東川さん最新刊(新シリーズ??)。毎回新たなキャラクターをどんどん生み出して
くれていますねぇ。その後続編が出ないものも多いですけど・・・(そもそも、
シリーズ化を狙って書いているのかも謎ですが)。
今回の探偵役は、な、なんと!!
馬
・・・えぇ(絶句)。とうとう、人間以外の探偵役が爆誕です。探偵役のお馬さん
であるルイスは、栗毛の関西馬。御年15歳。人間の主人公・女子高生の陽子の
実家の牧牧場(牧さんが経営している牧場)で飼育されています。サラブレットの
元競走馬。
ある日、陽子は通学途中で馬のロックと遭遇する。ロックは、陽子の実家の
牧牧場のご近所にある乗馬クラブの馬だ。ロックに乗れば楽して学校に行けると
画策した陽子は、ロックの背に跨ったが、何を思ったかロックが暴走。陽子の
意思とは違う方向へ進み始めた。慌てた陽子だったが、ロックが行き着いた先には
男性の死体が!男の額は、何か硬いものでかち割ったかのようにパックリ割れて
いた。その後警察の調べで、男性は乗馬クラブの主人だとわかり、主人を殺した
容疑者は馬のロックだと見なされた。しかし、陽子は何か腑に落ちないものを
感じていた。すると、なぜか陽子の牧場で飼育されている馬のルイスが話しかけて
来て――。
のどかな町で起きる不可解な事件を、女子高生&ウマが解決する連作短編集と
なっております。一応殺人事件もありますが、殺人が出て来ない作品も。全体的に
のんびり、ほのぼのとしたユーモアミステリです。探偵役のルイスは関西馬なので、
関西弁を話します。それがまたとぼけた味があって良かったですね。なぜ、突然
陽子にだけルイスの声が聞こえるようになったのか?は謎のままですが、それは
まぁ、そういうものとして読むべき作品でしょうね。
ミステリとしてのキレは、東川さんにしてはあまり感じられなかった気もしますが、
2話目の『馬も歩けば馬券に当たる』が、ラストの『馬も歩けば泥棒に当たる』
への伏線になっている構成には感心したし(タイトルもちゃんと呼応している!)、
4話目の『大山鳴動して跳ね馬一頭』の跳ね馬のオブジェが盗まれた理由には
驚かされましたし、一冊通して十分楽しませてもらえました。跳ね馬のオブジェの
意外な使い方には唖然としましたね。確かに形を思い浮かべると・・・ううむ。
こういう、意表をついたアイデアが次から次へと思い浮かぶところがすごいなぁと
思いますね。まぁ、普通の人だったら絶対やらないと思うけどね・・・。
タイトルがすべて、既存のことわざに上手く馬を絡めて使っているところも面白
かったです(ちなみに、1話目は『馬の耳に殺人』3話目は『タテガミはおウマの命
(って、これはことわざではないか?w)』)。
東川さんは競馬がお好きなのかな~。ちょいちょい、競走馬裏話とか競馬関係の
蘊蓄が出て来たりしてました。
私自身も住んでる街が競馬と縁深い場所ではあるので、小さい頃から競馬って
身近な存在だったんですよね。何度かG1レースの馬券買ったこともありますし
(当たったことはないw)。オグリキャップフィーバーの時は、一緒になって
盛り上がりましたしね。今は全く興味なくなっちゃいましたけどね(もちろん
馬券も買いません)。お馬さん見るのはその頃も今も大好きですが。特に
サラブレット馬は、見てると本当にきれいな生き物だなぁと思わされますね。
それだけ調教が大変なのだろうし、お金もかかっているということでしょうけどね。
ルイスと陽子のかけあいも面白かったです。ルイスがなぜか、陽子のことを
『マキバ子ちゃん』と呼ぶところもツボ(牧陽子を牧場子と読み間違えたから・・・
だと思われるが、何度陽子が訂正してもそのまま呼び続けているというw)。
のどかな田舎町の雰囲気と、二人のとぼけたかけあいがマッチしていて、東川
さんらしいユーモアミステリだと思いました。続編あるかなぁ。