ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

森見登美彦「太陽と乙女」/「猫ミス!」

こんばんはー。今年は寒くなるの早くないですか?去年は12月ってほとんどエアコン
入れてなかった気がするんですけど、今年はもうガンガン入れちゃってます。寒いのダメ(><)。
そういえば、今日芥川・直木賞候補が発表になりましたね。目玉は直木賞の藤崎さんでしたか。
読んでないから何とも言えないですが、デビューしたばっかりの作家が直木賞かぁ・・・と
思わなくはなかったです。話題作り感満載のような。読まれた方のご感想が聞いてみたいなぁ
(予約が多いと思うので今更予約する気はなし)。これで受賞しちゃったら、直木賞の権威問題に
発展しそうな気はするけどね(芥川の方は新人賞みたいなものだから芸能人でもありのように
思うけど)。さて、どうなりますかね。


読了本は今回も二冊ですー。


森見登美彦「太陽と乙女」(新潮社)
モリミーのデビューから最近までにいろんな所で書かれたエッセイや雑文的なものをまとめた
エッセイ集。意外なことに、純粋なモリミーのエッセイ集ってこれが初めてなんですね。
『美女と竹林』はなんだかよくわからない妄想日記みたいな感じでしたから(笑)。
結構なボリュームがあって、意外と読むのに時間がかかりました。モリミーご自身が、一気読み
せずに、少しづつ読んだ方が良い、と冒頭の方でおっしゃっていた意味が読んでいてよく
わかりました。まぁ、続けて読みましたけど(笑)。
エッセイでの文章は思ったよりずっと真面目ですね。『美女と竹林』みたいなモリミー節全開
なのかと思って読んだので、そこはちょっと意外だったかも。改行も少ないですし、お笑い要素
も少なめ。もちろん、モリミーらしい妄想話や、くすりと出来る逸話もたくさん入ってはいるの
ですけど。森見さんの京大時代のお話は興味深かったです。入っていた部活がライフル射撃部とは。
あの森見さんの風貌からは全く想像できなかったです(笑)。でも、そのライフル射撃部の
仲間たちがいたからこそ、あの衝撃のデビュー作太陽の塔が生まれたのですね。
個性的な仲間たちとの当時のやり取りをもっと読んでみたかったです。
個人的に好きだったのは、奥さんとのお話と、お父さんとのお話。奥さんが森見さんに
対して敬語で話すのは、実話なのかしらん。なんか、ほんとに森見作品に出て来る乙女
そのまんまな感じの女性って感じがして、嬉しくなりました。ほんのたまにしか登場
しないんだけど、森見さんが奥さんのことを愛されているのがなんだか伝わって来て
微笑ましかったです。
あと、京大時代に住んでいた四畳半のアパートをお父さんと探すお話も好きだったな。
方向オンチだったり、鍵がついてれば立派な部屋だと言ったり。なんだか、可愛らしい
お父さんでほのぼの。ほぼ普段料理をしないのに、ベーコンエッグだけは得意だとか。
もっと家族のお話いろいろ読みたかったな~。
らしいな、と思ったのは、竹林園に奥さんと出かける話。やっぱり、竹林が好きなんだなー
と思いました(笑)。大学で竹を研究するほどだったとは。そういう経験が『美女と竹林』
を書かせたんだなーと感慨深くなりました。私も、あれを読んで竹林行きたくなったし、
実際鎌倉の竹林が有名なお寺に行って『竹林の夜明けぞ!』とか叫んで来たもんな(阿呆)。
他にもいろいろ書きたいことがあったんだけど、キリがないのでこの辺で。
知らないモリミーの一面をたくさん知ることが出来て嬉しかったです。
いつか、是非、奈良の地(京都でもいいけど)に森見登美彦記念館』建ててもらいたい
ものです(笑)。


