ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

森見登美彦(原案:上田誠)「四畳半タイムマシンブルース」(角川書店)

f:id:belarbre820:20200826190937j:plain

モリミー最新刊。著作四畳半神話大系と映画サマータイムマシン・ブルース

のオリジナルコラボ小説。

映画の方の『サマータイム~』は観ていませんが、なかなか面白かったです。

久しぶりに『四畳半~』の大学生たちのわちゃわちゃした感じを思い出して、

懐かしかったし楽しかった。やっぱり、モリミーの真髄は四畳半の中にあります

よね。

いろいろとツッコミ所は満載なのだけれど、こういう世界観なんだ、悪いか!

みたいな、突っ走った感じがモリミーらしくて良かった。『サマータイム~』の

ストーリーも、多分ばかばかしくて笑える感じなんだろうな~っていうのも

伝わって来ましたし。『四畳半~』に出て来た懐かしのキャラたちとの再会も

嬉しかったです。久しぶりにもちぐまとも会えたしね!明石さんが持ってる

もちぐまって、そんなにいろんな色があったんだ、とそこに一番びっくりしたかも。

私のイメージは白だったんだけど、どこで間違ったんだろう・・・??(表紙が

白いくまっぽかったからだと思うけど・・・あれは灰色だったのか?)

灼熱の京都の夏を乗り切るために、タイムマシーンに乗って一日前に戻って、

壊れる前のクーラー(エアコンではないところがポイントよね)のリモコンを

持って来ることを考えついた大学生たちのお話。ただそれだけのお話ではあるの

だけど、彼らの行く手には様々な困難が待ち構えているという。たった二日間

の出来事なんですが、タイムマシーンのおかげで最後はかなり壮大な物語に

なってます。まさか99年前の河童伝説の真相までもが暴かれるとは。コーラに

壊されたリモコンの発端がそんなところにあるとも思わなかったし。辻褄が

合っているような、いないような。タイムトラベルものはいろいろと頭がこんがら

がっちゃうところがあって基本的にはあんまり好きじゃないんだけど、これは

タイムパラドックスとかそいういう面倒な設定とかあまり深く考えずに、阿呆な

学生たちのわちゃわちゃをただ愉しめばいいって話じゃないかなぁ(え、違う?w)。

タイムマシーンを四畳半に持ち込んだ張本人、25年先の未来から来た田村の正体

には驚かされました。なるほど、なるほど、むふふふふ(怖)。田村がもっさりして

いる理由もこれで腑に落ちましたよ。母親に似たらそうはならないでしょう。

父親の影響ですよね、当然。彼の両親の恋が成就する過程の、うれしはずかしな

あれこれ、私はそれが一番読みたかったよ!

初期のモリミー作品がお好きな方なら、間違いなく楽しめる一作じゃないですかね。