ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

日明恩/「埋み火-Fire's Out」/講談社刊

第25回メフィスト賞受賞でデビューした日明恩さんの「埋み火-Fire's Out」。「鎮火報」の続編。

老人世帯で失火による火災が起こり、『不運な連続による焼死』が相次ぐ。赤羽台出張所の
消防士・大山雄大は、消火活動の際、出火原因に疑問を持つ。不本意ながら、独自に調査を
始めた雄大だったが・・・。

この人の作品、個々のキャラクターは割りと好きなのですが、惜しむらくは文章が決して上手く
ないこと。全体的にだらだらと長いというか、無駄な文が多くてかなり読み辛い。連続失火の
真相も、現実味がなく、あまりぴんと来なかったです。ただ、口は悪いけど馬鹿正直で責任感のある
雄大や、冷たいそぶりを見せつつも雄大の成長を誰よりも願っている仁藤のキャラなんかはとても
好きです。人情味溢れる作風は嫌いではないので、もう少し書き慣れて物語をコンパクトに纏める
力がつくともっと面白くなるのではないでしょうか。雄大の今後の成長はもっと読んでみたいですね。

それにしても、消防士さんって大変な職業ですね。雄大のように、口では自分の職業を否定
しつつも、なんだかんだ言って完璧に仕事をこなすような責任感のある男はかっこいいと思います。
世の中、口ばっかりで責任感のない大人がなんと多いことか。こういう若者がどんどん増えると
世の中捨てたもんじゃないな、と思えるのですがねぇ。