ミステリ読書録

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井上真偽/「探偵が早すぎる 上」/講談社タイガ刊

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井上真偽さんの「探偵が早すぎる 上」。

 

父の死により莫大な遺産を相続した女子高生の一華。その遺産を狙い、一族は彼女を事故に見せかけ
殺害しようと試みる。一華が唯一信頼する使用人の橋田は、命を救うためにある人物を雇った。
それは事件が起こる前にトリックを看破、犯人(未遂)を特定してしまう究極の探偵! 完全犯罪かと
思われた計画はなぜ露見した!? 史上最速で事件を解決、探偵が「人を殺させない」ミステリ誕生!
(紹介文抜粋)


本当は上下巻併せて記事にしたかったんですが、今読んでる本が結構分厚くって
読み終わっておらず、下巻はまだしばらく回って来そうにないので、忘れないうちに、
上巻のみ記事を上げておきます。

 

『その可能性はすでに考えた』シリーズでミステリ界を騒がせた井上さんの
新シリーズ。文庫なので図書館入るかハラハラしましたが無事入荷。なぜか下巻から
入荷するという意味不明の入荷経過を辿りやきもきさせられたりもしましたが、
ちゃんとその後上巻も入れてくれて良かったです。できれば上下巻一気に読みたかった
ですけどね~。

 

父親を突然亡くした女子高生の一華は、莫大な遺産を相続した。
一華の親戚たちは、その遺産を狙ってあの手この手で彼女を亡き者にしようと画策する。
一華が信頼出来るのは、実年齢不詳、経歴不詳の謎の使用人、橋田のみ。橋田は、
親戚たちの魔の手から一華を守る為、知り合いの探偵を雇う。その探偵とは、
事件が起きる前に犯人が仕掛けようとした犯罪を見破り、犯行を未然に防いで
しまう究極の名探偵だった――。

 

『その可能性~』では、あらゆるトリックの可能性をつぶして行く探偵が出て
来ましたが、今回は、これから起きるであろう犯罪を見破って、犯人に犯罪を
こさせないように働きかける、という、これまた今までになかったタイプの探偵
が出て来ます。なかなか斬新な設定で面白かったです。設定や人物造形など、
ツッコミどころ満載だったりもするのだけど、そのやり過ぎ感がかえって
いい味になっているというか。主人公一華を狙う親戚たちのキャラ造形がいちいち
大袈裟なのがいいですね。名前もすごい。麻百合(マユリ)、壬流古(ミルコ)、
牟太(ムタ)、芽瑠璃(メルリ)、六強(りくごう)、陣香(じんか)、竜精(りゅうせい)、
天后(あまご)・・・DQNばっかり(苦笑)。
少ないヒントからあれだけの犯罪を暴いてしまう探偵の慧眼にはただ感服。
気づいたきっかけを説明されると、なるほど、と思えるし。犯人(犯罪は未遂
だけど)に対しては徹底的に冷酷だけど、生命までは奪わない(無駄な殺生は
しないという依頼人の要望があるからだけど)ところもいいですね。三話目の
幼い兄妹に対するぶっきらぼうな優しさにもほっこりしました。あんな幼気な
子どもたちを自分たちの私利私欲の為に利用した犯人には怒りしか覚えません
でした。最終的な目的を知って、更に怒りがこみ上げましたが。探偵が容赦なく
返り討ちにしてくれて、スカッとしました。しかし、あの後あの兄妹はどうなった
のかなぁ。あれだけもらったからって二人では生きていけないだろうし。
施設に戻ったのだろうな・・・。幸せに強く生きて行って欲しいなぁ・・・。
二話目までは探偵は声の出演だけで、なかなか姿を表さず焦らされましたが、
三話目にしてやっとお目見え。なかなかもったいぶらされるなぁと思いました(笑)。
性別は男だけど、心は女、だけど性的嗜好は女って、何が何やらって設定ですね(苦笑)。
橋田との関係も気になりますが、橋田自身も得体の知れないところがあって、
何か裏がありそうで気になるところ。なぜ一華の家の使用人になったのかも謎だし。
そういえば、一華を狙うよう依頼されて、意味深に名前だけちょこちょこ
登場していた殺し屋(トールマン)が、探偵の慧眼によって、何もしないままで
あっさり退場させられたのには拍子抜け。一体何だったんだ、あの伏線・・・。
気になる部分がたくさんあるので、下巻を読むのが楽しみです。早く回って
来ないかなー。