ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

青柳碧人「赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。」(双葉社)

童話シリーズ最新作。前に登場した名探偵の赤ずきんちゃんが再び登場。まさか、

赤ずきんだけが独り歩きしてシリーズ化するとは・・・(笑)。まぁ、確かに

なかなか面白いキャラクターだったので納得出来なくもないですが。今回の赤ずきん

は、森の奥に住む漁師のおじさんにクッキーとワインを届けに行こうとしたところ、

思わぬ拾い物をしてしまいます。それは、サーカス団に捕らえられて芸を強いられて

いる木の人形、ピノキオの右腕でした。とりあえず右腕を家に持ち帰り、意思を

持っているように見えるこの右腕にペンを渡すと、右腕はこうなった経緯を

紙に書いて赤ずきんと彼女の母親に伝えました。それを読んだ赤ずきんの母親は、

右腕の身の上を不憫に思い、赤ずきんに右腕の本体があるらしいランベルソの

街に行き、本体を引き取って来てあげなさいと命じます。なぜ自分が、と思わなくも

なかったものの、可哀想な右腕の為、赤ずきんはランベルソを目指して出発するの

でした・・・。

今回は、バラバラになってしまったピノキオの体を捜す赤ずきんが、その先々で

出会う事件を解決していく物語。赤ずきんピノキオという相棒を得たものの、

毎回、さして役に立たないという(苦笑)。ただ、嘘をつくとピノキオの鼻が

伸びるという設定はちょいちょい効いてましたね。だからまぁ、いい相棒と

いえば、いい相棒だったのかな(笑)。

今回登場する童話は、ピノキオ』『白雪姫』『ハーメルンの笛吹き

『三匹の子豚』。今回も、それぞれの童話の小道具が謎解きに上手く使われて

いて、面白かったです。『白雪姫』と『三匹~』は、この人物を悪人にしちゃう

のか~ってところも、このシリーズらしいブラックさで意外性があって良かった

ですね。トリックは、一話目のピノキオのやつが好きだったかな。12時間経った

ら普通の卵になってしまう金の卵の使い方が秀逸だと思いました。二話目の

白雪姫の話は、ゴブリンビーンズの複雑な特性が効いてました。三話目のハーメルン

の話は、犯人は割りと早い段階で当てられました。あんなに長い時間をかけて

復讐の下準備をしていたとは、その執念に空恐ろしいものを感じましたが。動機を

知ると、同情の気持ちが芽生えなくもなかったです。四話目の三匹の子豚の話は、

前に出て来たキャラクターも再登場して、最終話らしい仕上がり。一話目に登場

したジルがあんなことになって結構ショックだったのですが、ラストまで読んで

赤ずきんの策略に感心させられました。それに、最後に魔女から願いを一つ叶えて

あげると言われて、ちゃんと当初の目的通りのお願いを告げるところに、ちょっと

感動してしまった。個人的なお願いを叶えてもらうことも出来たはずなのにね。

ブラックなシリーズだけど、ラストはめでたしめでたしで終われて良かったです。