ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

似鳥鶏「七丁目まで空が象色」(文春文庫)

f:id:belarbre820:20200208190708j:plain

動物園シリーズ第五弾。今回は、至ってシンプルな内容。マレーバク舎新設に

当たって、飼育方法等を学ぶために山西市動物園にやって来た、桃本たち

お馴染みの楓ケ丘動物園メンバーたち。研修を受けていると、桃本にとって

意外な人物が目の前に現れた。動物園の飼育員になった従弟の誠一郎だった。

再会を喜ぶ二人だったが、園内ではとんでもない事態が勃発していた。飼育舎

から、象が脱走したというのだ。園内を抜けて、街中へと歩みを進める象は、

飼育員の指示も無視して、ひたすら歩み続ける。象には、明らかに何らかの

目的があるようなのだが――。

街中に脱走してしまった象を、ひたすら追っかけて行く、といのが今回の

大筋。その象の脱走の裏には、ある仄暗い陰謀が絡んでいたりもするのですが。

象が暴走しないように、付き従って歩くのは、桃さんの従弟の誠一郎君。

飼育員になってまだ経験も浅いけれども、冷静に象の状態を観察して、興奮

させないようにゆっくりと寄り添うところが良かったです。良い子ですね、

誠一郎君。桃さんとの関係も良かったですし。動物園の飼育員さん同士ですから、

今後のシリーズにも登場してくれそうですね。動物園の飼育員さんは、違う

動物園でもお互いにライバル視することはあまりなく、仲間意識が強いと書かれて

いましたしね。繁殖関係で動物が貸し借りされるケースも多いですからね。

今回は、なんといっても女性陣二人がかっこよかったですね。まぁ、鴇先生は

いつもクールでかっこいいんですけども、七森さんがあんな一面を持っているとは、

驚きました。○○○で颯爽と(?)誠一郎君の前に現れるシーンは度肝を抜かれました。

これは、誠一郎君でなくても惚れるぜ・・・!ただ、折り紙折ってるだけのか弱い

女子じゃなかったのね(←失礼)。ちょっと、印象を改めねばならないと思わされ

ました。でも、暴走しすぎて警察に一番叱られてしまうという(苦笑)。見た目は

可愛らしいお嬢さんなんだから、あまり無茶はしないでもらいたいですけどね。

ちなみに、服部君は相変わらずの桃さんオタクで、変態シーン満載で、そこも

楽しめました(笑)。

象を脱走させた犯人は意外な人物でした。登場からあんまり好感持てるとは

思ってなかったけど、まさかあんな裏の顔を持っているとは。完全に騙されてた

なぁ。

終盤、犯人と桃さんたちが対峙する場面が、なぜかコアラ舎の中だったのが

個人的にはかなりツボでした。コアラフェチなんでね、私(笑)。犯人との緊迫

したシーンの筈なのに、のんきに寝てるコアラが可愛らしくって。事件の背景を

述べる小難しい話をしている筈なのに、ガラス越しのコアラがマイペースに行動

するものだから、和む、和む(笑)。

私がその場面にいたら、事件なんかどうでも良くなってコアラを観察しちゃう

だろうなぁ(笑)。結構背景には重いものが隠されてたんですけどね(苦笑)。

あとがきは相変わらず暴走している妄想が面白かったです。途中何言ってるのか

わからなくなってきて、頭が『?』で満たされましたが。まぁ、これはいつもの

ことなんで。似鳥さんって、あとがき書くために作品書いてるんじゃないよな、

まさか・・・。