ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

久保寺健彦「青少年のための小説入門」/東野圭吾「沈黙のパレード」

こんばんはー。秋晴れが続きますね。空気が澄んでて空が高いこの時期の青空が大好きです。
そういえば、最近、我が家のお庭に一匹のカマキリが住み着いたんですよ。結構大きめの。
毎日見かけるので、かまじろーと名前をつけて相方と愛でています。私、基本的には
昆虫は大の苦手なのですが、カマキリは結構好きなんですよねー。
バッタはだめだけど(いきなり飛ぶから怖い)。
かまじろー、朝は寒いので小菊の鉢植えの影に隠れているのですが、陽が昇って
暖かくなると芝生の辺りに出て来て日向ぼっこしてます。それが何だかカワイイ。
姿が見えると嬉しくてつい眺めてしまいます。今回はいつまでいてくれるかな。
カマキリって、意外と行動範囲が狭いみたいで、一日ほぼ同じ場所で動かないんですよ。
動いても、半径50センチ以内とか、そんな感じ。ほぼじーっとしてる。面白いです。
今日の朝もちゃんといてくれました。もう一週間くらいいるかな?我が家のお庭が
気に入ってくれたのかも^^

 

今日の昼間撮ったかまじろー。朝は右上に見える小菊鉢植えのどっかに紛れていなかったりします。
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前置き長くてすみません^^;
読了本は二冊ご紹介(他に三冊読み終えてるんですが^^;)。



久保寺健彦「青少年のための小説入門」(集英社
久々の久保寺作品。なんとも本好きの心をくすぐるタイトルなので、
思わず予約してしまいました。
うん、とても良かった。いじめられっ子少年と、ディスレクシアのヤンキー青年が
タッグを組んで、小説家を目指す青春小説。ディスレクシアとは、文字の読み書きが
出来ない障害のこと。有名人(海外の俳優だったかな?)にもいましたよね。
身近で出会ったことはありませんが、結構いるものなんですかね。

 

ある日、中学生の一真は、同級生のいじめっ子たちから、町の駄菓子屋たぐちで
万引きを強要される。梅ジャムを掴んで外に出ようとした瞬間、いじめっ子
たちが一真が万引きしていることを店主に伝えてしまう。すると、店から
その町では有名なヤンキーの登が一真を追いかけて来た。登は、普段その店の
店番をしている白髪の老婆の孫だった。一真の話を聞いた登は、一真の頭が
いいことに着目し、万引きを見逃す代わりに、自分に小説の朗読をして欲しいと
頼む。登は、文字の読み書きが出来ないディスレクシアという障害を持って
いる為、小説を読むことが出来ない。しかし、登の夢は小説家になること
だった。そのため、小説家になるための第一歩として、いろんな文学を吸収
しようと考えたのだ。登に逆らうことが出来ない一真は、看護師の母がいない日
を狙って登のいる駄菓子屋のたぐちに通い、様々な小説を朗読する羽目に。しかし、
登に名作文学を朗読していくうちに、一真自身も小説の魅力に取り憑かれて行き、
いつしか小説家は二人の夢になって行く――。
長編小説を何冊も朗読するのに、一体どれくらいの時間がかかるんだろう、と
ちょっと首を傾げるところもあったのですが、二人が名作小説を朗読していくうちに、
少しづつ小説を書く為に必要なスキルを身に着けて行くところがとても丁寧に
描かれていて、ぐいぐい引き込まれて行きました。いじめられっ子の一真と、
周りから恐れられているヤンキーの登、正反対の二人なのに、こと小説に
関しては真摯な思いが共通していて、二人が文学の話をしているシーンが
とても好きでした。
登さんのその後に関しては冒頭で明かされてしまうので、二人が小説家として
成功して行けば行くほど、その後の別れを想像して暗鬱な気持ちに
なりました。二人がどんな風に別れてしまうのかは、全く想像出来なかった
のですが・・・まさかあんな形でだとは。登さんらしいとも云えるけれど・・・。
かすみと一真の最後も悲しかったな。かすみがアイドルデビューしてからの
展開は思った通りだったのですが、かすみ自身が変わってしまうのかと
思ったら、そうではなくてほっとしたところもありました。彼女自身は、
芸能界に染まることなく、彼女自身のままだった。それが嬉しかっただけに、
一真との別れは悲しかったな。かすみらしい終わらせ方でしたけどね。
登が例の場所に行ってしまったあとで、一真がずっと彼に朗読テープを
送り続けるシーンが心に響きました。あんな状態になっても、一真
ずっと登を見捨てなかった。二人は、本当にいいコンビですね。
小説家解散は悲しかったけど、それが一真に対する登の優しさなんでしょうね。
本当は、登はもっと一真と小説を書き続けていたかったのではないかな・・・。
大人になった一真が一人で書いている小説にも興味があるけれど、やっぱり
読んでみたいのは、登と一真が二人で書いた小説。どんな傑作だったのかな。
心から文学を愛する二人の作品だから、きっといい小説なんだろうな、と
思いました。とても素敵な作品でした。おすすめです。


