田中啓文さんの「ハナシにならん!笑酔亭梅寿謎解噺2」。
若手噺家のグランプリ、O―1グランプリの予選を勝ち抜いた竜二。本選に出場する為、
梅寿に借りた5千円を駆使してなんとか上京する。本選では関西と江戸の東西の噺家が
集結。東西落語対決の行方は・・・?涙と笑いありの落語シリーズ第2弾。
相変わらずのテンポの良さで全体通して楽しめました。ただ、前作に比べてミステリ色は
弱めで、かといって落語中心かといえばそうでもない。敢えていえばテレビやラジオ等の
メディアでの演芸を中心に物語が進んで行きます。竜二も落語家としてというより、ラジオの
仕事での方面での四苦八苦が目立ちました。やはりこのシリーズは落語を基本に展開して行く方
が面白みがあるような気がする分、ちょっと前作よりもパワーダウンしてるかなという感じは
否めなかったです。
ただ、ラストではちゃんと落語家としての竜二の姿を見ることが出来たし、梅寿との関係の
悪化も落ち着くところに落ち着いたので読後感は非常に良かったです。梅寿が涙もろくなった
理由には拍子抜けしましたが・・・ま、ある意味実に梅寿らしいといえるんですけど。
やはりこの作品は梅寿のキャラクターがいいですね。普段はどうしようもない大酒飲みの自堕落な
暴力爺いなのに、落語をやる時だけは天才的な才能を発揮する。ただ、女性を殴るのはいくら
なんでもやりすぎですけど。でも何だかんだいって、弟子を大事にしてるのがわかる。
「ちりとてちん」のラストは良かった。日々の生活にも困る位なのに、かつての約束を守る
義理堅さにほろりとさせられました。
主人公の竜二は前作から比べて、暴走族あがりとは思えない位忍耐強くなってますね。
やはり梅寿の下にいるとこれ位にならないとやっていけないんでしょうね。人間としても少し
づつ成長している様な気がします。正直、最終話にかけての梅寿への裏切りにはがっかり
しましたが、これを乗り越えてまた一段成長したといえるのでしょうね。
この手の落語ミステリを読むと、やはり生の落語が聞いてみたくなりますね。作品中に紹介
されている落語のあらすじを読むだけでもとても面白そう!ただ、確かに本書で出てくるように
私の中での落語家のイメージって、落語家というよりも‘テレビ番組に出演するタレント’
という姿の方が強いです。実際そうした方々の落語を見たら、また全然違って見えるのだろう
な、という感じがします。是非とも一度寄席に足を運んで、本物の落語を聴いてみたいな
と思います。
松茸芸能を追われて新事務所を設立した梅寿一門の今後はどうなって行くのでしょうか。
3が出るのが待ち遠しいです。