久しぶりの<市立高校シリーズ>。5年ぶりの新刊だそうで。そういえば、出て
ないよなぁとはちょいちょい思ってたんですけどね。
一年前に伊神さん卒業しちゃって、今回ははついに柳瀬さんの卒業。シリーズも
終わりに近づいているのかな、と思いながら読みました。
市立高校七不思議の八番目、『兼坂さん』が今回の題材。『かねさかさん』ならぬ、
『んねさかさん』と読むそう。読めん^^;まぁ、のちのち、この名前にも
意味があるとわかるのだけど。秋野さんが持ち込んで来たこの不思議に関して、
葉山くんたちが謎解明に挑む訳なのですけれど。今回、構成がなかなかに複雑
でして、12年後の葉山くんとミノ(三野)くんが当時を回想しつつ、その事件
を元に書かれたと思われるファンタジー小説も作中作として細切れに挿入されつつ、
事件当時の様子が描かれて行く、という形になっています(←説明わかりにくい!)。
まぁ、三つの視点が交互に出て来る構成ってことです。
途中に出て来るファンタジー小説部分が最初読むのちょっと辛かったけど、
読み進めて行くと慣れて来ました。
以下、ネタバレ気味です。未読の方はご注意を。
兼坂さん事件の真相に関しては、いろいろ二転三転した割に、一番オーソドックス
なところに落ち着きましたね。でも、驚きは、その後でした。このシリーズには、
毎回最後の最後でどえらい仕掛けで度肝を抜かれて来たのですけども、今回もまた、
やられてしまいました。何、その壮大な仕掛け。っていうか、一作目からこれを
考えていたのかな、似鳥さんは。だとしたら、すごいとしか言いようがないんですが。
一作目から読み返したら、それに至る伏線が張ってあるとでも?いやいや、わかんない
でしょ、それは!風紀委員とはね。とんでもない学校だなぁ。いろいろと、腑に落ち
ないところもありますけどね。後継者見つかんない時どうするんだろ、とか。現に
あの人は卒業までに見つけられなかった訳で。卒業してからもこんなことに付き
合わなきゃいけないとか、結構しんどくないか?
まぁ、なんとも壮大な設定考えたものだなぁ、と感心半分、呆れ半分って感じでした。
それにしても、葉山くんがあそこまで柳瀬さんの卒業にうじうじするとは思わな
かったです。柳瀬さんの今までのいろんなアプローチにも淡々と応じていたから、
恋愛に対して淡白なタイプなのかと思ってたので。そこまで恋心に自覚があるとは。
最後の告白に関しても、ずっとうじうじ言い訳してて実行に移さないから、ほんと
じれったかった。柳瀬さんはずっと待ってたんだろうなぁ。
12年後の『うちのひと』は、もちろんあの人のことでしょうね。ミノが久しぶりに
しゃべりたいって言ってたし。
作者のあとがきが相変わらず饒舌過ぎて、何言いいたいのかさっぱりでしたけど、
そこがこの作者の特色でもあるし(笑)。
しかし、本当の作者の仕掛けはその後でしたね。あとがき読んで、それで本を
閉じてしまった人は一生後悔することになるでしょう。
本は最後の最後、奥付まで読むべきだと痛感させられた作品でした。映画で言う、
エンドロールの後にちょこっとつけたしがある、みたいなやつね。
これ、気づかない人も結構いるんじゃないかなぁ。ズルいぞ。
この部分があることで、冒頭の一文が誰の言葉なのかが明らかになりますね。
切ない。でも、好きな人の幸せの為なら、これで良かったってことなんで
しょうね。やっぱり、切ない。その人も、幸せになってて欲しいな。
もしかしてこれで完結、と思ったら、あとがきで作者がまだ続きますと
おっしゃってくれたので一安心。次は葉山くんが探偵役になるのかな。