ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

早坂吝「誰も僕を裁けない」/池井戸潤「ノーサイド・ゲーム」

こんばんは。いやー、一気に夏ですねぇ。暑いっ。ようやく明日辺りに梅雨明け
宣言出るかな?今年の梅雨は長すぎましたね。そして、梅雨が明けたら一気に
酷暑・・・極端なのよね^^;8月はヤバい暑さになりそうだとか。憂鬱だなぁ。
暑さに弱いめだかさんたちが心配だわ。

 

本日も二冊ご紹介っと。

 

早坂吝「誰も僕を裁けない」(講談社文庫)
らいちシリーズ第三弾。新書版は新刊時に図書館に入荷してもらえなかったので、
読み逃していましたが、最近ようやく文庫で入荷。なぜか一緒に四作目の文庫も
入荷したようなので、折を見て借りるつもりです。
相変わらずお下品描写が満載ですが、本格ミステリとしてもたくさんの仕掛けが
施されてあって、とても面白かったです。
高校生の戸田公平視点と、らいち視点、二つの視点から物語が進んで行きます。
埼玉と東京、それぞれの場所で起きる出来事が最後にリンクしていく形。
いやー、いろいろ騙されてましたね。○る屋敷の伏せ字、アホなことに私全然気づいて
なかったです。読書メーターの他の方の感想見てたら、ほとんどの人がすぐ気づいていたらしい・・・本当にミステリ好きなのか、自分^^;まぁ、確かに、言われてみれば、この屋敷の形状みたら一発でピンと来ないとおかしいですよねぇ・・・。
何書いてもネタバレになっちゃいそうなんで、細かい感想書くのは控えようと思いますが。
作者の思惑通り、社会派と本格ミステリを見事に融合させていると思います。
条例って、それぞれの県や都でそんなに違っているものなんですね。どこの都道府県で犯罪を犯すかによって、罰則等が全く違って来てしまうというのは驚きましたし、
勉強になりました。
18歳でも17歳と性交すると逮捕されちゃうものなんですね。今どきの子は
進んでいるのに、そんなこと言ったら逮捕者が続出しちゃう気もしますけど。
まぁ、戸田の場合は特殊だったんでしょうけどね。こういうのがまかり通るんだったら、普通の人間を犯罪者にするのって本当に簡単にできちゃいそうで怖いですね。
あと、らいちのしている○○も、罰する法則がないのにびっくり。犯罪じゃないの?
買う方には適応されるけど、やる方にはされないって何かおかしいような。
今回、彼女のアイデンティティが崩壊するような出来事も起きるんですが、それにも
理由があって溜飲が下がりました。細かく伏線張ってあって感心。まぁ、読み
飛ばしてましたけどね・・・。
とにかく、別々に起きていたと思われる戸田の事件とらいちの事件がひとつに
重なる終盤の謎解きは圧巻。特に逆井邸で起きた三男の三世の大胆すぎる
殺人方法には唖然。
こんな状態で殺人を犯した犯人は、今まで一人もいないんじゃないか?大胆すぎる
犯罪としては、西澤保彦さんの『収穫祭』のアレと、飛鳥部勝則さんの
『堕天使拷問刑』のアレと張るんじゃないかしら。よくこんな方法思いついたな。
お下劣過ぎる殺人方法・・・人に説明出来ないよ^^;
他人に進めるには、ちょっと下ネタが多すぎですが、間違いなく本格ミステリ
としての面白さは抜群だと思います。らいちシリーズは、だんだん本格度が
上がって来てる感じがして頼もしい。次回作も近いうちに読みたいです。

 

池井戸潤ノーサイド・ゲーム」(ダイヤモンド社
現在TBS系で放映している日曜ドラマの原作。今回は社会人ラグビーを題材にした
ヒューマンドラマ。雰囲気は社会人野球を題材にしたルーズヴェルト・ゲーム』
に似ているかな。ゲームつくのも一緒だし(笑)。敢えて狙ってつけたのかも
しれませんけど(社会人スポーツ繋がりってことで)。ただ、人間ドラマとしては
『ルーズ~』の方が深く掘り下げていたような気もするけど。低迷するラグビー
チームを立て直す部分の比重が大きいので。
ドラマを先に観ていたので、当然ながらビジュアルはドラマのまま。主人公の
君嶋はもちろん大泉洋さんのまま読んでました(笑)
でも、ドラマとは大分設定が違う部分もありました。君嶋に子供がいるのは
原作でも一緒ですが、子供自体は全く登場せず。ドラマに出て来た息子の
話はドラマオリジナルなんですね。あと、奥さんも全くストーリーに関わって来ない。
ドラマでは松たか子さんの奥さんが結構いい味出しているので、その辺りは
意外でした。
君嶋の左遷先が違うところも大きい改変ですね。原作では横浜工場ですがドラマでは
府中工場。これは、府中には東芝の工場があるからでしょうね(東芝は社会人ラグビーの強豪)。
府中にはサントリーの工場もありますし、社会人ラグビーを応援している街なんです
サントリーにもラグビーチームがある)。
ドラマの撮影でも協力しているようですし(君嶋が勤めるトキワ自動車の工場は東芝
府中工場で撮影しているらしい)。府中は地元なので、正直嬉しく観ています。
原作が横浜と知って、ちょっとがっかりだったのだけれどね。
もうすぐラグビーワールドカップが始まるので、それに合わせて刊行されたので
しょうね。
ラグビー自体は、私個人としてはそれほど興味があるスポーツという訳でもないのですが、兄が高校の頃やっていましたし、前回のW杯の時の南アフリカ戦からの快進撃には世間と同じように興奮して応援したりもしていて、全く無関心って訳でもないので、
題材的にも面白く読みました。ラグビー素人の君嶋が、低迷を続ける自社のラグビー
チームのゼネラルマネージャーに任命され、試行錯誤しながらも持ち前の戦略術で
立て直して行く過程にハラハラワクワクしました。全体的にご都合主義的な印象を
受けるのも間違いないですが、まぁ、これが池井戸文学ですし、勧善懲悪なところも
お約束ですし。最後にスカッとする展開がないと物足りないのも確かなので、
これはこれでいいのだと思う。読者によってはマンネリと感じる人もいそうですけどね。
原作読んで意外だったのは、ドラマでは君嶋を目の敵にしている営業本部長の滝川の
キャラ造形。最初の方では確かに君嶋と対立関係にあるのだけど、それにはちゃんと
理由もあるし、後半になるとラグビーに対する理解も実はあることがわかってくる。
ドラマだと目の上のたんこぶ的な君嶋に対してあからさまに敵対視している感じだし、
ラグビー部なんて会社の負の財産でしかなく、切り捨てたくて仕方がないって感じが
するんですけども。この辺りは今後ドラマでも反映されてくるでしょうか。
ラグビーのルールをあまりわかっていないので、終盤のゲームのシーンはちょっと
退屈だったけど、アストロズが強くなって、最強チームのサイクロンズと互角の戦い
をする場面は胸が熱くなりました。
ラグビーに対する興味が少し高まったかも。
もうすぐ始まるワールドカップを前に読めて良かったです。
ドラマも今後は原作と比較しながら、より楽しめそうですね。