ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

日明恩「啓火心  Fire's Out」/誉田哲也「武士道ジェネレーション」

どうもこんばんは。
毎日毎日雨で嫌になってしまいますね。極めつけが昨日今日の大雨。栃木・茨城の方、
大丈夫でしょうか。
実は、茨城は私の親戚も住んでいます。特に、結婚して常総市に住んでいる従姉妹がいるの
ですが、避難警報が出たそうで、避難所にいるようです。大丈夫かな・・・。
今年は本当に自然災害が多いですね。『何十年に一度の大雨』という言葉を何度
聞いたことか・・・。なんだか怖くなりますね・・・。早く雨が止みますように。


読了本は二冊です。1冊は今日が返却期限で返さざるを得ず、手元にないのでちょっと
内容が心許ないのですが・・・^^;

では、1冊づつ感想を。


日明恩「啓火心  Fire's Out」(双葉社
久しぶりの消防士シリーズ。第三弾です。主人公の雄大と、彼を見守る仁藤のキャラ
くらいしか覚えていなくて、守って何者だっけ?裕二なんていたっけ?って感じでした・・・
(二人ともめっちゃ重要なキャラなんですけど^^;)。
そりゃー、前作から十年近く経っていたら忘れちゃうよなぁ・・・(言い訳)。
でも雄大のキャラとは不思議なことにそんなに久しぶりって感じがしない。その間に
出た『ロード&ゴー』に出て来たからかな。なんか、それ以外でもどこかで出て来て
いたような。気のせいかな。
基本的にはとても面白く読んだのだけど、久しぶりに読んで改めて思い出したことが、
そういえば、この方(日明さん)の文章って、冗長で周りくどかったんだよなぁ、ということ。
とにかく、説明が長い。久しぶりのシリーズ新刊だからって、ここまで細かく消防士の仕事
内容を説明する必要あるかなぁ?って場面がいくつも。話が進まない、進まない。
確かに、雄大の職場が異動になって、新しい職場は他よりもかなり特殊な土地柄の場所に
建っていることはわかる。いや、わかるんだけど、それを事細かくそこまで詳細に小説で
説明するのはどうなんだろうか・・・ってついつい思ってしまった。リアルでそれが
いいと思う人も多いとは思うんだけど、私は正直余計な説明いらないから、ストーリーを
もうちょっと先に進めて欲しいと思ってしまいました。だって長いんだもん^^;
前半はとにかくそういう説明部分が多かったので、ちょっと中だるみな感じがして
若干イライラしながら読んでいたように思います。ただ、後半は乗って来てさくさく
読めるようになりましたけどね。
雄大のキャラは相変わらずでしたね。消防士なんて、熱血なキャラかと思うでしょうが、
全く違う。それどころか、毎日現場から離れて事務仕事に異動になりたいと願っている
志の大変低い青年です(笑)。あれから何年も仕事を経験して少しは変わっているかと思いきや、
そこは全くそのままでしたね(笑)。でも、なんだかんだで現場に出たら仕事はきっちり
こなすし、訓練もきちんとやる。その辺の変な真面目さも変わっていなくて嬉しかったです。
そして、そんなやる気のない性格のくせに、いざ他人の窮地に立ち会えば、命をかけて
助けようとする。そんなところは、やっぱり生粋の消防士なんだな、と思わせてくれました。
今回は、お気に入りの定食屋で出会った一人の男の窮地を救う話。赤の他人だった筈の男
でも、袖すり合うも他生の縁とでもばかりに、男の命が危ないと知った雄大は、自らの
危険も顧みず男を救いに奔走します。結果、とんでもない災難に遭い、怪我はするわ、
怪しげな職業の男たちに目をつけられるわで、ふんだり蹴ったりの目に。それでも、
雄大は彼の救出を最後まで諦めなかった。その男気には誰もが心を打たれるのではないかなぁ。
恐ろしく頭がキレて、手も早い雄大の親友・裕二は、雄大のことを馬鹿だ馬鹿だと罵倒しますが。
まぁ、それも愛のムチということで。自ら危険に飛び込んで行くタイプの雄大のことを何より
心配しているからなのですよね。こういう友達がいるってほんとに羨ましいですね。
その二人の友人・守のキャラも面白いです。頭もいいし財力もあるけど、銀髪中年の
引きこもりで知りたがり。雄大の仕事の内容が知りたくて知りたくて仕方ないのに、
聞いたら雄大の迷惑になるからと聞かないように我慢している、なかなか健気で可愛らしい
性格です。いや、中年のおっさんなんだけどね^^;私の中では、なぜかビジュアルが  
もののけ姫』歌った米良さんだったりするんですけど・・・(笑)。

