最近お気に入りの青山さん。本書は度々新聞で取り上げられていて、話題になって
いた作品で、気になってました。前の作品で脇役だった登場人物が次の作品の
主役になるという、主役のリレー形式で綴られる連作短編集。最後の一作が冒頭の
一作に繋がるという、円環形式とも言えます。青山さんって、こういうリンクの
させ方がとてもうまい作家さんですね。一話目の『ココアさん』が、最終話の
『ココアさん』に繋がるところは、お見事ですし、読んでいてぱっと花が開いた
ような爽快感と喜びがありました。一冊通して、壮大なラブストーリーになって
いるんですね。途中シドニー編が続いた辺りは、人間関係整理するのがちょっと
大変でしたけど。いろんな人がいろんな人と繋がっているから、人物相関図とか
最後のページにでも入れてもらえると良かったんだけどな。若干繋がり過ぎて
やりすぎ感もあったような。
一作一作は短いですし、さくっと読めてしまうものですが、どのお話も、心が
ほわっと温かくなる優しい物語ばかりでした。ままならない日常も、ほんのちょっとの
気づきやきっかけで、がらっと見方が変わったりする。そうした日常の積み重ねが、
人をほんの少し成長させて、明日に向かわせてくれるんですよね。
一作ごとのページ数が少ない分、少しそれぞれの物語に重みが足りない面は否め
ませんが、一作通して一つの物語になっている辺り、作者の巧妙さを感じます。
さらりと読めて、ほんの少し温かい気持ちになってもらえればそれで十分、という
ような。二人のココアさんのその後が気になります。なんか、微笑ましいカップル
になりそうですよねぇ。いきなりカフェに就職することになって、ろくに仕事も
教えてもらえないままオーナーがいなくなって、店長にさせられてしまったという
ところには、若干引っかかりを覚えたりもしたのだけれど。珈琲の淹れ方とか
食事メニューの作り方とか、一体どうやって修行したんだろう、とかね。ま、
そういう細かい部分をツッコむ作品ではないんだろうけれど(苦笑)。
いろんなタイプの主人公が出て来るけど、結局一番記憶に残ったのは冒頭の
マーブルカフェに出て来る二人の物語だった。最後に出て来た恋文を店長が
読む姿を想像すると、ニヤニヤしちゃいますね。そのシーンが読めなかったのは
ちょっと残念だったかな。
ほんわか優しい物語集でした。実は次に読んでいるのも奇しくも青山さんの作品。
すっかり、お気に入り作家の仲間入りになっているのでした。