ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

水生大海「お客さまのご要望は 設楽不動産営業日誌」(朝日文庫)

久々水生さん。不動産ものの作品が好きなので、タイトル見て面白そうだな、と

思って予約してみました。

小学3年の時に不可思議な誘拐事件に巻き込まれた設楽真輝。何者かに突然

連れ去られたが、その後なぜか無事に解放された。誰が何の目的でやったこと

なのか、大人になった今でも謎のままだ。そんな真輝は、祖母が営む設楽不動産

に就職し、将来は祖母の後を継ぐつもりで仕事に励んでいるが、なかなか祖母

からは認めてもらえず、厳しい言葉をかけられてばかりだ。ある日、真輝は

カーサホリディ雅というマンションの一室から引っ越す夫婦の退室に立ち会った。

その際に、妻の紬さんが、結婚指輪を無くて見つからないままなのだと話していた。

夫婦は諦めていたようだが、二人が引っ越した後で担当したクリーニング業者から、

結婚指輪らしき指輪が見つかったという報告を受けた真輝は、早速紬さんに

見つかった指輪の写真を送った。すると、紬さんから自分のものだとの返信が

あり、意気揚々と二人の新しい新居の郵便ポストに届けて来た。しかし、これが

トラブルの発端となってしまい――。

家族経営の地域密着型不動産屋さんを舞台に、4つの物語が収録されています。

どのお話に登場する客も、わがままで困った人揃い。それ、不動産屋に言うこと

じゃなくない?ってことばかり、真輝に訴えて来て、読んでいてかなりイラっと

させられました。まぁ、実際こういう困ったお客がたくさんいるんだろうなぁ。

不動産屋あるある満載って感じ。うちの相方は結構いろんな仕事を転々として来た

人なんですが、その中に不動産関係にいた時期もあって、ちょいちょいその当時の

経験を振り返って、やっぱりいろいろ大変だったと言っていたのを思い出し

ました。

一話目の『その残置物はわたしのじゃありません』は、退去した部屋から見つかった

指輪にまつわるトラブル。妻のものではない指輪が見つかったことで、夫婦仲に

亀裂が入るきっかけになってしまう。知らない指輪が部屋に持ち込まれた真相は

ちょっと拍子抜けだったかな。こういうことってあるものなんですかねぇ。

二話目の『騒音を訴える俺がそんなに悪いのか』は、タイトル通り、騒音に纏わる

住民トラブル。この手の騒音トラブルも、あるあるですよねぇ。私もお隣さんの

子供が小さい頃に、お隣さんが昼から夜にかけてお友達をたくさん読んでバーベキュー

したことがあって、さすがにちょっと辟易した経験がありますからね。まぁ、お隣

さんの場合は、年に2,3回レベルでしたし、それくらいなら全然我慢出来る

程度でしたけどね。これが頻繁にあったら、さすがにちょっとノイローゼになる

かもしれないなぁと思いましたっけ。

三話目の『事故物件なんて冗談じゃない』は、霊感の強い顧客から、事故物件だけは

紹介しないでくれと頼まれ、ある物件を紹介した真輝。もちろん、過去に事故など

一度も起きていない物件を紹介して、本人にも気に入ってもらえたのだが、後日、

金縛りに遭った、どういうことだ、というクレームが入り――というお話。

クレーム客の言動がどんどんエスカレートして行くところにぞっとしました。

思い込みが激しい客にも困ったもんだ。挙げ句の果てに失火騒ぎとは。でも、無人

部屋から物音が聞こえた原因は、他の店子の困った行動が原因だった訳で。身勝手な

住民ばっかりでうんざりしました。

四話目の相続税そんなの払えねえんだよ』は、自分の息子が相続したマンションの

相続税が払えないから売却したいという母親からの依頼にまつわる顛末を描いたお話。

この作品が、冒頭に出て来た真輝の子供の頃の誘拐事件に繋がって行きます。三話

目まで読んだ時点で、冒頭の誘拐事件の話が全く出て来ておらず、一体どうなって

いるのかな、と思っていたので、ラストでちゃんと繋がって溜飲が下がりました。

いろいろツッコミ所もありましたけども。読書メーターの感想読んでいたら、

どなたかが、あだ名の『しーま』、普通被らないだろ、とツッコんでいましたが、

確かにその通り、と思いました(苦笑)。どっちかの名字が島とか、どっちかの

名前が椎真(馬)とかならまだリアリティあったかもしれませんけどねぇ。名字と

名前の字一字づつとって『しーま』が被るってのは、さすがにちょっとご都合主義的

すぎるかな、と思いました。

迷惑な客ばかりが出て来るので、かなりイラッとさせられる場面が多かったけど、

不動産あるあるものとしては興味深かったし、面白かったです。

寺地はるな「カレーの時間」(実業之日本社)

