ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

垣谷美雨「老後の資金がありません」(中公文庫)

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ブログ友達のわぐまさんのところで度々見かけていた作家さん。最近巷でも

作品が出るたびに話題になっているので、図書館では人気が高くてなかなか

借りられずにいたのですが、先日行った古本屋の100円棚で目出度くゲット。

比較的きれいな本だったのでなぜに100円?と不思議だったのですが、読み

始めて納得。読み進めて行くと、度々ページが折られている箇所が。これが

ドッグイヤーってやつか。雑誌ならいざ知らず、小説でも栞代わりにページを

折るなんて、ほんとにやる人がいるんだなぁ。私には到底考えられないけどね。

折られたページをいちいち直しながら読むのはちょっとストレスだった。

ま、100円だからいいけどさ。

さて本書。タイトル通り、老後の資金がなくなりそうでどうしようと悩む主婦

のお話。主人公は、夫があと三年で定年を迎える53歳のフルタイムパート主婦、

篤子。共働きで老後の資金もそれなりに蓄えたと思っていた矢先、娘の派手婚の

結婚費用と舅の葬式が重なり、一気に貯金が目減りしてしまう。その上、運の

悪いことに、夫婦揃って職を失う事態に陥ってしまう。お金がないのに姑に月9万

の仕送りもしなければならず、家計は一気に火の車に。篤子はこのピンチをどう

切り抜けて行くのか――。

いやー、身につまされるお話でしたねぇ。私には子供がいないから、娘の

結婚費用こそかからないものの、それ以外の老後資金に関しては、いつ自分の

身に降り掛かってくるかわからない問題ばかり。葬式関係なんかはほんと、

本人に最低限は残しておいて欲しいですよね・・・。身の丈に合わない介護施設

費用なんかも勘弁してほしい。私の場合は、本人たちの意向もわからないので、

どうなるかは全く今のところは想像もつかないのですけれど。

それにしても、娘にしても義父母にしても、お金を篤子夫婦に頼りすぎ。結婚式

の費用を、今どき親に全部出してもらう人がいるっていうのにも驚いた。しかも

娘本人は地味婚を望んでいるのに、旦那側の意向で600万円の式とは。完全折半

で300万だとしても。娘が、それを平気で親に負担させてるところにイラッと

しました(父親が安請け合いしたのがいけないとはいえ、察することはできる筈)。

姑への援助にしても、月9万はありえないでしょう。援助してもらわなきゃ老人施設

に資金を払えなくなった時点で、もっと安い場所を探すとか自宅に戻るとか、

何かしらの対策を練るべきでしたね。まぁ、主導権を持っているのは近くにいる

義妹夫婦なんだから、篤子がどうにかできる問題じゃなかったのかもしれませんが・・・。なんか、いろいろツッコミところが満載だったような。でも、実際自分が

その場に立ってみると、思っていた通りには対処出来ないものなんだろうなぁ。

お金が絡んで来ると余計に。

自分ももう少し年取ったら、確実に老後資金のことを考えなきゃいけない時期が

来る訳で。ほんと、今からちゃんと計画して蓄えておかないといけないんだろう

なぁと痛感させられました。いつどこで法外な出費があるかわかりませんからねぇ。

近い将来、家の修繕費用は絶対かかるし。葬式系だって、いつ突然やってくるか

わかりませんからね。幸い、今の所は自分のところも相方のところも両親揃って

元気ですけど・・・。

篤子の長男・勇人だけが作中のほぼ唯一の常識人で、いい子で良かった。姑も、

豪華な施設暮らしで悠々自適に暮らしているお花畑人間なのかと思っていたのですが、

意外とちゃんと物事を見極められる人だったのは救いだったかも。篤子の家で

引き取ってからの言動には驚かされっぱなしでした。ただまぁ、年金詐欺の片棒

担いだのはどうかと思いましたが・・・。犯罪だよ・・・。でも、それで受け取った

お金を篤子たちにすんなり渡す辺り、ちゃんと自分の立場を弁えてはいるんだなと

意外な気持ちになりました。

それにしても、篤子の友人サツキには呆れました。ひと月も前から行方不明の

義母を警察に届けることもせずに年金をもらい続けるとは・・・。いくらお金が

必要だからって、そういう不正はダメでしょう・・・。その不正の片棒を篤子の

義母に頼むという図々しさにも唖然。受ける方も受ける方だけどさ。最終的に

サツキから受け取ったお金はそのまま彼女に返されることになったので、まだ

溜飲が下がりましたけどね。

相方が定年間近になってこういう状況になったらと思うと・・・。いろんな意味で、

リアルだし身近に迫る将来が怖くなるお話でした。

垣谷さんの作品は実はこれ買った時もう一冊買っていて、すでに読み終えています

(後日記事上げますが)。

こちらはこちらで、結婚前の自分にはかなり身に覚えのあるお話。この方の

選ぶ題材はいつも、身近にある問題を取り上げていてリアルなのよね。