ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三津田信三「犯罪乱歩幻想」/舞城王太郎「私はあなたの瞳の林檎」

こんばんは。一気に冬本番ですね。寒いっ。
昨日のフィギュアのグランプリファイナルは興奮しましたねー!
紀平梨花ちゃん、素晴らしい滑りでした。あのザギトワを破るとは!
ジュニア時代からトリプルアクセルで有名な選手ではありましたが、シニア一年目で
ここまで飛躍してくれるとは。やっと、真央ちゃんが拘ったトリプルアクセル
後継者が現れてくれたと思うと・・・感涙ものです。
今後の日本女子フィギュアを引っ張って行く存在なのは間違いないでしょうが、
メディアはあまり過度に騒がないで欲しいな。大事に大事に育てて欲しい存在ですね。


今回も二冊ご紹介~。


三津田信三「犯罪乱歩幻想」(角川書店
乱歩の有名作品を下敷きに、三津田さんが新たな物語を構築した乱歩への
オマージュ作品五編プラス二編の短編を収録した珠玉の短編集。
三津田さんの、乱歩に対する熱い想いがたくさん詰まった作品集だと思います。
ただ、最後の二編は、別にこの作品集に入れる必要はなかったような気も
しますが。どうせなら、乱歩ものだけで統一した方が良かったんじゃない
のかなぁ。まぁ、それはそれで三津田さんらしい作品で面白かったの
だけども。
ただ、残念ながら、私自身は、そんなに乱歩をたくさん読んでいる訳
でなくて、今回取り上げられた元ネタで読んでいたのは、D坂のやつくらい。
探偵小説でも、幻想怪奇色が強い乱歩よりは、おどろおどろしい殺人事件を
扱った(横溝)正史の方に惹かれたクチなので・・・。だから、元ネタとの
比較があんまり出来ない分、読むテンションはそんなに上がらなかったかも。
まぁ、元ネタを知らなくても、十分楽しめましたけれど。

 

ちょっとずるして、アマゾンの紹介文を抜粋しておくと、
“退屈病”に冒された青年が、引っ越し先の部屋で感じた異変の数々。 ──「屋根裏の同居者」
ある日突然届いたのは、猟奇を楽しむ、特別な倶楽部の招待状だった。 ──「赤過ぎる部屋」
G坂に住むミステリ作家志望の“私”は、ある殺人現場に遭遇し……。 ──「G坂の殺人事件」
精神分析研究所を訪ねた男が語った、夢遊病をめぐる学生時代の体験。 ──「夢遊病者の手」
今は亡き祖父が、倒れる前に覗き込んだ鏡台。その中に見たものとは? ──「魔鏡と旅する男」

 

どれも、オチははっきりしておらず、読後はモヤモヤした感じが残るものが
多かった。敢えてぼやかして書いたのかもしれないですけど。作品として
面白かったのは、『赤過ぎる部屋』『G坂の殺人事件』かな。『G坂~』の方は
元ネタもわかるし。ただ、『G坂~』はトリックが実現可能かどうかの点で
疑問には思いましたけど。そんなに上手く行くのかなぁ。老人の正体は
嬉しかったですけどね(読んでる時はまさかね・・・くらいに思ってましたが、
あとがきで言及されていたので、あの人物で間違いないかと)。
残り二編のうち、『骸骨坊主の話』は、『貞子3D2』の公開に合わせて出版された
ムック本に収録されたもの、『影が来る』は、円谷プロ作品へのトリビュート
作品だそう。どちらも、三津田さんらしいホラー作品でした。『骸骨~』の
方は、小野不由美さんのホラー小説を思い出しました。怪談を人に話すことで
呪いがどんどん伝播していくって、終わりが見えなくて怖い。私だったら
聞きたくないし、話したくもないなって思いました。
装丁がとってもかっこいい。本棚に並べておきたいなぁと思いました。


舞城王太郎「私はあなたの瞳の林檎」(講談社
舞城さん最新作。新刊出ても最近はスルーしちゃうことが多かったんですけど、
今回は久々に恋愛ものだと聞いて、手にとってみました。
ページ数も少なめだから、さくさく読めて楽しめました。相変わらず
個性的な文章と表現力。でも、やっぱり好きだなぁ。
三作入っていますが、どの作品も感性がほんとに独特。どの主人公も、
一途に恋する姿が伝わって来て、良かったです。相手の態度がみんな
微妙なところがじれったかった。表題作である一作目の主人公の片思い相手の林檎
ちゃんなんて、どんだけ捻くれた恋愛観なんだ、と呆れてしまうくらい。そんなに
好きなら、もっと早く言ってあげてよ、と思いましたね・・・。優さんに直紀が
取られそうだとわかったら手のひら返すように自分と付き合おうと言うとは、
なんと自己中な女の子だ、と辟易したところもありました。まぁ、
この捻くれっぷりが良いのかもしれませんけど。優さんがただただ
可哀想だった。しかし、小六の春休みの最後の日、結局林檎ちゃんには
何があったんだろう?なぜ待ち合わせに来なかったのかな・・・。
林檎ちゃんって、結局小学生の頃から直紀のことがずっと好きだったの
だろうなぁ。あの、母親から助けてあげた日から。その後、母親とは
どうなったのかも気になりますけど。なんか遠回りしたけど、最後は
収まるところに収まってほっとしました。直紀のように小学生の頃からの
純愛を貫ける人ってなかなかいないんじゃないかな。彼のまっすぐな
想いが眩しかった。
二作目の『ほにゃららサラダ』の『ほにゃらら』の部分には脱力。
そりゃ、ピーってなるよね(苦笑)。想像すると、うげーって感じ。
高槻くんみたいな天才が相手だと、振り回されていろいろ疲れそうだ。
私には無理だなぁ。でも、こういう特殊な人と一度でも付き合って
しまうと、普通の人だと物足りなく感じたりしないのかな。個人的には高橋君の
方がお似合いだと思うのだけれど。
三作目の『僕が乗るべき遠くの列車』は、とても切ない作品。これも
純愛がテーマだけれど、途中で衝撃の展開が。ヒロインの鴨(すごい名前)
よりも、夏央とのエピソードの方が印象的だったな。明晰夢とか。
自分が困った時、助けてくれると思える存在がいるだけで、救いに
なるだろうな。夏央は祐介の存在がずっと救いになっていたのかも。
ラストに判明した夏央のある事実にはちょっとずっこけたところもありました
けど、それがわかったことで、祐介自身も救われたのだと思う。
三作それぞれに、舞城さんらしさが詰まった恋愛小説であり、青春
小説だと思いました。
これと対になる作品も今月出たのですよね。そちらも早めに読みたいと思います。