はじめましての作家さん。確かこれもブランチで取り上げられていたのと、新着

図書の作品紹介文が面白そうだったので予約してみました。ブロ友さんのところで

何度かお見かけした作家さんだしなーとも思いましたしね。

思った内容とは大分違っていましたが、面白かったです。潔癖症で気の弱い青年・

桐矢は、母や伯母たちから、心臓病を患う祖父と同居してほしいと頼まれる。ゴミ

屋敷のような自宅に住む祖父のことが、昔から苦手な桐矢は速攻で断ろうとしたが、

様子見で訪れた祖父の家の裏に住む生田さんと知り合いになり、彼女目当てでつい

同居を承知してしまう。しかし、同居を始めたものの、頑固な祖父と気の弱い桐矢

はことごとく相性が合わず、衝突ばかり。祖父の高圧的な言動に嫌気が指してばかり

の桐矢だったが、なぜかカレーを食べる時だけは穏やかな時間が流れるのだった。

そんな祖父には、過去に誰にも言えない秘密があった――。

始めは、傍若無人な言動を繰り返す祖父にムカつきっぱなしでしたが、だんだん

祖父の過去が明らかになるにつれて、憎めない人物のように思えて行きました。

なんとなく、義理の父と被るところもあって、親しみを覚えなくもなかったし(

義理父、結構クセがある人なんで^^;)。ザ?昭和の時代の亭主関白男って

感じですよねぇ。でも、あのゴミ屋敷は勘弁してくれと思いましたけど・・・潔癖症

の桐矢が、いくらプロに掃除してもらったからといって、よくあそこに一緒に住む気

になったなぁ、と驚かされました。恋の力はそれだけ偉大ということなのか。

といっても、桐矢の恋に関しては、思った程には盛り上がらず。途中ほとんど出て

来なかったですもんね。ラストで唐突に桐矢の恋心に決着がついて、ちょっと

拍子抜けだった。もうちょっとエピソードあっても良かったのでは・・・。

祖父の過去と、家族に対する本心を知って、大分見方が変わりました。祖父は、

ただただ、不器用な人なだけだった。その不器用さを理解してくれる家族がいなかった

のが、残念だった。もっと若いうちから、せめて誰か一人でも理解してあげられる

人がいたら、あんな風に孤独な一人暮らしをしなくても済んだかもしれない。

まぁ、それは自業自得な訳ですけどね。変なプライドが邪魔して、真実を伝える

ことが出来なかったのだから。でも、桐矢がそれをわかってあげられて良かった。

終盤で、桐矢が、桐乃(祖父の別れた妻)の息子(養子だけど)に対して、祖父の

為に怒って突きつけた言葉が胸を打ちました。桐乃が実際娘たちのことを

どう思っていたかはわかりませんが、例え心から愛していたとしても、彼女たちを

捨てて新しい男の元へと走り、二度と会おうとしなかったのは紛れもない事実です。

身勝手な振る舞いだったのは間違いないのですから。真実はその人にしかわからない

とはいえ、あれだけ祖父が娘たちに会ってあげて欲しいと頼んでいたのだから、

一度くらいは会う機会を設けたら良かったのに。結局、桐乃の方も、真実を告げて

娘たちに軽蔑されるのが嫌だったのかもしれない。合わせる顔がないというのは

口実だったのかも。

北野丸さんと祖父の若かりし頃のエピソードにもぐっと来ました。なんだかんだで、

祖父は口下手なだけで、お人好しなんでしょうね。

要所要所で出て来るカレーはどれも美味しそうでした。桐矢が作るカレーも、

祖父のカレーも。祖父がずっと働いて来たピース食品のレトルトカレーも。

カレーって、いろんなアレンジが利くし、だいたい何入れても美味しくなる。

うちもカレーは結構拘って作る方。特に、ドライカレーは月一で大量に作って、

一週間くらいいろんなアレンジで食べ続けたりします(笑)。ご飯、ナン、

チャパティでシンプルに食べて、その後トッピングで納豆やチーズ入れたり、

カレードリアにしたり、ピザのソースにしたり。時間があれば焼きカレーパン。

そして、最後残ったやつは漏れなくカレーうどんになります(笑)。

スパイスもいろいろ使うし、隠し味もいろんなの入れてみますね(チョコ、

コーヒー、みそ、甜麺醤バルサミコ酢、いかの塩辛の汁(元TOKIOの長瀬君の

真似)、その他、その時の気分によっていろいろ。だから、毎回、同じ味に

ならないという(でも、いつも美味しい!うちのカレーは一期一会なのだw)。

日本人なら、カレー嫌いな人ってそうそういないと思うなぁ。

祖父と桐矢が、北野丸さんの事件の解決や、カレーを食べることで少しづつ距離

が縮まって行くところが微笑ましかったです。

それだけに、ラストは切なかった。でも、祖父にとっては、最後に大事な大事な

孫と一緒に暮らせて良かったんじゃないかな。

カレー作りたくなっちゃいました。面白かったです。

 

 

 

コロナ療養記

どうもみなさま、お元気でしょうか。

 

タイトルに驚かれた方もいらっしゃるでしょうが、一部の方にはお伝えした通り、

先日ワタクシ、ついにコロナに感染してしまいました。

現在ほぼ後遺症もなく完治しておりまして、すでに社会復帰もしておりますが、

療養記を上げて欲しいと要望された方がいらっしゃいましたので、どんな経緯で

10日間を過ごしていたのか、その療養過程を記して行きたいと思います。

全国各地で感染爆発している現在ですので、何かの参考になれば、と思う次第で

あります。各自治体によっても対応が異なったりすると思いますので、あくまでも

私が住む東京F市のいちケースだと思って読んでいただければ幸いです。

 

