ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「Day to Day」(講談社編)

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コロナ禍の2020年4月1日から7月9日までの日本を舞台に繰り広げられる、

それぞれのコロナの日常を描いた掌編集。

寄稿作家は総勢100人。小説あり、エッセイあり、俳句ありと、それぞれの

作家さんの個性が出ていて、面白かったです。わぐまさんのところで見かけて、

面白そうだと思って予約しました。

実は、最初は予約本がまたしてもえらいことになってまして、読書ペースも上がって

おらず、結構な分厚さの本書をどうしたものかと思いましてね。当初は好きな作家

だけちゃちゃっと読んで返しちゃおうかと思ってたんですが、予想以上に好きな作家

の寄稿が多かったのと、一編がせいぜい3~5ページ程度しかないのでさくさく

読めてしまったので、結局全部まるっと読んでしまいました。いろんなタイプの

作品があって、バラエティに富んでいて面白かったです。中にはコロナ関係ない

よなーって作品も入ってましたが、それはそれでその作家さんのインスピレーション

によるものなので、いいのかな、と。エッセイなのか創作なのか曖昧なものも

ありました。普通に創作小説が一番多かったですけれど。ご自分のシリーズの掌編を

持って来られる作家さんも多かったですね。あのシリーズキャラもコロナの影響を

受けているんだなぁとやりきれなく感じたりもしましたが。中にはコロナではなく、

違う疫病が流行った時代のものもありましたし。みんな、コロナに対する捉え方が

それぞれで、興味深かったです。でも、共通しているのは、等しくどの作家さん

にもコロナの影響はあったんだろうな、ということ。基本的に作家さんは家で

仕事する方が多いでしょうから、他の職業よりは生活自体は変わらないのかも

しれませんが、自由に外出出来ないのは一緒ですし。誰の心にも、暗い影を

落としたのは間違いないということが伝わって来ました。

ページ数が少なすぎて、ピンと来ないものもちらほらありましたが、個人的に

印象に残ったのは東川篤哉さん、我孫子武丸さん、澤村伊智さん、京極夏彦さん

辺り。東川さんはこれ一編できちんとミステリとして成立しているところが

さすがだと思いましたね。我孫子さん澤村さんは最後の落としのおぞましさ

にぞっとしました。京極さんは、実は今回一番読むのを楽しみにしていました。

そして、この一編、読めただけでもこの作品読んだ甲斐があったと思いました。

まさか、こんなところでこの二人に会えるなんて。京極ファンには是非、ここだけ

でも読んで頂きたいなぁと思いますね。そして、この作品が次の長編への伏線に

なっていたら嬉しい。

でも、はじめましての作家さんですが、宮澤伊織さんの一編が、一番この掌編集

の趣旨を表している作品なんじゃないかな、と思わされました。作家さんそれぞれの

表現方法で、読者に未来への明かりを灯そうとしてくれているのかな、と。

こんなコロナの世の中だからこそ、娯楽で少しでも楽しんでほしい、という願いで

作られた作品集だと思うので。

知らない作家さんの作品にもたくさん触れられましたし、一編が短いので、あんまり

深く考えなくても読み進められるのが良かったですね。最近、本を読む集中力が

続かないことが多いので・・・^^;

気楽に読めて楽しめました。読めて良かったです。