ミステリ読書録

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北森鴻/「親不孝通りラプソディー」/実業之日本社刊

北森鴻さんの「親不孝通りラプソディー」。

博多の街でかつての相棒から屋台を引き継いでから早幾年。キュータの屋台に、最近博多の
屋台を騒がす高校生の無銭飲食常習犯二人組がやってきた。小狡くて、世間知らずの小悪党
といったその姿は、かつての自分の姿そのままだった。昔馴染みの強面のガンチに二人の
処理を任せたキュータだったが、直後にキュータの屋台が炎に包まれた。その炎は、キュータ
とかつての相棒・テッキが巻き込まれたある事件を彷彿とさせた。そう、あの事件の時、彼ら
はまだ17歳だった――「親不孝通りディテクティブ」のかもねぎコンビが帰って来た!17歳
の彼らが体験したある事件を綴った回想録。

あな怖ろしや。こんなとんでもない高校生がいるとは。不良どころではなく、明らかに小悪党、
いや大悪党と言っても過言ではない言動。高校生が主人公なのに、青春なんて言葉は一切
似合わない、純然たるハードボイルド作でした。女・飲酒・煙草なんて可愛いもの、車の
運転までは百歩譲ったとしても、信金の裏金強奪はまずいでしょう・・・。しかも、それも物語
の端緒に過ぎず、それからも紆余曲折、よくもまぁ、次から次へととんでもない事件に巻き
込まれるものだと唖然。物語終盤にかけて、かもねぎコンビに2人を加えたある協力関係が成立
しますが、彼らの中には誰一人として腹蔵なく言葉を発するものがおらず、腹の中には自分
以外の人間を出し抜くことしか考えていない。裏切りに次ぐ裏切りで、こいつらの中には
仲間意識というものは皆無なんだな、と呆れました。かもねぎコンビの間でさえそうなの
ですから、もう何が何やら。それでも、お調子者のキュータと、達観したクールなテッキに
また会えたのは望外の喜びでした。二人がここまで高校時代に荒んでいたとは思いもしません
でしたが・・・^^;というか、とても高校生が主人公の話を読んでいる気分にはなれなかった
というのが正直な所。彼らの境遇も、巻き込まれる事件も、どれを取っても「一体お前ら
いくつなんだよ!」といちいち突っ込みを入れたくなりました・・・。だいたい、事件の
発端がキュータの美人局事件ですからね。とんでもないガキだ。こんな高校生なんて嫌だー。

ただ、作品としてはスピード感溢れる展開で息つく暇もなく楽しめました。しかもラストで
衝撃の展開が!これは本当の続編が期待できるのではないでしょうか?ここで終わりはあんまり
ですよ、北森さん。本当のハードボイルドはこれからですよね。やはり高校生でハードボイルド
なんて似合わない。姿を消してたくさんの修羅場を潜り抜けた大人のテッキのハードボイルドが
読みたい。博多の屋台に似合うのは、やっぱりキュータじゃなくてテッキだと思いますから。