ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

アミの会「おいしい旅 思い出編」(角川文庫)

先日読んだ『おいしい旅 初めて編』と二冊同時に刊行された作品。あまり期間を

空けずにこちらも回って来て良かったです。そして、こちらには『初めて編』の

最後にちらっと触れた光原百合さんの作品が収録されていました。これが遺作に

なってしまったのだろうか・・・?他の方より分量も短く、ラストも少し唐突な

感じがしたので、大分具合が悪い中での執筆だったのだろうか、と少し勘ぐって

しまった。大好きな潮ノ道シリーズが最後(もしかしたらまだ未刊行の作品も

残っているかもしれませんが)に読めて嬉しいと同時に、もうこの続きが読めない

と思うと、どうしようもない寂寞の思いがこみ上げて来ました。局長と真尋さんの

関係がどう変化して行くのか、これから楽しみだったのになぁ(涙)。

と、感傷はそれくらいにして、他の作品の感想をば。今回は、タイトルにあるように、

旅先での思い出の味がテーマ。旅に出たらおいしいものを食べるのが醍醐味だけれど、

その土地でしか味わえない思い出の味っていうのが必ず出来るものですよね。

旅好きの私にとっては、共感出来るシーンがたくさんありました。前作では海外を

舞台にした方が多かったですが、今回は国内ばかりでしたね。海外は、秋川さんの

ドイツくらいだったかな?ドイツは行ったことがないので、すごく行ってみたく

なりましたね~。出て来る食べ物は、どれもとても美味しそうでした。

 

柴田よしき『あの日の味は』

昔過ごした京都で15年ぶりに旧友三人が再会するお話。15年も経つと、それぞれに

ライフステージも違っていて、なかなか会えなくなるものですよね。三人それぞれ

心に秘めたものがあっても、久しぶりの再会に水を差したくなくて、結局告白

出来ずに終わってしまう。主人公美奈の事情には胸が痛みました。確かに、こういう

事情は打ち明けづらいよなぁ・・・。でも、絶対また三人で再会出来ると思いたい。

 

福田和代『幸福のレシピ』

三十年ぶりにある人物と会う為神戸にやってきた琴子。その人物との待ち合わせの前

に神戸の街を散策している途中で、親切な青年と出会い、なぜかスイーツめぐりを

することに。琴子の亡くなった夫は、パティシエだった――。

親切な青年は何か隠し事がありそうだなぁと思っていたら、そういうことだったのか、

と思いました。いくら何でも偶然が過ぎるのではとも思いましたが、琴子のカバンの

チャームがポイントだったのですね。切なくも微笑ましい一作でした。

 

矢崎存美『下戸の街・赤羽』

仕事も同棲していた彼氏も失った美琴は、埼玉の実家に帰って来た。しばらく何も

せずにダラダラ過ごしていると、旧友の梨亜から祖父の実家の片付けのバイトを

しないかと持ちかけられる。片付けをしながら、梨亜と旧交を深めていると、

昔のように食べ歩きに行く話がまとまった。梨亜は美味しい物への嗅覚がとても

優れているのだ。当日、梨亜が案内したのは、せんべろの街、赤羽だった――。

赤羽って行ったことがないんですよね。私は下戸で、飲み屋街のイメージも

ありますし。今はこんなオシャレな街になっているんですねー。梨亜のように

美味しいお店をたくさん知っている友だちがいるのっていいなぁと思いました。

 

光原百合『旅の始まりの天ぷらそば』

真尋がパーソナリティを務めるFM潮ノ道の看板番組『黄昏旅行』、今回のテーマは

『私の旅』だった。放送を終えて、真尋は、局長を相手に、旅のお便りの話で

思い出した、思い出の天ぷらそばが『旅のはじまり』を意味していることを

話し始めた――。

噛み合わない話を平気で続ける真尋と、それに呆れながらも付き合ってあげる局長

の関係がいいですね。今後真尋の想いは局長に届くのでしょうか。その答えは永遠に

わからなくなってしまいました。悲しいです。

 

新津きよみ『ゲストハウス』

白馬村のゲストハウスに泊まりに来た小田切。ここはスイス人の夫と、日本人の妻が

営んでいるらしい。実は、このゲストハウスは、小田切が幼少の頃過ごした実家の

古民家を改装したものだ。今回、ここに泊まりに来たのには理由がある。今日宿泊

する予定の客の中に、自分の娘の沙織がいる筈なのだ。このゲストハウスでは、

オーナーが、ゲストに日常を忘れて過ごして欲しいからとのことで、宿泊客同士は

ニックネームで呼び合う。顔もわからない娘の沙織はこの中のどの娘なのか――。

田切に手紙を出した娘は、なんとなくあの人じゃないか、と思っていた人物で

合っていました。ただ、その母親はまさかの伏兵って感じでしたが。きちんと

名乗り出てあげて欲しいなぁ。小田切はきっと喜ぶと思うな。

 

秋川滝美『からくり時計のある町で』

七年前に訪れたドイツに再びやってきた七緒。でも、七年前には同行者がいたが、

今回は一人きりだ。一人でドイツ観光をしていると、思い出すのは七年前の同行者

のことばかり。今回の旅は、彼女との決別の旅にする筈だった――。

友人と些細なことでケンカして、その後お互い気まずくて謝る機会がないままに

疎遠になってしまう――なんか、似たような経験あるなぁと共感しまくりでした。

あんなに仲が良かったのに、ある日突然関係が途絶えてしまう。私にも、二十代

三十代で毎年海外旅行を一緒にしていた友人がいました。でも、私の結婚を機に、

なんとなくだんだん疎遠になってしまって。思い切って連絡してみれば良かったって

だけの話なんですけどね。なかなか勇気が出なくてね(ヘタレ人間)。今どうして

いるのかなぁと思いながら読んでいました。七緒は、ちゃんとお互いの誤解が

解けて良かった。ライフステージが変わっても、変わらない友情だってあるよね。

 

大崎梢『横浜アラモード』

コロナで旅行代理店の職を失った明穂。そんな矢先、母が母の友達のお姑さんを

横浜観光に連れて行くガイドのバイトをしないかと持ちかけて来た。明穂は、

バイト代10万の報酬に釣られて承諾し、綿密に旅行計画を練って当日を迎えた。

初日は順調に旅行日程を消化出来たが、二日目になり、当人が観光に行きたくない

と言い出して――。

行きたい場所があるなら、もっと早く言っておいてくれれば良かったのになぁと

思いましたね。でも、ああいう年代のひとは、相手に遠慮してしまって、なかなか

言いたいことも言えないのでしょうね。最終的には、本人の希望の場所に行けて

良かったです。しかも、会いたかった人にも会えましたしね。80代の人を旅行に

連れて行くって、ほんと大変だと思う。うちも父が80を超えているので、

いろいろと配慮しなきゃいけないことが多いです。それでも、本人嬉しそうに

しているので、出来るだけ元気なうちに親孝行したいと思ってますけどね。それも、

いつまで出来るのかな。