東野圭吾「沈黙のパレード」(文藝春秋
待ちに待った、ガリレオシリーズ最新作。前作で、湯川先生がアメリカに
渡ってしまって、ひとまずシリーズは休止ということで寂しく思っていたので、
新刊がガリレオシリーズと知った時はとても嬉しかったです。やっぱり、
このシリーズが大好きですから。
今回、四年ぶりに日本に帰って来た湯川先生は、准教授から教授になっています。
そして、草薙刑事は係長に昇進。二人とも、着々とステップアップしている
ところがさすがだなーと思いました。四年ぶりに会っても、二人の関係が
全く変わっていないところが嬉しかった。
湯川先生自身は、年を取るごとに性格が丸くなって行っている感じがしますが。
アメリカで何かあったのかなぁと勘ぐってしまうくらい、なにか柔和な
雰囲気になっているような。今回の事件の関係者が集まる食堂『なみきや』
で、常連客たちと談話する姿も、大分角が取れてる感じがしましたし。
初期の頃って、もっと偏屈で人間嫌いって感じだった覚えがあるんだけど。
初対面の人と仲良くなるようなタイプではなかったですよねぇ。私の思い違い?
事件の方は、トリック自体は湯川先生の慧眼のおかげで早々に判明して
しまいますが、事件の真相は二転三転して、人間関係も複雑に絡み合って
いて、翻弄されました。細かい伏線もきれいに回収されていて、さすがだと
思いました。かつての幼女殺害事件の犯人であり、今回の事件の被害者
でもある蓮沼に関しては、すべての言動に嫌悪感しか覚えなかったです。
正直、自業自得としか思えなかった。殺人を犯しても、黙秘権さえ使えば
あんな風に罪に問われずに釈放されてしまうなんて。あまりの理不尽さに、
怒りがこみ上げて来ました。こんなことがまかり通る世の中だったら、
本当に復讐法でも作ってもらわないと、被害者側が浮かばれないですよ・・・。
殺害に○○を使うところは、このシリーズらしかったですね。パレードの
最中の殺人事件ってことで、パレード自体が絶対何かのトリックに関わって
いると思っていたので、○○の運搬方法は割とすぐに当たりをつけることが
出来ました。でも、あの真犯人は予想できなかったなぁ。動機は共感出来る
ような、出来ないような。『なみきや』で具合が悪くなった女性客のことが
最後まで引っかかっていたのだけど、その人物に関してもきちんとフォローが
あったので、溜飲が下がりました。
サービス精神旺盛な東野さんらしく、ファンには嬉しい要素もたくさん
散りばめられています。湯川先生が『実に面白い』と口にしたり、ギターを
弾くシーンがあったり(福山さんに寄せているよね)容疑者Xの時の事件の
ことがほのめかされるシーンがあったり。湯川先生にとって、
やっぱりあの事件はいまだに心にとても暗い影を落としているのですね・・・。
でも、何より嬉しかったのは、最後に明かされる、湯川先生がこの事件に
ここまで深く関わろうとした理由の部分。今まで、草薙刑事が持ち込んで
来る事件にはあまり乗り気じゃなかったのに、なぜか今回の事件では
積極的に解決に取り組もうとしているから、不思議だな、と思って
たんですよね。そこには、ちゃんと先生なりの、ある人物への思いが関係
していたのですね・・・。もう、なんて素敵なの、湯川先生~~(顔は
もちろん、福ちゃんです。ぐふ)。
やっぱり、このシリーズは面白いなぁ。今回も、ほぼ一気読みだったし。
読み始めると止められないのよね。なんだかんだで、東野さんって
やっぱりすごい作家だと思うなぁ。これだけ吸引力の強い作品を、
コンスタントに書き続けられるのだからね。
湯川先生が無事日本に戻って来てくれたから、これからまた定期的に
ガリレオシリーズが読めると思いたい。東野先生、お願いしますっ。