まず、一番始めに感じた違和感は、喉の痛みでした。療養中、いろんな方の闘病記

を読んだりYou Tube動画を観たりコメントを読んだりしたのですが、多くの方が

私と同じように喉の刺すような痛みから始まったとおっしゃっていますね。

その時はまだ、一晩中エアコンを効かせた部屋にいたから、喉がイガイガするのかな、

と思う程度で、その日は普通に過ごしました。その後一日様子を見て、さほど

体調は変わらないものの、少しづつ喉の痛みが強くなって行きました。その日は

相方が夜勤でいない日だった為、なんとなく不安に思いつつひとりで就寝。で、

翌日の朝、6時くらい。普段必ず朝一で基礎体温を計っている為、その日も計って

見ると・・・37度7分。これは、ヤバイかも。身体もダルい。一階に降りて、

食事は普通に摂れたものの、恐る恐るもう一度体温を計ってみると、やっぱり

同じくらいある。なんとなく、咳も出て来た。ヤバイ、ヤバイ。どうしよう、と

思いながらも、まずネット検索して、発熱した場合の対処法を調べる。すると、

発熱している場合は、PCRセンターや普通の病院に行ってはいけないという。

まずは、東京都の発熱相談センターなるところに電話をしろ、と書いてある。

ありがたいことに、24時間対応。そこに電話。つながらない。しつこくかける。

何度も何度もかけているうちに、ついに繋がり、担当の女性に今の症状を訴える。

すると、最寄り駅を聞かれ、自宅近くの発熱外来のある病院を3つ教えられ、

とにかくそこにかけて予約を取って、診察してもらって下さい、と言われる。

その時点で6時半くらいかな。その後、職場の人に連絡して事情を話して休みを

もらい、一番受付時間が早かった病院(8時半からのところが一番早かったので、

そこにしました)に焦点を当て、ひたすら電話をかけまくりました。いやー、

これが本当に繋がらない。

大変でした。でも、しつこくしつこくリダイアルをかけて、なんとか30分くらい

かけて繋がりました。ラッキーだったと思う。しかも、初診だったので電話に出た

看護師さんはかなり渋い反応。でも、めげずに東京の発熱外来センターから紹介

されて!!ってのを強調していたら、渋々ですが、予約を受けてもらえました。

諦めないでお願いして良かった、と心底思いましたね。PCR検査も、一日受けられる

数が決まっているから、当日かけて当日受け付けてもらえるっていうのは、かなり

恵まれたケースだったと思う。ありがたかったです。

で、予約が10時45分からだったので、歩いて病院へ。コロナでPCRを受ける

人は、一般外来の方と一緒にならないよう、階段で上がって来て下さいと言われま

ました。私以外にも、ゲホゲホしてる人が次々と訪れてました・・・これ、自分が

陽性じゃなくても、この空間にいるだけで間違いなく感染するな、と思いました。

一応中ではパーティションみたいなもので仕切りはあるものの、同じ空間にいる

ので、あんまり意味ないって感じで。多分、陽性の確率も高いから、その辺りは

仕方がないのでしょうね。

で、PCR検査(鼻の粘膜をつつくやつじゃなくて、唾液で検査する方でした)を

して、軽く先生に問診してもらって、隣の調剤薬局で薬もらって帰りました。

混んでいるため、陽性判断は翌日の夕方~夜になると言われました。

家に帰って、相方に事情をメールしました。仕事中はメール見れないので、反応は

