ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

高木彬光/「人形はなぜ殺される」

第2回目は高木彬光さんの「人形はなぜ殺される」。
うちにあるのは光文社文庫バージョン。
私の愛する神津恭介様シリーズ。この頃の神津先生はまだまだお若いです。
といっても、晩年の作品はあまり読んでいないのですけど。

日本アマチュア魔術協会の発表会での中、手品で使う人形の首が施錠された硝子ケースの中
から盗まれた。その場にいた探偵小説家の松下研三はその夜神津恭介のもとを訪ね、事の詳細を
伝えた。恭介はこの出来事をことの他真剣に受け止めていた。後日、成城で女の首なし死体が
発見された。女の首の代わりに落ちていたのは、盗まれた人形の首であった・・・。これが凄惨な
連続殺人事件の幕開けであった。名探偵神津恭介がこの不可解な事件の謎に挑む。

え~と、大変な名作ですので、読まれた方も多いのではと思うのですが、このトリックには
本当に驚かされました。これは表題の謎が全てですね。「人形はなぜ殺されたのか?」この
謎が解かれる時、読者の大半はその悪魔的なトリックに仰天することでしょう。
全体的に漂う、ぞくっとするような狂気がまたいいのですよ。
神津シリーズでは「刺青殺人事件」よりもずっとこちらの方が好み。

神津先生は、名探偵を絵に描いたような風貌って感じがします。冷静だし、数学の天才だし、
ピアノ弾いちゃうし、完璧な人間っぽく描かれていますね。
イメージはやはり京極堂シリーズの榎さんなのですよね・・・ギリシャ彫刻っぽい顔立ち
とか書いてあるし。というより、榎さんが神津先生っぽいというべきなのでしょうね。
こちらの場合はサトルと違って、性格は全く正反対という感じですが^^;

本書は本格の原点に帰れるような素晴らしい作品です。
未読の方は是非お手に取ってみて下さい。
現代作品では味わえない感動が待っている筈です。