ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

真梨幸子「殺人鬼フジコの衝動」(徳間文庫)

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図書館休館中の為、自宅本棚から選んだ次の本はコレ。随分前に姉に借りたまま

積ん読状態だったので、これを機に読むことにしました。真梨さんの作品は

前に一作か二作読んだきりでしばらくぶり。ほとんどの作品がイヤミスより

と聞いているので、なかなか手が出なかったんですよね^^;

本書は確か映像化もされて話題になりましたよね。姉もその時に買ったんじゃ

ないかな。ちなみに、画像は限定版になってますが、読んだのは普通バージョン

です。限定版は書き下ろしページが入っているらしいので、そっちで読みた

かったなーと思ったのですけどね。

さて、本書。予想通り、イヤミス要素満載でした。どこを取っても不快になること

請け合い(笑)。いろいろと作者が施した仕掛けがある為、あまり内容を

細かく書けないのが残念なのですが。かなり考えられた構成になっていると

思います。実は、ちゃんと把握するのに、最後の数ページは何度か読み返して

しまった。なるほど、そういうことか、と溜飲が下がりました。

フジコの幼少時の家庭環境は悲惨で、こういう人格が作り上げられてしまったのも

仕方がないのかな、とも云えるけれど、それにしてもフジコのサイコパスキャラは

読んでいて不快極まりなかった。ちょっと気に食わないことがあると、すぐに

殺人衝動が起きるってのにも怖気が走りましたし。こんな人間に関わったら

すべてが悲劇の方向に進むしかないっていう。15歳から付き合うことになる

裕也のキャラもひどかったけどね。同じバイトで知り合った杏奈が出て来た

瞬間、嫌な予感しかしなかったです。もちろん、その通りになりました。しかし、

なんでこの犯罪がバレないんだ?とツッコミたくはなりました。いくらアレが

見つからないといったって。処理の描写を読むのがキツかったなぁ。フジコの

狂気が恐ろしかった。

フジコが妊娠・出産した後の子育てシーンも嫌悪感いっぱい。やっぱり、親が

異常だと、子供もまともには育たないという典型例じゃないですか。押入れに

自分の子供を押し込んで知らんふりするとか、もう私には理解不能でしかない。

子供の虐待の描写を読むのはどんな作品でもしんどい。生まれた子供に罪は

ないのに。いくらフジコに構うなと言われたからって、自分の血を分けた子供

なのに、無関心を貫く裕也にも憎悪しか覚えなかった。二人とも悪魔だ。

終盤、いろいろと腑に落ちないことが残ったまま、突然あとがきのページに

なるので、かなり面食らっていたのですが、そこからがこの作品の真骨頂。

フジコ一家の惨殺事件の犯人は全く予想外の人物でした。まさかの反転に驚かされ

ました。そして、本当に最後のつけたしのような1ページに更にどーん、と

落とされました。最後の最後まで容赦ないなぁ。真梨さんはやっぱりイヤミス

女王だな、と思わされました。

ミステリ的には面白かったけど、やっぱりどこを取ってもイヤミスでしかなく、

読んでる間は不快な気持ちでいっぱいでした。この手の作品を続けて読むのは

ちょっと御免被りたい。こういうエログロ満載のド直球のイヤミスは、たまに

読むくらいがちょうどいいのかも。