なかったですが。帰り際に見て、かなりショックを受けたようでした。

で、相方が帰って来て、その時点ではまだ陽性判断はされていないものの、陽性

だった時のことを考えて、とりあえず部屋を分けて隔離生活をしようということに

なり。普段使っていない洗濯干し部屋を私の部屋にしました。相方は夜勤明けで次の日

から3日間の休みに入る日だったので、ちょうど良かったといえばちょうど良かった。

で、翌日から部屋に閉じこもる生活が始まりました。二階は日当たりが良い為、

熱中症にならない為にも、24時間エアコンはつけっぱなし。で、その日の午後

3時くらいかな、思ったよりも早めにお医者さんから連絡が来まして。陽性だと。

その時点で、熱は37度後半~38度を行ったり来たり。あとは咳と喉の痛み。

食事はすべて相方が用意してくれまして、出来たら部屋のドアの前に置いておいて

もらい、相方が一階に降りたらドアを開けて取る、という形を取りました。

トイレも二つあったので良かったです。二階のトイレって、引っ越して来てから

ほとんど使ったことがなかったのですが。お風呂はシャワーのみ。いろいろ情報

調べたら、お風呂や洗濯はそんなに神経質にならなくても良い、とのことだった

ので、普通に使ってました(一応、お風呂は使った後で石鹸で洗面器とか椅子

とか洗ったりはしてましたけど)。

熱はだいたい陽性判断出てから三日間くらいで収まりました。でも、熱が収まった

後で、問題になったのが、まず嗅覚障害。匂いが全くわからなくなりました。

その後一日か二日して、今度は味覚がおかしくなりました。甘いとか苦いとか

しょっぱいとか、それくらいの判断は出来るものの、舌がしびれたようになって、

感覚が全くなくなって。これが一番つらかったかもしれない。一番苦味を強く

感じましたね。コーヒーの匂いがわからず、苦味だけを感じるというか。

相方が一生懸命作ってくれた料理が美味しく食べられず、残さざるを得なかった

時が一番しんどかった。食べようと頑張っても、喉を通らなくて。料理を美味しく

食べてもらえず残される悲しさは自分でもよくわかるから。出来るなら頑張って

完食したいのに、それが出来なくて。本当に申し訳なかったです。まぁ、食べ

られなくなったのは一日くらいで、その後は回復に向って、食欲も戻ったのです

けどね。

身体的に辛かったのは、療養始めて5日目くらいまでかな。そこからは、身体は楽に

なっても、精神的にきつくなりました。何せ、すべての家事を相方に全部やって

もらわなきゃいけない。料理も洗濯も掃除も、バラの水やりや、めだかのご飯まで。

それにプラスして感染対策もしなければなりません。精神的にキツかったと、

後で話してくれました。そりゃそうだよね・・・。体重が2キロくらい痩せたそうで。

結局陽性が出た為、相方は濃厚接触者となり、仕事も休まなければならなく

なったし。何ひとつ出来ないで迷惑ばかりかける自分が嫌で嫌で仕方なかったです。

よく、芸能人が感染して謝るじゃないですか。誰もが感染するんだから、謝る必要

ない、と言う人もたくさんいるし、私もそう思ってたけど、いざ自分が感染

すると、謝りたくなる気持ちがすごくよくわかりました。というより、もう、

謝るしか出来ないんです。ただただ、感染してしまった自分が情けなく、申し訳

なくて。ほんと、コロナでうつになる人がいるっていうの、わかりましたね。

 

