ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

滝沢カレン「馴染み知らずの物語」(ハヤカワ新書)

こちらもブランチで紹介されていた作品。滝沢カレンちゃんが結構好きなので、

興味を惹かれて借りてみました。カレンさんが、タイトルとざっくりした

概要だけを聞いて、あらたに自分で考えだした物語の数々をまとめた一冊。

取り上げられた作品をざっと紹介しますと、

『九月が永遠に続けば』『妻が椎茸だったころ』『変身』『うろんな客』

『ザリガニの鳴くところ』『あしながおじさん』『若きウェルテルの悩み』

『号泣する準備はできていた』『バナナフィッシュにうってつけの日』『みだれ髪』

蟹工船』『屋根裏の散歩者』『薬指の標本』『わたしを離さないで』『生きてる

だけで、愛。』

まぁ、タイトルだけでは内容がまったく想像できない作品ばかりではありますね。

それにしても、カレンちゃんの奇想天外な発想力には驚かされました。この

タイトルからこういう発想になるのかー!って感じ。元ネタを読んでいるのは

『九月が永遠に続けば』と『屋根裏の散歩者』くらいだったのですが^^;

一応、カレンちゃんの作品の最後に、元ネタのあらすじも紹介されています。

全然違う内容でびっくりするんじゃないでしょうか。

『九月が永遠~』なんかは、ラスト、ミステリ的な仕掛けが施されていて、いきなり

驚かされました。

薬指の標本』は、カレンちゃんのキャラクターからは考えられないような

猟奇的な内容だし。SFだったりファンタジックだったり、ジャンルも幅広い。

この人の頭の中は一体どうなってるんだ!?と思いました。

ただ、惜しむらくは、文章自体もあのカレン節そのままなので、文法的に

おかしなところが散見しているところ。小説としては、非常に読みにくいと

言わざるを得なかったです。これが味だと言われればそれまでなんですが。

普通の作家の文章だったら、間違いなく校正で引っかかってると思います。

カレンちゃんの文章だから、敢えて直さなかったのでしょうね。文章として

理解できない箇所も多々ありましたねぇ・・・。せっかくの発想力が、文章で

台無しにしている感じが無きにしも非ず・・・。いや、そこを直してしまうと、

カレンちゃんの良さが台無しになるとも云える訳で、痛し痒し。むむ。

これはこれで、面白いと思って読むべきなんでしょうね。カレンちゃんのファン

なら楽しめると思う。

タイトルと概要だけで新たな物語を創り出す、という趣向は面白い。存命の

作家さんにはもちろん許可を取っているのでしょうけど、どういう感想なのかな。

自分のタイトルがこんな風に使われているなんて!と怒り出す人がいなきゃ

いいのですけど。内容はほとんど重なってないから、笑って許してもらえるとは

思いますけどね。

文章はともかく、発想力に関しては、天才的だと思うな。不思議な魅力のある

タレントさんですよね。彼女の料理の本も見てみたいのよね。独特の表現でレシピが

書かれているみたいなので。本見て作れるかはともかく、読み物として楽しめ

そう。

本好きさんにおススメ出来る作品かは微妙ですが、滝沢カレンのキャラクター

がお好きな人なら一読の価値はあるんじゃないかな。