「猫ミス!」(中公文庫)
猫にまつわる話ばかりを集めたミステリアンソロジー。最近、こういうの多いですね~。図書館の
新刊案内で見かけると、ついつい借りてしまう。もちろん、メンバーを見てですが。
そんなに猫好きって訳じゃないんだけども、やっぱり猫とミステリーは相性が良いですし、
ついつい手が出てしまうジャンルではありますね。寄稿作家もなかなか豪華ですし。
どれもなかなか個性があって面白かったです。久しぶりに新井素子さんの作品が読めた
のが嬉しかったなぁ。中学時代に大好きだった作家さんで、最近は随分ご無沙汰だったので。
やっぱり、もとちゃんの語り口好きだなーと思いました。SFよりの作品が多いので、
だんだん手が出なくなっちゃってたんですけどね。今回みたいな現代ものならもっと
読んでみたいなー。

 

では、一作づつ軽く感想を。

 

新井素子『黒猫ナイトの冒険』
飼われていた家から逃げ出した黒猫のナイトが、はぐれカラスと格闘するお話。ぼっちカラスが
なんとも粋なことをしてくれるんですねー。ナイトとカラスのやり取り好きだった。
そういえば、一人称の作品を読んだのは、新井素子さんの作品が初めてだったかもしれない
ってことを思い出しました。文体が全然当時と変わってなくって嬉しかった。

 

秋吉理香子『呪い』
最近結構注目している秋吉さん。公園で野良猫にエサをやる人たちには、正直私もいい気持ちは
しないです。うちの近所にもいるので。でも、こういう風に、自治体が活動を支援してくれる制度が
あったらいいですね。ラストで明らかになる区役所の瀧本さんの本性にぞぞ。気持ちはわかる
けど・・・そこまでやったらダメでしょ・・・。

 

芦沢央『春の作り方』
亡くなったおばあちゃんの桜の塩漬けが入った瓶を割ってしまった主人公が、おばあちゃんの桜茶が
好きだったおじいちゃんの為に再現して作ろうと奮闘するお話。
アーモンドって、日本でも育つ木なんですね。花の形が桜と形がそっくりだとは知らなかったです。
名探偵の水谷少年のキャラが素敵でした。シリーズ化して欲しい。

 

小松エメル『一心同体』
『猫になりたい』と言っていた葵が消えてしまった。代わりにやって来たのは一匹の黒猫。猫は
葵の生まれ変わりだなどと主張するけれど――。
葵と茜の関係は、途中の文脈からなんとなく察せられました。葵が消えた理由も。二ヶ月も誰にも
気が付かれなかったのはちょっと疑問に思いましたが、ミステリとしては良く出来ていると思います。

 

恒川光太郎『猫どろぼう猫』
泥棒に入った家を出た後、ケシヨウという魔物を探しているという奇妙な老人に襲われ、捉えられた
羽矢子。老人は間違って彼女を襲ってしまったと言うが。
久々恒川さん。相変わらずの世界観。終盤はなかなかのスプラッター展開にぞくぞくしました。
今回の作品の猫の中では、一番不穏な存在じゃないでしょうか。

 

菅野雪虫オッドアイ
死体を触るのが好きだと噂される小学五年生の冬路。しかし、同じクラスの俺は、冬路がそう
呼ばれるきっかけになった出来事の真相を知っていた。冬路は、ある女子の為に嘘をついて
いるのだ――。
オッドアイの猫は、中学時代に通学途中の家でよく見かけていました。とても綺麗で、私も
飼いたいなぁと思ったものです。
オチは予想通りでしたけど、冬路も主人公も良い子で好感持てました。迷子猫の顛末は悲しい
ものでしたけれど。

 

長岡弘樹『四月のジンクス』
七十八歳になる隣の加寿子から、理由あって彼女の飼い猫を預かることになった春代。しかし、
当日加寿子が連れて来たのは、彼女が飼っていた灰色の猫ではなく、真っ黒な猫だった――。
さすが短編の名手って感じの作品ですね。加寿子が連れて来た猫が真っ黒だった理由って、
この種類の猫を飼っている人なら思い当たることだったりするんですかね?全然知らなかった
です。飼い猫と飼い主は、どんな理由があっても、やっぱり最後まで一緒に過ごして欲しいですね。

 

そにしけんじ『猫探偵事務所<マンガ>』
読売新聞の猫ピッチャーの人でしたか。ほのぼのした絵が可愛らしいなーと思ってました。
ニャンロックホームズにウケました(笑)。愛らしい内容にほっこり。


猫好きにはたまらないアンソロジーではないかな。どれも面白かったです。