そうそう、陽性判断が出て翌日くらいに、市の保健所からスマホにショートメッセージ

が来ました。そこで、ハーシスというスマホで健康観察が出来るサイトの知らせ

が来て、自分のIDを打ち込んで登録し、毎日健康状態を入力していました。

あと、他にもパルスオキシメーターの貸出と配食申請のお知らせも来たので、一応

その時点で相方が陽性になる可能性も考えて、両方申し込んでおきました。

陽性判断が出た時点で、相方の抗原検査キットも申し込んだのですが(発症日を

0日として、そこから二日目、三日目に濃厚接触者は抗原検査をしなければ

いけない為)、そちらはなかなか届かなかったです。しかも、二回分必要なのに、

一回分しか結局届かず、以前に万が一の時を考えて買ってあった研究用のを使用

せざるを得なかった(抗原検査キットは二種類あって、医療用と研究用があり、

研究用の方はあまり精度が高くないのです)。

私の住む市も感染者が多い地域なので、大変なんだろうな、と諦めましたが。

パルスオキシメーターと配食は、申し込んだ翌日か翌々日には届けてもらえました。

パルスオキシメーターの数値は、95~7を行ったりきたりでした。

自治体によっては、一週間経っても届かないということもあるそうなので、

早めに対応してもらえたのは、本当にありがたかったです。

 

一日中小さな部屋に閉じこもっていなければいけないので、熱が下がった後の

療養期間は、運動不足が一番深刻だったかもしれないです。定期的に立ち上がったり、

朝と夜にYou Tube観ながらストレッチとかしてましたけど。

やることもないので、ひたすらYou Tubeで動画観まくってましたね。本は集中力が

続かないので、あまり読めなかった。あとは、タブレットでテレビ観たり(Wi-Fi

でテレビが観れるようにしてある)。

でも、すぐ疲れちゃうので、午後はずっと寝てることが多かったな。

 

今は体調もほぼ元に戻りまして、元気です。少し喉のイガイガは残っていて、

たまに咳き込むこともあるのですが。日中はこまめにのど飴舐めるようにしてます。

味覚嗅覚も戻りました。これが一番心配だった。後遺症が残ったらと思うと怖くて。

匂いがわかるって、本当に大事なんだな、としみじみ思わされました。これから

秋バラの季節になるのに、バラの香りがわからなかったらどうしようと。嗅覚

がなくなって何日かして、紅茶の香りがわかった時は感動したなぁ。

 

普段、基本的には料理はほとんど私が作っているので、相方はすごくすごく

頑張ってくれました。栄養バランスも考えてくれて。ありがたかった(涙)。

これ、一人だったらほんとに、心折れていたかもしれないです。一人暮らしの

方は、本当に大変だと思う。特に、入院も出来ずに自宅療養の方は。

療養中は、両親からも毎日電話が来ました。心配でたまらなかったそうです。

老齢の親にも心労をかけてしまった・・・(反省)。

 

相方が作ってくれたご飯一例。ロコモコ丼とシチューその他。

 

ピリ辛鶏ハム、サラダ、モロヘイヤ納豆他。

 

 

こちらは自治体からの配食。スポーツドリンクがすごく重宝しました。

 

途中、体調不良と自己嫌悪で心が折れて落ち込んでいる私を励まそうとして

くれたみたいで、誕生日も近かったので相方がアップルウォッチをプレゼント

してくれました。

 

・・・神か!と思いました・・・。ここまでしてもらって、

もう死ぬのかな、自分とも思いました^^;

 

アップルウォッチ。iPhoneと連動しているので、めちゃくちゃ便利です。

メールも読めるし、電話も出来るし。歩数計や心拍数なんかも測ってくれます。



結局、相方は二日続けて陰性が出たので、一足早く社会復帰出来ました。

徹底して家庭内隔離したのが良かったのかも。その後も体調に変化ありませんし。

それが唯一良かったことでしょうか。相方に感染するのが一番不安だったので。

家の中でもマスク必須でしたし、絶対に顔を合わせないようにしてましたし。

同じ家にいるのに、顔を合わせることなく、意思疎通はスマホのショートメール

でやり取りしてました。

 

今回のことで、感染は本当に誰にでも起こり得るものなんだな、と痛感させられ

ました。実は、自分が感染するとは本当に全く思っていなかったんですよね。

風邪すらここ何年もひいてませんでしたし。インフルにかかったこともないですし。

どこで感染したのか、全くわからないです。それくらい、どこにでもウイルスは

いるということなのかも。

コロナ禍が始まって、健康の大事さは常々感じて来たけれど、こうして自分が

感染してみて、改めて健康の大事さありがたさを痛感しています。

みなさまも、どうか、健康第一で、お身体大事にして下さい。

 

