ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

坂木司「アンと幸福」(光文社)

和菓子のアンシリーズ待望の新作。前作から三年が経っているそう。大好きな

シリーズなので、読むのをとっても楽しみにしていました。期待に違わず、

今回も面白かった~。デパ地下の和菓子屋『みつ屋』でのアルバイトも板について

来たアンちゃん。大好きな椿店長が異動してしまい、ついに新しい店長がやって

来ることに。どんな店長なのか、男性なのか女性なのか、不安でいっぱいになる

アンちゃん。やってきたのは、アンちゃんが一番苦手そうな体育会系のノリのある

藤代店長。悪い人ではなさそうだけど、人との距離が近いみたい。それに、アン

ちゃんが接客していると、なぜか突然割って入って来ることが。一体なぜ!?

アンちゃんが大好きだった椿店長の代わりにやってきた藤代店長。最初は何考え

てるのかよくわからなかったけど、蓋を開けてみたら、とーっても良い人でほっと

しました。アンちゃんの接客に割って入って来た理由は、なんとなく予想していた

通りでした。前の職業まではわからなかったけど。お客さんの為を思っての行動

なのは間違いないと思うので、距離感さえ間違えなければ、お客さんにも好意的に

受け取ってもらえそうですね。それに、何より、藤代店長グッジョブ!って思った

のは、アンちゃんに正社員の道を勧めたところ。私から見ても、アンちゃんの

接客は、すごくお客さんに寄り添っていて的確で、単なるアルバイトにしておくのは

勿体ないと思うので。仕事内容に応じた適正な賃金を得る。それって、働く上で

本当に大事。藤代店長は、その辺りのことをすごく真摯に考えてくれるひとで、

アンちゃんの能力も高く買ってくれた上でアドバイスしてくれているところが

伝わって来て、すごくいい店長だなぁと感心しました。もちろん、それは藤代

店長自身が経験してきたことに基づいているわけだけれども。前の職場で酷い

環境に置かれたからこそ、若い働き手には、ちゃんと適正な賃金が払われてほしい、

という考え方が素晴らしいと思いました。企業の上に立つ人間がみんなこういう

考え方だったらいいのだけどねぇ。みつ屋の人材はいつもいい人を選びますよね~。

アンちゃんは職場環境に恵まれているよね。

とはいえ、今の恵まれた環境にいられるのもあと少しになりそうです。アルバイト

仲間の桜井さんも現在大学三年生で、就職活動の関係でアルバイト出来るのも

あと少しですし、可愛いものが大好きな乙女こと立花さんとも・・・。立花さん

が、あんな気持ちでいたとはね。面倒な性格だなぁとも思うけど、気持ちもすごく

良くわかるなぁと思いました。ほわほわふわふわしていたアンちゃんが、少し

づつしっかりしてきて、しかも正社員になったことで、置き去りにされたような

気持ちになっちゃったんだね。アンちゃんのお菓子に対する情熱はなかなかすごい

ものがあるからね。わざわざ市民講座まで参加しちゃうし。学ぶ姿勢が素晴らしいな

と思う。アンちゃんも乙女も、しきりに『友達』を強調していたけど、二人とも

どう考えても相手に対して友情以上のものが感じられるんだけどなぁ。なんとも、

もどかしい二人の関係性。一体この先どうなって行くのでしょう。でも、立花

さんがみつ屋を去っても、定期的に会ってお茶とか食事とかはするでしょうし、

仲良しのままでいてほしいな。

今回、正社員になったアンちゃん初めての出張先が、和歌山で嬉しかった。お菓子の

神様がいる神社のことは全く知らなかったけど。私も行ってみたくなりました。

パンダに狂喜乱舞するアンちゃん一行がとっても微笑ましかった。アドベンチャー

ワールドでのはしゃぎっぷり、もう、まったく身に覚えありまくりで共感しまくり

でした。ペンギンできゃー!イルカできゃー!パンダで身悶え~~~~!!!

みたいな(笑)あそこは、立ち止まり身悶えトラップがいっぱいあるのよね。

食事も、動物を模した可愛いものが多いしね。乙女の憂いが晴れて、椿店長も

加わって、三人でわちゃわちゃしてるのが本当に楽しそうで、読んでいてこちら

まで楽しい気持ちになりました。和歌山グルメも美味しそうだった~。

社会人としての一歩を踏み出したアンちゃん、今後の活躍も多いに期待できそう

です。

今回の表紙も可愛いくて美味しそうだ。みかんとおもちのコラボなんて!

映えすぎ!

このシリーズは、読んでいて本当に和菓子が食べたくなる。今回も、読み終えて

相方に、『和菓子~~~和菓子が食べたい~~~~』と訴えたのでした(ほぼ

無反応でスルーされましたがw)。