桜庭さん最新刊。少し前にエッセイと、その前にエッセイと小説のあいのこみたいな
作品は読んだけれど、桜庭さんの純粋なフィクションの小説(変な表現^^;)は
久しぶりでした。文章とかキャラとか、あー、桜庭さんだなぁ、って感じの作品
でしたねぇ。200ページ弱しかないので、ちょっと読み足りない感じはありました
けれど。新大久保で探偵を営む真田紅(くれない)と黒川橡(つるばみ)は、ある
出来事がきっかけで今は少し仲違いをしている。それぞれ個々に依頼を受け、
依頼内容は社員共用のWeb上で報告、という形を取っている。ある日、紅は突然
事務所にやってきた、ハイタカと名乗る謎の少女の依頼を受け、彼女のボディガード
を引き受けることになった。一方、橡は知り合いの公安の刑事から持ち込まれた、今
世間を騒がせている偽札事件に巻き込まれていた。別々に動いていた二人だったが、
次第に紅の依頼人の少女が偽札事件に関わっていることが明らかになって来て――。
紅のキャラクターは、『赤朽葉家の伝説』に出て来た毛鞠っぽいなぁと思いながら
読んでました。破天荒で乱暴だけどお人好しで。毛鞠は元暴走族のレディースだった
けど、紅は元テコンドーでオリンピックに出場したオリンピアンという違いは
ありますけれど。強い女性という意味でね。
一方で、紅とバディを組む橡は、元刑事の割にはひょろっとしていて力も強くなく、
男にしては弱気な性格。最初はもっとクールなキャラクターなのかと思いましたが、
橡視点からの章を読むと、全然思ったのと違う内面を持ったひとだなぁという
印象でした。お人好しという点では、紅も橡も似ているのかもしれませんけどね。
二人がなぜ仲違いしたのか、その理由も途中で明らかになり、納得出来ました。
大事な人を死なせない為に火の中に飛び込もうとした者と、それを止めた者。正反対
の行動をしたのがどちらだったのか、真相は思っていたのと逆だったので驚かされ
ました。どちらの行動も理解出来ましたし、どちらを選択するのも辛かったと思う。
結局、この二人は似た者同士でいい相棒同士なんだろうな、と思えました。
偽札事件の顛末は割りとあっさり解決してしまったので、ちょっと拍子抜けなところも
ありました。まぁ、このライトな読み心地が良いのかもしれない。これがもっと
長編になってたら、きっと中だるみして、この作品の軽妙なイメージが失われて
しまったかも。
紅とハイタカの会話が、いかにも桜庭ワールドだなぁと思いました。ハイタカは、
重大な犯罪をしているとは思えない程あっけらかんとした性格で、こういう子に
大金を持たせるのはちょっと怖いかも・・・と思いました。まぁ、それがラストで
証明された形になってますけど。恐ろしく頭の良い子なんでしょうね。いつか、
紅と再会する日が来るんでしょうか。
紅と橡は良いコンビだと思うので、今度はがっつり二人がコンビを組んで事件を
解決するお話なんかも読んでみたいな、と思いました。