ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

碧野圭「書店ガール4 パンと就活」/滝田務雄「捕獲屋カメレオンの事件簿」

どうもこんばんは。なんだか急に涼しくなりましたねぇ。
毎日着る服に迷います・・・。なんだか、あっという間に冬になっちゃいそうですね。
季節の変わり目なので、みなさまもご自愛下さいね。


読了本は今回も二冊です。

では、1冊づつ感想を~。


碧野圭「書店ガール4 パンと就活」(PHP文芸文庫)
シリーズ新刊。今回は完全に主役が交代しまして、理子さんと亜紀は脇役に回って、
新興堂書店のアルバイト店員・愛奈と、彼女の友人で駅ビルの書店の契約社員
彩加が活躍する物語になっております。
愛奈の方は就職活動を控えた大学生。友人の梨香を始め、周りはしっかり就職活動に向けて準備
しているのに、書店のバイトに明けくれる日々。心の中では書店や出版社といった本にまつわる
仕事がしたいと思いつつ、それを梨香たち友人には言い出せずにいた。
一方の彩加は、上司から正社員への昇格を打診される。喜ぶ彩加だったが、正社員になった場合、
異動で茨城の駅ビルの本屋の店長になることを告げられる。突然の異動告知に動揺する彩加に、
沼津の伯母が一人で営む本屋の手伝いまで頼まれて――。
愛奈と彩加、それぞれの物語が交互に進む形。就職で悩む愛奈の気持ちも、一人で新しい地に
行っていきなり責任ある仕事を任されることに不安を覚える彩加の気持ちも、どちらもとても
共感出来ました。
それに、二人とも本当に本が好きなのだというのが伝わって来て、本好きとしては、
こういう書店員さんがいる本屋に行きたいなぁとしみじみ思わされました。
愛奈が書店員の仕事を超えて川西さんにしてあげたことは、確かに行き過ぎなのかもしれない
けれど、私が愛奈の立場でも、多分同じように、なんとか彼女の探している本を見つけてあげたい
って気持ちになると思うなぁと思いました。
終盤に愛奈が仕掛けるシューカツフェアの本、小説は既読のものもいくつかありましたが、
未読のものが多かったので読んでみたくなりました。シューカツに関しては私も当時
大変な年に当たったからなぁ・・・。こういう就活関係の作品を読むと、ついつい当時の
ことを思い出して遠い目になってしまいます(笑)。
愛奈にも彩加にも、最後でちょっと恋愛要素が入っていたので、ニヤリとしちゃいました(笑)。
彩加は完全に遠恋になるでしょうけど・・・まぁ、彼が相手なら大丈夫でしょう。
トルコのパンって食べたことないけど、食べてみたくなりましたねー。
理子と亜紀がほとんど出て来なかったのは残念でしたが、愛奈のピンチに颯爽と
出て来て困った客を追い払う理子さんはさすがの貫禄でかっこ良かったです。
今後は今回の二人が主役を担って行くのかなぁ。それとも、また新たな書店員が
登場するのかな。しばらくはこの二人が中心になりそうですが。
今回も面白かったです。次巻も楽しみ。


滝田務雄「捕獲屋カメレオンの事件簿」(祥伝社
田舎の刑事シリーズの滝田さんの最新作。捕獲屋という、ちょっと・・・いや、かなり
怪しい職業に就いた元刑事の浜屋良和が主人公。
捕獲屋とは、生物・非生物を問わず、あらゆるもの捕獲を請け負う業者。捕獲って言葉を
使ってますが、要するに便利屋みたいなものですね。社員は良和を入れて三人。
社長職を娘に譲り、会長の座に就いた諏訪院(阿過)雲斗。そして、雲斗から社長を任命された
娘の阿過沙汰菜。諏訪院は、表の顔はオカルト雑誌の編集長。そして、良和はその雑誌に
寄稿しているフリーのライターでもあります。捕獲屋としての仕事が入ると、沙汰菜と共に
対象物の捕獲に乗り出すという。
なかなか斬新な設定で面白かったです。アホみたいなキャラの名前だけは受け入れ難いものが
ありましたが・・・だって、はまやらわにあかさたなに、おこそとのほ(御小曾殿歩)ですよ!?
どんだけDQNなんですか。っていうか、そんな名前あるかい!ってツッコミ入れたくなること必死。
まぁ、その辺はユーモアミステリなんで・・・と流すべきところなんでしょうが(苦笑)。
作風は軽いですが、ミステリとしては割合しっかりと作ってあって、面白かったです。
特に、良和(よしかずと読みたくなりますが、らわです)の三次元の座標を記憶して正確に
再現出来る特殊能力が、彼らが依頼物の捕獲の為に施す仕掛けによく効いていて、なかなか巧い
設定だなーと思いました。
中でも一番感心したのは、第二話の『美食家の葡萄酒』かな。良和の能力を使って作ったモノ
がアレだとは思わなかったです。そうそう、その良和の能力を最大限に引き出すのが、沙汰菜
の天才的な機械工作加工技術。女性なのに、工具を持たせたら名人級というのが面白い。
性格的にはどちらも問題アリですが(^^;)、お互いのいい所を引き出し会える関係なのは
間違いないと思いますね。
あと、第四話の『試作車の鍵』で、良和の袖のボタンの為の応急処置で使われる小道具が、
その後の伏線になっているところは巧いなーと思いました。まぁ、読んでても、絶対これ
後の伏線だろうなーというのは感じていたのだけれどね。
最終話は、良和が刑事を辞めた原因となった出来事を描いた前日譚。それまでの軽めの作風
が一転、かなり重くシリアスな内容で驚きました。良和が、そこまで重いものを背負っているとは
思いませんでした。でも、諏訪院のような人間と出会えたことが救いなのかな。このラストが
一話目に繋がって行くのかー、と感慨深いものがありました。なるほど、諏訪院は、見事
対象を捕獲したということだったのですね。成功率100%は伊達じゃなかったということで。
一応最後の話で綺麗に終わってはいるけれど、良和と沙汰菜の凸凹コンビはなかなかいいキャラ
だったので、シリーズ化されると嬉しいですね。