長々と駄文失礼致しました。

読んで下さった方、ありがとうございました。

近藤史恵「筆のみが知る 幽霊絵師火狂」(角川書店)

新町の大きな料理屋「しの田」のひとり娘・真阿は、胸の病のせいで一日の大半を

自室で寝て過ごす毎日だ。父も母も「養生していれば治る」と言うが、十二の年

に病を言い渡されて二年、全くよくなる気配もない。真阿自身は、そう長く生きられ

ないのではないかと諦めている。真阿の心の中は空っぽだった。そんな中、「しの

田」の二階に、有名な絵師・火狂が居候することになった。怖い絵を描くという

その男のことが、真阿は気になって仕方がない。男には、目に見えないものが

見えているようなのだ。男が描く絵を巡って、不可解な出来事が次々と起こって

行き――。

時代は明治初期。雰囲気は完全に江戸時代っぽいのに、東京とかが出て来るから、

最初これってどういう時代設定なんだろ?と思いながら読んでました。江戸から

明治に変わったばかりで、まだところどころにその名残が感じられるくらいの

頃のようです。

料理屋のひとり娘・真阿と、居候の絵師興四郎(雅号が火狂)との師弟関係が

とても好きでしたね。興四郎が描く絵には曰くのあるものが多く、なぜか

その絵を巡って恐ろしい出来事が起きる。独特の世界観がとても好みでした。

幽霊画という題材もいいですしね。興四郎の絵ってどんな感じなのかなーと

想像しながら読んでました。河鍋暁斎みたいな感じかな?とか。おどろおどろしい

けど、つい観たくなってしまう、という不思議な魅力がありそうで。

興四郎に構ってほしい真阿の健気さが何ともいじらしくて、可愛らしかった。

興四郎も、慕ってくれる真阿のことは可愛いみたいだし。もちろん、居候させて

もらっている家の娘さんだから丁寧に接しなければいけないというのもあるには

あるでしょうけど。真阿の勘の鋭いところには一目置いてる感じもありましたしね。

絵の謎解き部分はさほどのミステリー色はないけれど、独特の幽玄な世界観が

あって、非常に好みでした。絵に込められた思いは、愛情もあれば怨恨や憎悪も

あり、それぞれに惹きつけられる物語ばかりでした。

興四郎がいつか再び自分の前からいなくなってしまう人だとわかっている真阿の、

切ないけれども潔い諦めの気持ちが切なかった。

それでも、もう少しだけ興四郎の居候は続きそうなので、また続きが読めると

いいなぁと思う。

そういえば、初期の近藤さんの作風って、こんな雰囲気のものが結構あったの

ですよね。

最後まで読んで、掲載が『幽』だったと知って、ああ、だからこういう作風

なのか、と妙に納得しちゃいました。確かに『幽』っぽい内容(笑)。

一作の短さもそうだしね。

とても好みの一作でした。

 

辻堂ゆめ「二重らせんのスイッチ」(祥伝社)

これは自分がなぜ予約したのかよく覚えてないのですが、多分ブランチ辺りで

紹介されてて興味持ったからだと思います。多分、はじめましての作家さん。

突然、何の身に覚えもない強盗殺人容疑で逮捕されてしまった主人公、桐谷雅樹。

無実を主張するが、警察で見せられた防犯カメラに写っているのは、紛れもなく

自分と同じ顔をした男だった。しかも、犯行現場で採取されたDNAは雅樹のものと

一致しているという。いくつもの証拠を見せられ、雅樹は誰かにはめられたのだと

主張するが、認めてもらえず、雅樹自身が自分のことを信じられなくなりそうに

なってしまう。しかし、そんな矢先、偶然雅樹が日頃通っていたカフェに犯行当日

も訪れていたことが判明し、アリバイが証明された。晴れて自由の身となった

雅樹だったが、両親が隠していたある事実を知ってしまい、更なる受難が降り

かかることに――。

絵に書いたような順調な人生を歩んでいた男が、ある日突然身に覚えのない重犯罪

の犯人として逮捕されたことから、日常が激変して行く話。

タイトルで完全にネタバレしてますよね、コレ。あと、表紙もそうだし。まぁ、

作者としても、そこは想定内ではあるんでしょうけど。だいたい、同じ顔で

同じDNA型の男が犯人って言われたら、考えられるのアレしかないですもんねぇ。

本格ミステリだと禁じ手の一つだと思いますけど、別に本格ミステリって作品じゃ

ないですしね。

前半は理不尽すぎる展開ばかりが続くので、ちょっとイヤ~な気持ちになりつつ

読み進めて行ったのですが、だんだん物語は意外な方向へ。主人公の雅樹があまり

にもお人好し過ぎないか?また騙されてるんじゃないのか?と思いながら読んで

ました^^;

