応援しながら読みました。紙媒体が無くなって行くのは、
私も悲しいですから。とはいえ、私も雑誌はほとんど読まないので、速水の言葉には
耳が痛い部分も多かったのですが・・・。その舌戦の結末には、速水同様、虚しく
なりました。
でも、もっと悲しかったのは、その後に起きた作家の高杉の事件。そこに至る伏線は
出て来ていたのですが・・・こういうニュースは、実際でも一番辛い。作中の出来事
とはいえ、ショックでした。
そこからの展開は驚きの連続。速水の逆襲にはスカッとした気持ちになったものの、
そこから更に、ああいう速水の過去が明かされるとは。速水が気にしていた手紙の
主に関しては、何かあるんじゃないかと勘繰ってはいたのですが、あそこまでは
想像していなかったなぁ。速水が雑誌編集にこだわっていた理由がわかって、
いろんなことが腑に落ちました。それだけに、彼の心からの願いが、いつか
果たされることを願いたいです。あんな風に、決別するのは、悲しい。まだ速水
には諦めて欲しくないです。いつか、名乗り出て再会して欲しいな・・・。
速水の逆襲の際、恵を袖にしたところは、ちょっとスカッとしました。こういう、
裏表のある子っているんですよねぇ・・・。相沢のような人間にまで、根回しをする姿
には、嫌悪しか覚えなかったです。
出版不況の中、潰れかけた雑誌を守ろうと奮闘する編集者の話ってだけではなく、その後に
明かされる速水自身の過去にも大きなドラマがあり、最後まで惹きつけられる物語でした。
とても面白かったです。きっと大泉洋主演で映像化されるんだろうな。
話題の『罪の声』も、予約が落ち着いたら是非読んでみよう。