ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

原田ひ香「まずはこれ食べて」(双葉文庫)

最近人気の原田さん。これは文庫で新刊入荷したみたいだったので、予約して

みました。原田さんの作品は読みたいのがたくさんあるのだけど、予約が多くて

なかなか借りられないのよね。これも結構待たされました。

大学の仲間同士で立ち上げたベンチャー企業に勤める池内胡雪は、仕事の忙しさ

にかまけて、最近は不摂生な生活が続いていた。男ばかりの職場なせいもあり、

社内も散らかり放題だった。そんな殺伐とした社内の雰囲気を変えたいと、社長

の田中が提案したのが『家政婦を雇う』ということだった。始めは反発していた

胡雪だったが、やってきた家政婦の筧が差し出す食事の美味しさに次第に心が

ほぐれて行き――。

心に悩みや憂いを抱えた『ぐらんま』の社員たちが、家政婦の筧の、『まずは

これ食べて』と差し出す料理に癒やされて行く、というお話・・・なのかと

思いきや。後半は筧自身の抱えた問題やら、『ぐらんま』立ち上げメンバ―で

カリスマ性のあった柿枝の消息にまつわるエピソードなどが畳み掛けるように

出て来て、予想外に不穏な物語になって行くのでびっくりしました。筧が、ある

人物と繋がっているというところも驚かされましたし。前半は、確かに無愛想だけど

家事は完璧にこなす筧の絶品料理に癒やされていくお話だったんですけどね。筧

さんのお料理は、派手さはないけど基本がしっかりしていて確かにどれも美味しそう

だった。こんな家政婦いたら、私も雇いたいっ。筧さんの予想外に重い過去にも

びっくりだったなぁ。『家政婦のミタ』のミタさんかよって思いましたよ(苦笑)。

でも、一番驚かされたのは、失踪した柿枝の本性。まさか、そこまで醜悪な人柄

だとは。失踪した理由も、もっと深い訳があるのかと思っていたのですが・・・

うーむ。なんだか、よくわからなかった。柿枝という人物の考えてること自体が、

まったく理解不能だった。友人を支配して何しようとしてたんだか。ちょっと、

サイコ入ってるのかなぁ。でも、最後の最後、筧さんグッジョブ!って感じでした。

そこは、スカッとしたかな。

『ぐらんま』の社員それぞれに性格にクセがあって、ちょっと面倒くさいタイプが

多いなって印象だった。これでよく仲良く会社なんかやってこれたよなぁ。

特に、胡雪の『女だから』って言葉にいちいち反応するところ、すごく面倒なタイプ

だなってイラッとさせられました。いなくなった柿枝に対するじめっとした

執着も不快だったし。まぁ、柿枝から胡雪とのあれこれを聞かされた後では、

彼女の執着も腑に落ちるところがあったのですけどね。結局、彼女は被害者だった

としか言いようがないけど。さっさとこんなやつのことは忘れて幸せになって

ほしいですけどね。

筧さんが差し出す『まずはこれ食べて』って料理で癒やされるって話だけでも

十分楽しめた気はしますけどね。終盤、あんな不穏な展開にする必要があったのかは

ちょっと疑問を覚えなくもない。特に、柿枝のキャラをあそこまで悪者にした

ところがちょっと腑に落ちない。あそこまで落とさんでも。でもまぁ、最後は

大団円になってほっとしましたけどね。