雅樹とジェイクの心が少しづつ通じ合って行くところが良かったですね。ただ、

ジェイクは得体の知れないところがあるので、ずっと裏があるのでは、と疑って

かかってましたけどね。

終盤は二転三転し過ぎて、さすがにちょっと辟易したところもありました。で、

結局ジェイクはいいヤツなの?悪いヤツなの?と、最後までハラハラさせられました。

強盗殺人で奪った二千万の行方に関しては、多分途中に出て来たアレが伏線になる

んだろうな、と予測はしていたので、驚きはなかったです。でも、殺人はダメだ

けど、こういう使われ方なら納得は出来るかな、と思いました。

ラストの後日談にはほっこりしたけど、本編がハードな内容だっただけに、あまり

にも平和なシーン過ぎて、なんか若干とってつけたような不自然さを感じて、

違和感がありました。このシーンがあるから、読後感は良かったのですが・・・。

本編との落差がありすぎてね・・・。

あと、恋人の奈美がいい子過ぎて、こんな女性、本当に存在するのか!?と思い

ました^^;どうも、全体的に人物造形にリアリティを感じなかったんですよね。

まぁ、こんなにいい子は他にいないと思うので、雅樹には彼女を幸せにしてあげて

ほしいですけどね。

面白かったのは面白かったんだけど、何となく腑に落ちないものも感じるような

ストーリー展開だったような気も。良く出来ているといえばそうなのですけど、

ちょっといろいろ盛り込み過ぎたというか。

どうも、やっぱりこのミス系の作家とは根本的に合わないようなところがあるん

だよなぁ(辻堂さんはこのミス大賞優秀賞受賞作家だそう)。

宇佐見りん「くるまの娘」(河出書房新社)

