ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

池井戸潤「下町ロケット ヤタガラス」/大倉崇裕「福家警部補の考察」

こんばんは。
急に寒くなって来たせいか、9月に生まれたメダカのベビーたちが、
毎日のように★になってしまいます。今日も一匹お空に行ってしまい、あとはちっちゃくて
なかなか大きくなれない子を一匹残すのみ。この子も成長が遅いので、生き延びるのは
のぞみ薄だな・・・。最初は十数匹もいたのにな・・・(涙)。
メダカは一定の水温と光があれば毎日のようにメスが卵を産むのだけれど、その
卵を採卵して大人のメダカに育てるのは本当に難しいと痛感しています。たくさん
増やして睡蓮鉢で育てるのが最終目的だったのに、そこまで行き着くのは夢のまた夢
のような。はぁ。


今回も二冊ですー。


池井戸潤下町ロケット ヤタガラス」(小学館
前作『ゴースト』の後編。現在ドラマもスタートしたので、後半が始まる前に
読めてよかったです。発売日に予約したけど、ドラマ始まるし一番手は無理だろうなぁ
と思っていたら、意外にも一番手(だいたい11人以内)に食い込めてよかったです。
ちなみに、東野さんのガリレオ新刊も発売日予約でしたが、予約22番目でした・・・
ガリレオ(東野)人気、恐るべし。
さて、前作のラストはモヤモヤマックスで読み終えた訳ですが、本書はやっぱり
池井戸さん、そのモヤモヤをすっきりと吹き飛ばしてくれました。
今回も佃製作所にはいろんな試練が襲いかかりますが、佃を始めとする社員たちの
『ものづくり』に対する熱い思いがその試練を乗り越えさせて行きます。予定調和
なんだけど、やっぱり一生懸命頑張る人たちが報われる展開は読んでいて爽快だし
気持ちがいいですね。それに、今回は、日本の農業を助けたい、という佃の強い
思いも入っていて、より熱いお話になっております。無人農業ロボット開発が今回の
お話の核であり、佃製作所と帝国重工がタッグを組んで開発した『アルファ1(のちの
『ランドクロウ』)と、ダイダロス社や佃を裏切った伊丹のギアゴースト社が手を
組んで立ち上げたダーウィンとの、岡山での農業イベント『アグリジャパン』
での直接対決のくだりなど、読み応えありました。
最初は佃のトランスミッションを採用せずに自社製品のみで作った『アルファ1』がデモで
失敗し、安価でメディアを味方につけたこともあり、伊丹たちの『ダーウィン』の圧勝でしたが、
佃製品を採用し、少しコストがかかっても使う人のことを徹底的に考えた新生『アルファ1』
は、少しづつその性能の良さで顧客を増やして行くのでした。
使ってみて初めてわかる、その技術の高さ。やっぱり、ものづくりって、どれだけ
消費者の立場に立って作れるか、っていうのが一番大事なことなんだと思う。
そりゃ、会社の側に立てば、もちろんコストの面も考えなきゃいけないのは当然の
ことなんだけども。低いコストで高品質のものが作れれば一番良いのでしょうけど、
なかなかそこに折り合いをつけるのは難しいことなんでしょうね。このシリーズを
読むと、そういう企業の大変さがリアルに伝わってくるんですよね。
前作で、島津がどうなるのかが一番気になっていたのだけど、私が願っている通りの
展開になったので嬉しかったです。まぁ、大抵の人がこういう展開になるだろうと
予想は出来ると思うけども。島津に関しては、完全に脳内でイモトのビジュアルで
読んでしまいました。最初はもっとぽっちゃりした人がイメージだったんだけど、
口調とかイモトにぴったりで、今はイモト以外に考えられなくなってしまった^^;
映像のイメージってすごいわー。
個人的には、殿村さんの父親に佃たちが『アルファ1』の試験場として、殿村家の農場を
貸してもらいに行くシーンが一番ぐっときました。佃の熱い今後の農業への思いと、その
佃の強い思いを聞いた殿村さんの父親が、頑なだった態度を変えるシーンに胸が熱く
なりました。殿村さんの父親自身も、未来の農業を憂いて、不安を覚えていたのですね
・・・。そんなお父さんにとって、佃たちの提案する無人農業ロボットは、日本の
農業を変える救世主のように思えたことでしょうね。年老いてなお、『アルファ1』を
扱うために、積極的にパソコンを覚えようとするバイタリティには脱帽でした。
終盤、伊丹が自分の窮地を救ってもらおうと佃製作所を訪れた時は、あまりの身勝手さ
に腹が立って仕方がなかったです。でも、佃たちはきっと、ああいう決断をするだろうな、
とも思いましたけど。どこまで人がいいのやら。でも、そこが佃製作所の良い所なんです
よね。どんなに憎い相手でも、その先にいる顧客を見据えて手を差し伸べる。こういう
企業が存在するだけでも、日本は捨てたもんじゃないなって思えるっていう。
取り上げたいシーンはもっとたくさんあるけれど、ドラマも始まってるし、この辺で。
予定調和だろうが何だろうが、やっぱりこのシリーズが面白いことに変わりはない。
もっともっと佃製作所の物語が読みたいです。面白くって、先が気になって、
あっという間に読み終わっちゃった。今後はドラマを楽しみにしようっと。


