扉子シリーズ第三弾。といっても、副題になるほど扉子は活躍していなかったような。
主に事件を解決するのはやっぱり栞子さんだし。新しいシリーズと銘打ったので
あれば、もう少し扉子メインの物語にした方が良いのではと思ってしまうのですが。
ただ、新たなシリーズのメインにするには、扉子の個性が栞子さんに似すぎている
ような気もします。悪い子じゃないのですが、どうにも掴みどころがない性格で、
感情移入がしにくいんですよねぇ。本の虫って意味では栞子さんとほぼ同じレベル
なんでしょうけど。物語の後半で、海外に行っていた栞子さんが戻って来たら、
完全に気配消えてましたよねー・・・。
しかも、結局、最後は篠川智恵子さんが全部持ってっちゃうようなところも
ありましたしね。智恵子さんが出て来ると、栞子さんの存在さえ霞んでしまうような
存在感がありますよねぇ。ってか、怖い・・・。自分の娘にさえ本心を明かさないし、
孫娘さえ自分の欲望の為に利用しようとするし。こんな祖母いたらやだよ・・・。
何考えてるかわかんないし、古書の為なら手段も倫理もお構いなしだし、彼女が
出て来ると嫌悪しか覚えないです。
何度も書いてるんですが、このシリーズにかかると、古書好きな人って相当な割合で
悪人になってしまう。人を騙したり、盗んだり、燃やしたり。犯罪者のオンパレード。
そこが私にはちょっと不満なんですよね。金銭的な価値のある稀覯本には犯罪が
つきものって言いたいのでしょうけどね・・・。たまには、善意の人間も描いて
欲しいなぁ。そもそも、本好きにそんなに悪い人いないと思うんだよなー・・・
(私の考えが甘い、のだろうか・・・)。
ま、それじゃお話にならないのでしょうけどもね^^;
今回は、ある古書好きの故人の千冊の蔵書の相続を巡る物語。相続するはずだった
高校生の少年の意思とは関係なく、古書店主である彼の祖父が市場ですべて売り
捌こうとしているのを察知した少年の母親は、それを阻止して欲しいとビブリア
古書堂に依頼する。
自分であらすじ書いておきながら、説明わかりにくっ!と思いました。すみません
・・・。
以下、ネタバレ気味感想になってます。未読の方はご注意ください。
祖父が実の息子の蔵書を孫に相続させる前に売り捌こうとした理由にも、それを
阻止する為に栞子さんたちに依頼した母親の真の理由も、私にはちょっと理解
しがたかったなぁ。特に母親の方。完全に思い込みの域ですよね・・・。だって、
同じ人が同じ本読んだからって、その人の主義主張や性格まで同じような人間に
なるわけないじゃないですか。そんなの、誰が考えたってわかると思うんですけど。
同じようになってほしくない気持ちは理解できても、その方法には首を傾げざるを
得ませんでした。そもそも、千冊の蔵書ってそんなに多くもないですよね。
本好きならば、それくらいみんな持っててもおかしくないんじゃない?いや、
うちにはそんなにないけど・・・(私は図書館派なので。でも、その都度買って
読んでたらそれを遥かに超える蔵書があったと思う。そんな財力ないけどさ^^;)。
今回初登場の恭一郎君は、なかなか素直で良い少年で好感が持てましたね。祖父の
古書店のバイトを通して、本の面白さに気づけたところも良かったと思いますし。
扉子とのやり取りも、ぎこちないながらもなんだか微笑ましかったです。今後、
扉子の良い友だちになってくれると良いのですが・・・。前作で登場した圭ちゃん
とは良いお友達になれそうだと思って嬉しかったのに、あまり連絡取ってなさそう
なことが判明してがっかり。栞子さんや大輔もそれを期待してたんだろうけどなー。
相変わらず、本にしか興味ないんですねぇ。恋でもすればまた違って来るのかも
しれないですけどね(栞子さんのように!)。ただ、その相手に恭一郎は・・・
ないだろうなぁ。友達止まりだろうな^^;
古書ウンチクの部分は今回も興味深かったです。三大奇書は、『ドグラ・マグラ』
どころか一冊も読んでない私・・・。どれも一筋縄ではいかなそうで、本当に
時間が有り余ってる時じゃないと挑戦出来ないでしょうねぇ(=永遠に挑戦
しないであろう)。
次回以降、智恵子さんの魔の手が扉子に忍び寄りそうで戦々恐々としています。
古書を餌にやりたい放題やりそうで怖い。そして、それに乗っかってしまいそうな
扉子の本(古書)熱も怖い・・・。一体、シリーズはどうなって行くのでしょうか。
やれやれ。