『推し、燃ゆ』芥川賞を受賞された宇佐美さんの受賞後一作目。実は『推し~』

は読んでません。予約多くって諦めたのもあるし、他のブロガーさんの感想読んで

たら、自分好みっぽくないなぁと思ったから。本書は、王様のブランチで取り上げ

られていて、気になったので借りてみました。

タイトルから想像していた話とは限りなくかけ離れていましたねぇ。まさか、

こんなに重い話だとは思わなかった。なるほど、芥川賞作家だなぁっていう内容と、

文章。多分、文章はとても上手いのだと思う。表現力もあるのでしょう。

ただ・・・私にはあまり面白いと思えなかったな。こういう、日常を切り取った

淡々と進んで行くタイプの作品は、エンタメやミステリを好む私の守備範囲とは

かなり離れていて。いや、そういう作品が好きな場合もあるんだけど、この方の

文章の書き方が、あんまり私好みではなかったというか。純文学風?表現が少し

回りくどいというかね。そこが好きな人もたくさんいると思うんだけども。あくま

でも、私好みではなかったということです。

脳梗塞の後遺症で性格が変わってしまった母親のせいで、少しづつ狂わされて

行った家族の物語。リアリティはあると思う。浮き沈みが激しい母親に振り回されて、

どんどん自分を見失って行く主人公。父親もDV気質で気分屋だし、兄はそんな家族

に愛想をつかせて出て行き、疎遠状態。主人公自身も、そんな家族に少しづつ心を

蝕まれて行って、学校にいけなくなってしまった。弟は優しい性格だったけれど、

壊れた家族から逃げるように、結局は高校受験の後は祖父母の家に行ってしまった。

そんなバラバラな家族が、父方の祖母の葬式で会することになり――。

ずっと息苦しさを感じながら読んでました。気分の浮き沈みが激しい母親や、

気に入らないことがあると暴言を吐く父親、どちらにも嫌悪しか覚えなかった。

でも、どちらの性格も、その原因となるものがある訳で。母親は脳梗塞、父親は

実の母親からの酷い仕打ち。もし、それらがなかったとしたら、もともとは

生真面目で優しい性格だったかもしれず。同情すべきところもあるんですよね。

かといって、現状、かんこや他の子供たちに対する態度はまともとは言えず。

家族がバラバラになってしまうのも仕方がないのかな、と思わされました。家族の

形は千差万別とはいえ、こんな形は嫌だなぁ。主人公のかんこはかんこで、少し

他人への配慮が欠ける面もあって、かつての弟への暴言には辟易しました。悪気なく

酷い言葉を投げつけるのが一番始末に負えないんですよね・・・。それも、箍が

外れた両親に育てられてしまった弊害なのかもしれませんが。

終盤、かんこがくるまの中で寝泊まりするようになるところは、あまり理解

出来なかったな。単純に逃げ出したかったのかもしれませんし、両親に対する

抗議の気持ちだったのかもしれませんけど。タイトルの「くるまの娘」って、

こういう意味だったんだ、とそこでようやく腑に落ちましたけどね。

ラストで明らかになる、父親の実母が彼にした仕打ちは、あまりにも酷いと

思いました。その事実だけでも、父親がどれだけ幼い頃から差別されて来たのかが

伺い知れて、胸が塞がりました。だからといって、自分の子供にまで虐待めいたことを

するのは絶対に間違っているとは思うけれど。彼もまた、実親による被害者だった。

その事実を知って、打ちのめされる気持ちで本を閉じました。かんこの家族の

崩壊は、そこから始まっていたのかもしれません。

重苦しく、やりきれない気持ちだけが残る読後感でした。

 

 

今野敏「任侠楽団」(中央公論新社)

任侠シリーズ最新作。今回のテーマはオーケストラ楽団。ただ、今回阿岐本組が

任されたのは、楽団の立て直しではなく、楽団員同士の内紛の仲裁。音楽に

造形が深い訳でもない代貸の日村は、不安で仕方がない。しかし、オヤジの言う

ことには従わなければならない。相変わらず、心配性の日村さんが阿岐本組長に

振り回されるところが気の毒になりつつ、可笑しかったです。なんだかんだ、

音楽の素晴らしさには素直に感動しちゃえる人だし。毎回、不器用な性格で

心配性な割に、意外と順能力もあるところが日村さんのすごいところだと思うな。

ただ、内紛を鎮めることが主目的なだけに、ちょっといつもより痛快感は控えめ

だったかな。一応、マエストロが襲撃されるという事件も起きるけれど、大した

怪我でもなかったし、そちらの解決も引っ張った割には、あっけなかったしね。

今回、阿岐本組長とタッグを組んでマエストロ襲撃事件を捜査する碓氷刑事ですが、

なかなか面白いキャラだなぁと思っていたら、どうやら他のシリーズに登場する

キャラクターのようですね。今野さんの作品は、ほとんど任侠シリーズと隠蔽

捜査シリーズしか読んでないから、全然気づかなかった^^;きっとファンなら

嬉しいリンクなんでしょうね。

途中、オーケストラを率いるマエストロと、ジャズのビッグバンドを率いるバンド

マンが相互に尊敬し合うシーンは胸アツでした。それぞれの音楽性を受け入れる

ことで、自らの音楽も広がって行くものなんでしょうね。才能ある人は、同じように

才能ある人間のことを認める心の広さがあるのでしょうね。そこで反発するような

人間には、いい音楽なんか作れないのかも。まぁ、大して音楽の知識のない私が

言っても、何の説得力もないですけどね・・・^^;

内紛の方も襲撃事件の方も、一気に解決しちゃえる阿岐本組長はやっぱりすごい人

ですね。ヤクザの親玉だけあって、いろんなことが見えているのでしょうか・・・。

振り回される日村さんは可哀想だけど、なんだかんだで組員たちのことも

きちんと見てくれてるし、いい親分だな、と思います。日村さんも、今回の

依頼になかなか絡ませてもらえない弟分たちに配慮して、現場に連れて行ったり、

調べ物を頼んだりと、彼らが少しでも活躍出来るように気を使ってあげられる

ところがいいアニキだな、と思わされました。

ちょっといつもより痛快度は低めだけど、今回も楽しく読める一作でした。次は

どんな依頼を遂行するのやら。阿岐本組長の気まぐれがいつ発動するのか、

楽しみに待っていたいと思います。