ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

阿津川辰海「午後のチャイムが鳴るまでは」(実業之日本社)

最近話題の阿津川さんの新作。あまり読んだことがないのですが、新着情報の

あらすじ読んで面白そうだったので借りてみました。都心に近い九十九ヶ丘高校に

通う高校生たちの、ある日の昼休みまでの悲喜こもごもを描いた連作短編集。

たった半日(作品によっては、本当に昼休みの65分間の間)の出来事とは思え

ないくらい、同時期にいろんな生徒たちがいろんなことにチャレンジしていた

ことが伺えて、なかなか面白かった。もう、本当にくだらないことに真剣に取り

組んでいるところが、いかにも高校生らしくて、あほだなぁと思いつつ、楽し

かったです。

特に、一話目の昼休みの間にダッシュで体育館裏の破れたフェンスから抜け出して

ラーメンを食べに行くミッションに挑む二人組男子の話と、三話目の消しゴム

ポーカーでクラスのマドンナ女子に告白する権利を賭けて戦う話は、この年代の

男子の愛すべきバカ丸出し感満載なところが読んでいて楽しかったです。まぁ、

消しゴムポーカーのいかさま方法はちょっと文章で読んでもピンと来ないところも

多かったのですが^^;告白する為とはいえ、みんながそれぞれにいかさましようと

画策するところもちょっとどうなのかな、とも思いましたし。正々堂々と戦うやつは

いないんかい!とツッコミたくなりました^^;でも、消しゴムでポーカーをする

っていうアイデア自体は面白い発想だなーと思いましたね。

四話目の占い研究会の話は、あまりピンと来なかったですね。『星占いでも仕方

がない。木曜日ならなおさらだ』という文言から導き出される真相とは?という、

『九マイルは遠すぎる』になぞらえた作品なのですが。結構強引な推論の進め方

だったので、いまひとつ納得できないまま推理が進んで行っちゃった感じでした。

結論も意外性はあるけど、なんとなく腑に落ちないというか、すっきりしなかった。

 

 

以下、ネタバレあります。未読の方はご注意を。

 

 

 

最終話で明かされる、ある人物に関してですが。実は、二話目くらいで見当ついて

しまいました。どう考えても、一話ごとに伏線ぽい描写をされている人物がいました

からねぇ。これって、もしかして・・・?と思いながら読んでたんで、最終話で

その事実が明らかになって、ああ、やっぱりね、って感じでした。こういう仕掛けは

他の作品でも読んだことありますしね。ちょっと、伏線があからさま過ぎたかなー

という感じはしましたね。消しゴムポーカーだと一人だけ呼び方違うしね。でも、

冷静で優秀なキャラクターだと思いきや、好きな女の子に対しては普通の高校生

男子になるところは微笑ましかったですけどね。

微笑ましいといえば、最終話の大人カップルもでしたけどね。随分遠回りしたけど、

時を超えて、お互いに素直な気持ちを伝えられてよかったですよね。

 

なかなか小技の効いた作品集で楽しめました。ばかばかしいことを思いっきり

全力でやる高校生たちがまぶしかったです。青春っていいなぁ。