でも、今回、私が一番気に入っている仁藤の出番が少なくて悲しかった。個人的に雄大と仁藤の
やりとりが大好きなんだけど。雄大はひたすら仁藤を疎ましく思っているけど、本当は仁藤が
誰より雄大を心配して厳しい言葉をかけていることがわかっている筈。この二人が、いつか
本当に分かり合えて親しい関係になる日は来るのかなぁ。仁藤自身も、雄大に対しては
意地はって厳しくしている感じがなきにしもあらずで、結局二人とも似たもの同士なのかなー
という気がしないでもないのだけど。終盤でのやりとりは、完全に仁藤が雄大に消防士を
続けて欲しいが為に、敢えて今回のことには目をつぶった形ですよね。なんだかんだで、
仁藤も雄大の消防士としての適正を認めているのでしょうね。
ちなみに、仁藤のビジュアルはV6の岡田君です(笑)。映画の『図書館戦争』の堂上教官の
イメージね(笑)。

まぁ、なんだかんだで面白く読んだのだけど。このシリーズ好きなんでね。雄大が今回も
満身創痍だったなぁ。消防士としての自覚がちょっと出て来ていたのが嬉しかったな。
次回作もまた相当先かもしれないけれど、また再会出来るのを楽しみにしていよう。



誉田哲也「武士道ジェネレーション」(文藝春秋
なんとなんとの、シリーズ第四弾!いやー、出たって知った時はめっちゃ嬉しかったです。
ナインティーンをはるかに通り越して、香織と早苗は24歳になっています。つまり、
第三弾のエイティーンから6年後を描いた作品です。
紅白スピンは今回、早苗の結婚を描いているからかな、と思ったんですが、前作までの
記事読み返してみたら、なんのことはない、一作目から紅白スピンだったのね(笑)。
すっかり忘れてた。ついでに、前作までの内容もすっかり忘れちゃってましたけど^^;
でも、そんなの関係なく、とーっても楽しめました。香織と早苗、二人の視点が交互に
出てくる構成も相変わらず。二人でいる場面も、それぞれの立場から読むと違った印象に
なるのが面白い。ああ、やっぱりこのシリーズはいいなぁ、と思いながら読みました。

今回まず特筆すべきは、早苗の結婚!お相手の桐谷道場の沢谷充也さんって、前の作品に
出て来ていたのかな?まーったく、さっぱり覚えていなかったよ・・・。
でも、確かにかっこいいから、早苗が惚れるのも頷ける。それにしても、早苗がここまで
おのろけ全開キャラになるとは。もともと屈託のない真っ直ぐな性格だから、まぁ、
わからなくもないけれど。幸せそうで、良かった良かった、と思いました。ただ、一つ意外
だったのは、早苗が南京虐殺従軍慰安婦問題に関して、外人のジェフに対して持論を展開
するくだり。そういうキャラだとは思っていなかったので、ちょっとびっくり。大学での
出来事がよっぽど心に陰を落としたのでしょうね。おそらく、あの出来事をきっかけに、
悔しい思いを抱えてたくさん勉強したのでしょう。ただ、このシリーズの中でああいう場面が
必要だったのかは少々疑問を覚えずにはいられませんでしたが・・・(ちょっと、あの場面だけ
浮いていたように感じたので・・・)。
香織は、相変わらずの剣道一直線バカ。なんか、彼女はこのままずっと変わらなそうだなぁ。
どこまで行っても剣道のことしか考えていない。でも、それはそれで幸せなのかも。一応、
その剣道バカのおかげで結婚も出来そうですしね(とはいえ、これは今後どうなるか全く
予想できませんが・・・結局別れそうな気がしなくもない・・・)。
桐谷道場の陰の部分は、エイティーンのスピンオフ的作品で語られていましたが、こういう風に
繋がるのだなーと思いました。やっぱり、このシリーズ第四弾が出るのは必然だったんですね。
香織が桐谷の剣道を引き継いで、後世まで伝えて行く。その下地は出来たのではないでしょうか。

レナや美緒、吉野先生といった、脇役キャラの再登場も嬉しかったです。みんな剣道が好き
なんだなぁと改めて思いました。
何より、香織と早苗が近い距離で付き合っているのが嬉しかったな。一時は離れ離れになって
しまっていたから。早苗は相変わらず香織のことを『磯山さん』と苗字で呼んでいるけれど、
やっぱり二人の友情は特別だと思いました。終盤、二人が久しぶりに剣を交える場面は感動
したな。なんだかんだで、二人は唯一無二のライバルなんでしょうね。日明さんの雄大と裕二の
友情関係も良かったけど、こちらの二人の友情関係も全然それに負けてない。どちらも本当に
羨ましいです。

これで完結とはさみしいけれど、とてもとても、清々しい気持ちで読み終えられました。
二人の関係がこれからもずっと続いて行くことが予想出来る終わり方だったからね。
だからもう、十分満足。すかっとしました。読めてよかった。