大倉崇裕「福家警部補の考察」(東京創元社
福家シリーズ第5弾。今回も、鋭い洞察力と観察力で犯人を追い詰める福家さんが
なんだか凄まじかったです。二岡さんも言ってましたけど、魔女っぽさが増した
感じ(苦笑)。魔女っていうより、妖怪かしらん(笑)。
一作目の『是枝哲の敗北』は、総合病院の皮膚科医師が愛人を殺害する話。アリバイ
の作り方は非常に巧妙でしたね。犯人がいつも軟膏を持ち歩いているという伏線が最後に
ああいう風に効いてくるとは。病み上がりなのに、福家さんの命令で全力ダッシュ
させられる二岡君が可哀想だった^^;
二話目の『上品な魔女』は、お嬢様育ちの上品な主婦が、事故に見せかけて夫を殺害
する話。犯人のさゆりのファム・ファタルっぷりが怖かったですね。東野さんの
ヒロインみたいだった。福家さんも、いつもとは違う犯人に戸惑っている感じでしたね。
でも、にこやかな悪女の迫力に負けず相手を打ち負かした福家さんはさすがだった。
なんだかスカッとしました。
三話目の『安息の場所』は、女性バーテンダーが師匠の敵のジャーナリストを銃殺
する話。福家さんが酒豪なところが垣間見えました。二話目の主婦が出す飲み物には
一切手をつけなかったけれど、今回の犯人から供されるカクテルは本気で美味しそうに
飲んでましたね。本当なら、犯罪関係なく通いたいお店だったんでしょうね。彼女が
作る福家さんをイメージしたカクテル、どんな味なんでしょうか。いつか作って
もらえる日が来るといいけれど。
四話目の『東京駅初6時00分 のぞみ1号博多行き』は、東京から博多に行く
新幹線の中での、福家さんと犯人の対決を描いたお話。証券会社のやり手営業マンが、
ライバル会社の若手営業マンと、ヤクザ上がりの自称コンサルタントの男を銃殺する。
東京駅で、福家さんが犯人の蓮見を見かけて何らかの犯罪者ではないかと見抜いた
きっかけがすごい。まさに魔女。
でも、事件の善意の関係者たちにとっては、なぜか福の神のようなのが面白い。
福家さんと出会った脇役キャラたちには、その後なぜか幸せが訪れるんですよね。
三話目の被害者が住んでいたマンションの管理人の娘が、夫の殺害容疑を
かけられている件が、福家さんの慧眼によって解決されたところが良かったです。
父親も母親もほっとしたことでしょうね。大きな事件を扱ってる最中だろうが、
ちゃんと、父親との約束を守って事件を解決するところがさすがだな、と思いました。
このシリーズは安定した面白さがありますね。福家さんのプライベートは相変わらず
謎ですけど。一体いつ寝ているんでしょうか・・・よく身体を壊さないなぁ。
あと、二岡君の扱いが、一作ごとにひどくなっている気がするのは気の所為では
ない筈・・・今回も、福家さんのせいで度々散々な目にあって、ちょっと気の毒に
なりました^^;